本日のバーガー

美しく上品なハンバーガーの世界

本日のバーガー 花形怜 才谷ウメタロウ
野愛
野愛

ハンバーガーというひとつの料理だけをテーマにした狭くてディープなグルメ漫画なのに、その広範な知識量と誰にでも受け入れられそうな上品な作風に心を掴まれました。 ハンバーガーの世界ってこんなに広いんだ…!こんなハンバーガーがあるんだ…!という月並みな感想を抱いてしまいました。神宮寺ばりの知識がある人以外は同じ感想を抱くでしょう。神宮寺のハンバーガーを食べた人も同じ感想を抱いたことでしょう。 グルメな客が訪れて無理難題をふっかける、大きな悩みを抱えた人間を料理で救う、超強力なライバル店との対決…グルメ漫画あるあるが繰り返し描かれ、その度に神宮寺は軽やかに上品にハードルを越えていきます。 肝心のハンバーガーもめちゃくちゃ美味しそうです。とんでもなく美味しそうです…!!シズル感もあるしアツい食レポももちろんあるけれど、やっぱり上品なんです。 ジャンクフード、ファストフードであると思われがちなハンバーガーだけど、さまざまな食文化を受け止める懐の深さ広さがあり、ひとつの料理として確立されたものなのだ…ということをこの漫画の上品さが示しているのかなと思いました。 ハギスバーガーとマカロニチーズバーガーが食べたいです。

部長と2LDK

上司と部下のドタバタ二人生活! #1巻応援

部長と2LDK おりはらさちこ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

女性二人の同居を描く本作ですが、この二人の関係は、職場の「上司と部下」。しかも立場にかなり隔たりがあります。 ●三十代にして部長を任される、頼れるけれど真面目で堅い東(あずま)さん ●新入社員の明るくゆるふわな西さん どう見ても性格が正反対の二人が、たまたま同居する事に。険悪にならないの?と心配になりますが、実はこの二人、共通点があります。それは…… 生活力が、無い。 驚く程何もできない二人が一緒に住むと、0からじゃなくてマイナスからのスタートになるんですね。最初は結構、酷い日々。 でもそこから、協力しながら生活を共にし、上司の東さんが引っ張るようでいて部下の西さんがいろいろ教えたり、そのうち二人には連帯感が生まれ……。失敗ばかりの日々も、冒険じみていて楽しそう! 西さんのキャラクターが本当に素敵です。普通「部長」に、あんなにフレンドリーに出来ませんよ……「ぶちょー♡」って甘える女子新しいな……。その明るさで、ちょっとぼっちを拗らせ気味の東さんは救われている。 笑いも温かさも沢山の、二人のドタバタ生活は始まったばかり!

水は海に向かって流れる

読んで良かったとシミジミ思える作品

水は海に向かって流れる 田島列島
六文銭
六文銭

3巻完結作品だと、読むのに躊躇しますよね。 広がるだけ広がった風呂敷に、回収されな伏線・・・そんなものが、あったらどうしようと思うと、手を出すのに勇気がいりますよね。 でも、安心してください。本作は大丈夫です。 田島列島先生の、この空気感、唯一無二だなと感じます。 セリフの一つ一つ、場面展開による独特の間のとり方、ストーリーの進み方、どれをとっても、作者の個性がピカリと光って、だからこそ好き嫌いも出そうですが、自分はドンズバでした。 少しづつこじらせた人間関係の妙味が、面白いんですよね。 物語上必要な「設定としてのキャラクター」みたいなのがいなくて、リアリティというか、皆イキイキしていて読んでいて共感できるんです。 怒りたくても怒れない。どうにもならない、やり過ごすしかない状況。 わかるわーと思いながら、主人公と榊さんを見守ってました。 主人公の自分がいなければ、という罪悪感が、 自分がいたことで幸せになった瞬間は、なんとも言えない幸福感に包まれました。 心の底から、本作に出てくるキャラ達に感情移入していたのだなと痛感しました。 何度も読み返したくなる作品です。

NARUTO―ナルト―外伝~七代目火影と緋色の花つ月~

サラダのルーツを描く外伝

NARUTO―ナルト―外伝~七代目火影と緋色の花つ月~ 岸本斉史
ANAGUMA
ANAGUMA

『NARUTO』本編終了後から『BORUTO』開始までの時系列の間には映画『THE LAST』や小説の列伝シリーズなどさまざまな作品が名を連ねています。 本作『七代目火影と緋色の花つ月』もそのひとつで『BORUTO』の映画と同時期に単行本が刊行されました。なんとなく夏のアニメ映画っぽくてかわいいタイトルだなと思います。 しかし内容はと言うと、サスケの娘・サラダの生まれに迫るなかなかシビアな内容。連載中も話題になっていましたが「サラダの母親、サクラじゃないんじゃないの…?」というちょっと生々しい話も出てくることに…。 家になかなか帰ってこないサスケ(この概念が面白すぎる)に愛想を尽かしたサラダがナルトに懐いていくのも涙を誘います。サスケ、そういうとこだぞ。 ナルトやサスケ以外にも『NARUTO』キャラ沢山出てくるのでアイツ今こんなことしてんだ…っていうのが楽しめるのもいいですね。 『BORUTO』も本作もテーマになっているのは家族。果たしてサスケは失った娘の信用を取り戻せるのか、ラストシーンに最高の答えが用意されています。 サラダが火影を目指すことになった理由が描かれるオリジンストーリー、『BORUTO』に手を出す際には合わせて読んでおくのがおすすめです!

サスピション

サスペンスに満ちた短編集

サスピション 手塚治虫
一日一手塚

表題の『サスピション』シリーズ3作を中心にサスペンス色たっぷりの短編集です。3作はどれも20p前後と短いながらも人の心の行き違いが生む皮肉な結末がスリリングに描かれるのが特徴です。 ロボットを使った完全犯罪を目論む「ハエたたき」、山奥に住む男と金貸しとの命の駆け引きを描いた「峠の二人」など、人の猜疑心や臆病な心が思わぬ結末に向かっていくのが読んでいてハラハラします。 なかでも自分の一番のお気に入りはカバーイラストにも採用されている第3話「P4の死角」でした。 P4レベルという最高度セキュリティの研究所で行われる遺伝子実験中、作業員が誤って実験用のDNAを体に注入してしまうところが物語の始まり。隔離措置を取られ、防護服を着た研究員に囲まれるようすは臨場感があります。 このリアルな描写が後半効いてくるのでじっくり味わってほしいですね。 彼の体は一体どうなってしまったのか…というところが物語のキモなのですが、コンパクトに纏まっているのでなにか説明すると面白さが半減してしまうもどかしさが…。 とにかく読んでみてほしいです。手塚治虫の物語の構成力、人の心情の描写力が高密度で味わえます。

ヒットマン

早くもラブに発展しそうな漫画業界マンガ

ヒットマン 瀬尾公治
mampuku
mampuku

 「涼風」「風夏」など傑作ラブコメの山を築き上げてきた名匠・瀬尾公治先生の新作はまさかのお仕事モノ、しかも主人公は漫画編集者、ヒロインは漫画家。  自らの掲載誌を題材にした漫画といえばまず思い浮かぶのは「バクマン」ですが、処変わって作者も変わればここまで違うかというまったくの別物。「バクマン」は作家同士の横のつながりやアンケート順位レース、生き様としての男のロマンを追求する熱血ぶりで、ときに展開がとっ散らかって見える「ライブ感」のような雰囲気も特徴でした。「ヒットマン」のほうはというと主人公・剣崎が社会人ということもあってかテレビドラマみたいな印象です。シュージンやサイコーが年中引きこもって机にかじりついていたのと違い、ヒットマンのコンビはいきなり取材と称して温泉旅行へ行ってしまいます(もちろん読者サービスも兼ねているとは思いますが)ずる賢くて打算的だがド熱血なシュージンたちと、青臭く不器用だがどこか肩の力が抜けている剣崎はやはり好対照です。  これからどう描かれていくか気になるのは、主人公たちがバクマンと違って大人であることで、原稿料や印税などお金の話や、作家の生活の部分の描かれ方がどうなるのか。バクマンでもお金の話には触れてはいましたがそこまで深くは踏み込まれませんでした。  「少年マガジンを再び日本一の雑誌に」というアツいテーマが掲げられていますが、日本一だったころのマガジンを読んで育った私としてはこみ上げるものがありますね。