トナリはなにを食う人ぞ

スパルタ料理指南から恋は生まれるか

トナリはなにを食う人ぞ ふじつか雪
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

晴れて都会の大学デビューの稲葉すずな。一人暮らしを始めるも、彼女は全く料理が出来ない!テキトーな生活で大変な事になりそうな所を、隣の部屋の瀬戸晴海に救われる。飯ウマ男子の瀬戸君に、稲葉さんは料理を教わり始めるが、彼はめっちゃスパルタで……。 ○○○○○ この作品、私はマンガParkのアプリで知りましたが、掲載誌は白泉社の『AneLaLa』。『LaLa』の増刊とのことで、大学生や社会人、そこを見据える高校生が対象なのかな? 家を出て一人暮らしって、切実ですよねぇ。高校出るまで料理なんてした事ないっていう、稲葉さんみたいな人いっぱいいると思う。そういう人にはこの作品、切実に刺さるはず。その上、私のようにいい歳まで自活を回避してきた人にも、恐々読ませてしまうものがある。 「この漫画読んで、わたし最近、料理始めました!」(あうしぃさん・40代男性) 瀬戸君はスパルタなのですが、真剣で生活を大切にする人。稲葉さんは彼を尊敬し、厳しい教えについて行くうち、少しずつ、料理は上達していきます。 稲葉さんも真剣で、今まで切り捨ててきた「生活」を、丁寧にしようという努力には好感が持てます。さらに結構食いしん坊の稲葉さん。意外と料理、上手くなるかも……?彼女の着実な成長に、ちょくちょく感動させられます。果たして瀬戸君が、彼女を認める時は来るのか? そして実は最初に「タイプじゃないから」と瀬戸君に言い渡されてしまった稲葉さん。このまま何もない、ただの隣人として……?さあ、どうでしょう?

お姫様のお姫様

女子が好きな女子を好きな女子 #1巻応援

お姫様のお姫様 ホマレ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

女子が好きで、「運命の人」を探すために超巨大女子校に入学した南山ハイジと、そんな彼女が好きな北町さらら。ハイジのために「運命の人」探しを手伝うと宣言したのに、さららはハイジを諦めきれない。15万人の対象者から「運命の人」を探すのが先か、その前に二人は結ばれるのか......。 ♡♡♡♡♡ 序盤から驚かされるのは、「運命の人」探しが、割とあっさり成功しそうなところ。ハイジは庇護欲を唆るモテ体質。あっという間に周囲の注目を浴びる。 ......とは言ってもそう簡単にはいかず、とある理由から、ハイジとさららと、SNSでバズりたい陰キャの沼丘ていの、三人ぼっち行動が多くなる。 女の子を見てはキラキラしているハイジ、彼女のためにあたふた奔走するさらら、雑に扱われるていのコメディはテンポが良く、情緒のブレとツッコミのキレが強烈。「例のプール」「女子の情報を書き込んだノートの名前」など、細かなネタを随所にブチ込んできて、つい笑ってしまう。 ハイジも実はさららを大切に想っていることは随所に描かれていて、その度に「さっさとくっつけばいいのに......」と思いつつ「尊い!尊い!」とふぁぼを押したくなる自分がいる。 これは定期的に摂取したくなる百合コメディ!

まかない君

夢ならば醒めないで

まかない君 西川魯介
野愛
野愛

ほのぼの絵柄と美味しそうなご飯と永遠に続いてほしくなる日常感をまといながら、ハチャメチャに美化された初恋みたいな甘酸っぱいエロスを放り込んでくるとんでもない飯漫画です。 トキメキと劣情のちょうどど真ん中を刺してくるような漫画です。 なんて言うと誤解を招いてしまうでしょうが、従姉妹3人と同居っていうのがファンタジーでドリーミングなシチュエーション。 翻弄されつつも楽しい日常をおくり、いちばん歳の近い弥生ちゃんと何かが芽生えちゃいそうになる感じももう夢でしかない。カジュアルファッションででっかい眼鏡で地味そうなのに無邪気で時折セクシーさも感じさせるという弥生ちゃんもどう考えても夢です。 ピンク髪の姫騎士と同等の夢具合です。 なのに浩平ときたら、弥生ちゃんをはじめ従姉妹たちにドギマギしながらも慈愛に満ちた目で美味しそうな料理を作り続けるもんだから…浩平こそ夢じゃん!!という感情でいっぱいです。 気づいたらハーレム的な鈍感主人公じゃないのがよい。わたしも浩平の従姉妹になりたい。 100%日常にひそませた非日常と、ほのぼのに隠したほんのちょっとの色がどうにもこうにも心を捉えて離さないのです。まかない君おそるべし。 芋煮とおにぎりの組み合わせ最高です。家で食べる手作りおにぎりって特別感があってよいですよね。

服福人々―ふくふくひとびと―

服にあんまりこだわり無いって人も是非!

服福人々―ふくふくひとびと― 坂本拓
なかやま
なかやま

どちらかと言うとお仕事マンガとして描かれがちな「衣服」を趣味として扱うことで、生活がかかった仕事マンガとは違う、肩肘の張らない程よいテンポで自分の中に入ってくる良作です。 主人公の佐久間(サク)も元々服が好きな状態から物語が始まり、元デザイナーの廻谷と出会うことで世界が広がっていく形で進行していきます。 ここが良いなと思ったのですが、あえて0→1ではなく、1→2にすることで "ダサかった主人公がこんなにかっこよく!?"みたいな鼻につく部分が無いです 内容自体も各話でファッションのテーマを絞りつつ、ショッピングを通して廻谷がやさしく教えてくれます。 自分も読んでいて「なるほどなー」な部分も「わかるー」な部分もあり、服に対する見方が広がりました。(ファッションコラムがめっちゃ面白い) 作者さん自身がきっとファッションが好きだろうし、ちゃんとお店に取材もしている すごく丁寧なつくりであるのがわかります。 おそらく監修にMEN’S NON-NOが入っている部分が流石集英社感! 服好きな人にももちろん読んでもらいたいですが、服とかあんまり興味ないし・・・という方も、この作品を読むと服買いに行きたくなりますよ。 この作品が多くの人に読んでもらえれば日本はもっとオシャレになる!

キセキのローレライ

不登校と強すぎる個性への応援歌 #完結応援

キセキのローレライ 能登山けいこ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

自分の歌声で人を失神させた事を気に病み、不登校になった中学生女子。優しい転校生に歌を認められた事をきっかけに、彼女は少しずつ元気になる。しかし、彼女の歌声には秘密があり、転校生の男子にも秘密があった……。 ♫♫♫♫♫ 歌をきっかけに広がる世界、イケメン男子二人から迫られるドキドキ、歌声の秘密を巡る謎の勢力etc...少女漫画としての楽しさ一杯に進行しながらも、核となるテーマは重く、真剣に没入して読んでしまう。 メインテーマの一つに「不登校」がある。当事者の内面描写が切なくて、同じような苦しみを抱える人……精神的なしんどさを抱える人ほど、思い入れてしまうだろう。 精神的に苦しむ人が、優しい人達によってどの様に救われていくかを描き、寄り添い方について、我が事のように考えさせられる。(精神状態が身体症状に現れることなど、広く知られて欲しい) 「強すぎる個性」とどう折り合いをつけるか、というのも大きなテーマだ。主人公・キセは特殊な歌声で、人を感動させる一方で、思いがけず人を傷つけてしまう……その苦しみを理解する人は、実はあらゆる所にいるだろう。 そして裏テーマとして「学校教育の肯定」もあるだろうか。 作中でキセが歌う歌は、唱歌、クラシック、ポップスまで、学校の音楽や英語の授業に登場するものが多い。これらの曲を「ガッコーでやってた、ダサいやつ」と斜に構えて見る人も多いかもしれないが、本当は心の奥底で、胸を掴まれていないだろうか? 作中では、これらの曲をキセが楽しそうに・心を込めて歌い、多くの人が心動かされる。そんな様子を見ていると、これらの曲を、もう一度素直に聴いてみたくなる。 心の奥では肯定したい美しさ・楽しさを、中2の感性のまま拒絶する心。キセの歌う姿には、そんな私達の頑なさを解きほぐす力がある……そんな気がする。 大きな苦しみを抱える人から、小さな引っ掛かりを残したまま暮らす人まで、苦しみを知る人々の心を癒し、支えてくれる作品だ……そしてそれは結局、今を生きる全ての人への応援歌として、優しく響く。