ジョジョの奇妙な冒険 第1部 カラー版

『ジョジョ』の基本思想が詰まった始まりの部

ジョジョの奇妙な冒険 第1部 カラー版 荒木飛呂彦
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

大ヒット漫画『ジョジョ』の 記念すべき開幕を告げる部 ではありますが、 ファンの人でもわざわざ読み返すことは あまりないのではないでしょうか? 私の周りでも「1部が一番好き!」 という人は1人もいません。 確かにその後の部に比べて バトルも地味なものが多く 現代から見ると時代を感じるキャラクターが多いので若い人たちが見ると 物足りなさを感じてしまうのは 仕方ないことだと思います。 しかし、今回久々に読み返して 私はビックリしました! 第1部にはこの後30年近く貫かれ続ける 「ジョジョの基本思想」が 詰まっていたのですッ! それは3巻で語られる ツェペリさんの3つの教えです! ①相手の立場に身を置く思考。 ②「勇気」とは怖さを知ること  「恐怖」我がものとすること。 ③「成長」には犠牲が付き物  「犠牲」成長につなげられる人間こそ   美しい人間である。 おそらく『ジョジョ』はこの3箇条をもとに 作られているのでしょう。 相手の立場に身を置くことで、 敵キャラの造形を 細かく描写することができる。 そして、「恐怖」を我がものとする。 つまり、克服しようとするからこそ 「ホラー映画」に影響を受けた シーンづくりをする。 そして、ジョジョたちが犠牲を成長に つなげていくからこそこの漫画は 「王道」なのだと思います。 これらの基本思想があり、 そして、ジョナサンの正義漢としての描写も 少し過剰ではありますが、 キチンと入っています。 このジョナサンの過剰なまでの 「いい子」「正義漢」描写があったから 後のジョジョはどんなに不良でも ジョナサンの子孫だからという 土台の安定感から ヒーローとして自然に 読者に迎え入れられる のではないでしょうか? そんな感じで、あの『ジョジョ』の 始まりの部がただの旧時代の 漫画の訳がありません。 一回読んだだけで その後読み返してないという人は 是非一度読み返してみてください! 自分の好きな 『ジョジョ』のエッセンスが 生まれた瞬間を 何個も発見できると思います!

カツシン~さみしがりやの天才~

とにかくカツシン話はやたらと面白い!

カツシン~さみしがりやの天才~ 吉本浩二
ひさぴよ
ひさぴよ

『ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』を始めとした吉本浩二ノンフィクション作品であり、他の作品郡と同様、関係者の証言を元に構成された漫画。座頭市の誕生エピソードに始まり、バルテュス、篠山紀信との交流、原田美枝子、渡辺謙、松田優作などの俳優としての顔、そして中村玉緒とその家族がそれぞれの勝新太郎の思い出を語る。 カツシンの大ファンである吉本浩二氏の昭和タッチな絵柄が、勝新太郎の世界では見事にマッチしています。カツシンが好きだからこそあの作風になったのではないかとすら思えますね。あまり知られていない勝新太郎の「さみしがりや」な部分は、この漫画でしか味わえない貴重な一面ではないでしょうか。寝ても覚めても映画と芝居が大好きで、作品創りに凝りすぎたあまり制作費を膨大に使ってしまい、会社を倒産させて多額の負債を作ってしまうあたりは手塚治虫と似た所があります(苦笑)。撮影事故、大麻パンツ事件なども僅かですが触れられています。この作品だけでは語りきれないほどのエピソードがあると思いますが、晩年までの出来事が全2巻でまとまっているので読みやすい長さかと。映画好きの方にもおすすめです。

教え子がAV女優、監督はボク。

まずは、知ろう#1巻応援

教え子がAV女優、監督はボク。 村西てんが
ナベテツ
ナベテツ

マンガのすばらしさは幾つもありますが、自分の知らない世界を教えてくれる、知見を広げてくれる、という点も挙げられると思います。 AVを見たことのない男性というのは日本にほとんどいないと思いますが、この業界に関して詳細な知識のある男性もまた、ほとんどいないと思います(AV女優や男優、作品レベルの話ではありません)。かくいう自分も、好きな作家のエッセイや漫画で取り上げられたエピソードやインタビュー程度の知識しかありませんが、それでも恐らく世の中の平均的な男性よりは「作品」以外について「知っている」人間になってしまうと思います。 作者の村西てんがさんは、実際に制作会社で働いた経験があり、我々のような無知な人間に、AV業界や撮影というものを、少しずつ見せてくれます。 パッケージングされた作品には、それを作っている人達がいる。至極まっとうなことなのですが、AVに関してはその事が意識する人間は殆どいないように思います。それもまた無知のもたらすものであり、想像力の翼を届かせることのない原因になってしまっているのではないかと思います。 描きたいことが沢山あるんだろうな、というのが1巻を読んで自分が感じたことでした。それは、作者の物語を紡ぎたいという願望と同じくらい、この業界に向けられる「無知」に起因する眼差しを変えたい、という祈りなのではないかと。 世の中には、色んな仕事があるし、そこで働いている人は多分自分とそんなに違わない。彼ら彼女らも自分と同じくらい懸命に毎日を生きている。そんな当たり前のことを教えてくれる、現代の日本で特殊とみられる世界をやさしく教えてくれる作品です。作者が描き切ったと言えるくらい、連載が続くことを祈り、細やかでもエールになればと思います。