未生 ミセン

囲碁漫画かと思ったらサラリーマン漫画だった

未生 ミセン ユン・テホ
カカオ

元々存在は知りながらも読む機会がなかった作品。古本屋でたまたま見かけたのでチャンスだと思い買ってみました。**デフォルメとリアルな絵リアルな絵が混在するアートスタイルがすごく好きです。**しいて日本の漫画家で例えるならじゃんぽ~る西先生っぽいかも。 ずっと韓国の囲碁漫画だと思っていたのですが、実際には「プロの囲碁棋士となる夢に破れた青年が、職歴・学歴ゼロから商社のインターンとして頑張る」モーレツ社員物語でした。 主人公・グレの勤める総合商社の社員(特に上司)の働きぶりが、かつて日本にもいたとされる24時間戦うサラリーマンのそれで、比較的自由な会社にしか勤めたことのない自分にとって、そのストイックな働きぶりは衝撃。 仕事は仕事と割り切り冷めているわけでもなく、仕事が生きがいで燃えるように働いているわけでもなく、会社のせいで消耗する社畜でもない「企業戦士」たち。 **「仕事=夢ではないけれど、会社のために真剣に働く」姿を描いたサラリーマン漫画**は初めて読みました。 総合商社の業務がしっかりと描かれていて、韓国の家庭の様子や、サラリーマン文化が端々から伝わってくるところがすごく好き。 面白かったのが、作中で失業や社会に対する不安を語るときに、1997年のアジア通貨危機が登場したところ。 主人公がスマホを使っていることからわかるように、1巻の内容が連載されたのは2012年だそうですが、15年ちかい時が経っても忘れられない衝撃を与えた出来事だったのだなと実感しました。 そして読んでみてあらためて思ったのが、ローカライズされていないウェブトゥーンは面白いということ。外見至上主義もチーズ・イン・ザ・トラップも日本語版はローカライズされ、舞台も登場人物の名前も全部日本人に変更して出版されているのが本当に残念…。未生 ミセンのようにオリジナルを尊重して出版されるウェブトゥーンが増えてほしいなと思います。 https://kodansha-cc.co.jp/misen/

夕映えの丘に―そこも戦場だった―

胸が塞がる戦争と親友の記憶

夕映えの丘に―そこも戦場だった― 佐藤まさあき
なつき

導入から終わりまでの構成、作画、ストーリー、どれもが素晴らしい読切でした。途中辛いシーンがありますが、何より**最後まで読んだときの喪失感とやりきれなさが一番胸に残りました。** この作品は**佐藤まさあき先生ご自身の体験を描いたノンフィクション**だと読後に知り、あらためて戦争の残酷さを突きつけられました。今のサンデー読者にも届いてほしい傑作です。 【ビッグコミックオリジナル第18号】 https://bigcomicbros.net/magazines/25108/ 【あらすじ】 大阪で育った主人公・藤本は兄とともに愛知・祖父江町の祖母の元へ疎開する。小学校では地元の子供達に線を引かれ、意地悪なボスから『ソカイシャ』と呼ばれいじめを受ける。ある日、空襲で両親と片腕を失った少年・西田が名古屋から転校してきて、2人は都会育ちの疎開者同士友情を育んでいく。 やがて大阪は空襲に遭い、藤本の父は黒焦げになって死に、母は全身を油で焼かれ薬もなく与えられぬまま死んだ。 打ちひしがれる藤本に唯一、同じ立場で寄り添うことのできる西田は、丘の松の木を見て「俺たちも運命を呪わず真っ直ぐに生きよう」と鼓舞する。以来2人の仲はさらに深まっていった。 やがて中学を卒業した藤本は、漫画家になるという夢を叶えるため上阪する。週に一度は手紙のやり取りをしていた2人だが、「郵便局に就職した」という便りを最後に西田から連絡が途絶える…。 【扉絵の解説より】 >週刊少年サンデー1970年4・5号合併号に『新春感動大作シリーズ第5談』として掲載された、劇画家・佐藤まさあき氏による読み切り作品。 >1955年4月に上阪するまで、佐藤氏が過ごした愛知県稲沢市祖父江町を舞台に、彼の実体験を基に描かれたノンフィクション。作中に登場する松の木も実在するもので、執筆当時「思い出の松の木は、ちっとも昔と変わっていなかった」と語っている。本作は佐藤氏にとって念願のテーマであり、自身の心の傷に立ち向かった渾身の一作である。