5時まで待てない

女の一生

5時まで待てない 艶々
野愛
野愛

艶々先生の描く女性の生き様が好きだ。 性別うんぬんではなく人間ですもの、強いだけでも弱いだけでも生きてはいけない。善も悪も可愛いもかっこいいも真面目もふしだらも全部含めて人間ですもの。 この作品の主人公・雫もそういう人間で、仕事は時間内にバリバリこなしてその後はエロいことばっかりして、二面性のある女…と見せかけて二面どころじゃないんですね。 しっかりしてるのにダメ男に引っかかってしまう愚かさも、引っかかっているように見せて自分の欲望を発散させるしたたかさも持っているんです。二面じゃなくてなだらかに一続きになっているんです。 女だもんね、いや、人間だもんね。他人が感情移入したり現状を噛み締めたりする間もなく雫の人生は展開していきます。 漫画として長い方ではないから故、ストーリーを重視すると雫の変化に戸惑うひともいるでしょう。でも、素直なだけ。感情も現状も常にアップデートされて変わっていく、それこそがリアル。 いっちばん最初に提示された「5時まで待てない」と最後に提示された「5時まで待てない」の意味合いの変わりようが凄いです。 このラストを予定してタイトルをつけてオープニングを描いたのならば、艶々先生は大大大大大大天才です。 描いてるうちにたどり着いたとしても、大大大大大大大大天才です。

渡り鳥とカタツムリ

キャンピングカーで愛犬とおいしいコーヒーと

渡り鳥とカタツムリ 高津マコト
兎来栄寿
兎来栄寿

ワニブックスによる新レーベル「Chrunch Comics」レーベルの初単行本です。 青い空と海、白い砂浜をバックに笑顔を浮かべる男女と犬。白+青を基調にし、帯までオシャレにデザインされて夏の爽やかさを演出する外装に心が踊ります。 ただ、軽やかな表紙に反して物語の始まりは少しだけ重いです。表紙に書かれた青年・雲平はややブラックな会社で働いていることに疑問を覚え、退社したいと思いながらも親には止められているという状況。そんな時に、彼を自殺志願者かと思った絵本作家のつぐみと出逢います。 つぐみはアルビレオ号と名付けたキャンピングカーに乗り、愛犬のうめまよと共に全国を旅する絵本作家の女性。その自由奔放な生き方に雲平は刺激を受け、彼も行脚に繰り出すこととなります。 自分だけの秘密基地で移動しながら愛犬と戯れる豊かな時間。行きたいと思ったところに行けて、各地の温泉に入ったり美味しいものを食べたりする日々。これに憧れを持たない人がいるでしょうか! 読んでいたら、ミルで豆から挽いたコーヒーの香りを楽しみながら、ポップアップルーフで満天の星空を眺める豊かな時間を過ごしたくなります。 まったく手が届かないことではないものの、今の生活があるためにその選択肢を取れないという人も多いでしょう。しかし、一歩踏み出せばこういう世界で生きることもできるのだと教えてくれます。 旅先で出逢うさまざまな人との交流模様も面白く、各地の美味しそうな名物なども登場し、旅の醍醐味を疑似体験できます。実際の旅と同じように良いことも悪いことも起きますが、それがいい。読んでいて心が晴れやかになっていく物語です。

学食「ハナ」のしあわせごはん

博愛の「学食JK」に癒される… #1巻応援

学食「ハナ」のしあわせごはん pote
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

転校生男子は、同じ学校の女子に「学食の食券」を貰う。学食に行ってみると、そこには働く彼女がいた……そんな始まりのこの作品。全体的に「美味しさ」と「小さな博愛」に溢れた物語となっています。 学食というと、安くて味はまぁゴニョゴニョ……みたいに言われがちですが、この学校の学食はとても美味しくて激混み。評判の学食を切り盛りする、まだ高校生なのにしっかりした彼女に驚かされます。 何故か姉と二人暮らし?の転校生男子。元気がなさそうだったのを、学食女子と学食でも、それ以外でも共に過ごすうち……少し活き活きし始めた?私達も一緒に元気を貰っている気持ちになれます。 学食女子は本当に優しいのですが、それはこの男子にだけではなく、親友から迷子まで、一人ひとりに気を配っている。目の前の人をよく見て、少しの優しさで相手を支える、そんな「博愛」を持った女子。 べったりとした愛情ではなく、小さくても細やかな気遣いに救われる、そんな優しさがある学食……とても良い! 何故学食で働くのか、という理由は語られますが、まだまだ何かありそうな予感。その辺も気にしつつ、再び優しさをもらう為に次巻も読みます!