虚構推理

だんだん理解が追い付いて、だんだん面白くなる

虚構推理 城平京 片瀬茶柴
mampuku
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 ファンタジーとミステリーは相いれないと思われがちだが案外そうでもない。米澤穂信の『折れた竜骨』は中世欧州は海賊の時代が舞台のローファンタジーで、魔法ありバトルあり殺人事件の謎解きありのなんでもありなのに美しくまとめられており、魔法も込みで見事な推理で事件解決してみせている。世界のルールや常識を読者に押し付ける「説得力」とか「強度」が凄いのかもしれない。この『虚構推理』もそのような意味では面白いリアリティを持っている作品だと思う。  妖怪や幽霊のような存在と密接に関わり合いながら、都市伝説じみた事件を解決していく伝記ファンタジー。謎解きモノとして読者が掴まっていられる拠り所となるリアリティの線引き(世界観の輪郭みたいなもの)が1巻2巻と読み進めていくうちに徐々に鮮明になっていく。  たとえば、第1章『鋼人七瀬編』の1巻で登場する怪人「鋼人七瀬」は、それまでの流れ的になんとなく異物感があって腑に落ちない感じがするが、登場人物の思考や「七瀬」への感じ方を通して読み手が抱く「七瀬」に対する違和感の正体がだんだんわかってくる。これがなんとも快感なのだ。  本編には関係ないが、裏表紙の紹介文が1巻では「伝記×ミステリー」だったのが2巻で「伝記バトル」、3巻では伝記ミステリーに戻っている。変遷に意味はあるのかないのか・・・

Jinx

元王者が忘れられた天才を回顧する…!

Jinx 灰谷音屋
たか
たか

ジュニオール灰谷音屋先生の全3回にわたる新連載。10年前、渡米を目前に控えたベテラン王者・真山は、駆け上がってきた若き天才・手嶋と対戦し敗北。2人は再戦を約束するも、手嶋は路上で凶刃に倒れ夭逝。真山も敗北を受けてアメリカ行きの話が消え、表舞台から引退した。 そして現在、真山は喫茶店で記者から手嶋健壱について取材を受け、あの試合について振り返るが、自分が退いた後の総合格闘技界では新たな動きがあって…というあらすじ。 **いまここに居ない人間について、周囲の人間の証言で振り返るドキュメンタリー風の語り方がとにかくめちゃくちゃエモい…。** https://i.imgur.com/NSGlUTK.png    (『Jinx』灰谷音屋 第1話) 昔を思い出して語るシーンは静かな喪失感があって落ち着いてるんだけど、試合シーンは格闘技ならではの迫力があってその対比がすごく好き。 そして真山と手嶋の、**たった一度しか拳を交えていないにも関わらず、お互いについて「三度の飯より人を殴るのが好きな病人」、「初めて見つけた俺と同じ趣味の持ち主」と評し通じ合う関係性がホント良い…。** 最後に登場した現在の格闘技界を担う若手選手に真山がどう絡んでいくのか…続きが楽しみ。 【週刊少年チャンピオン 2019年No.47】 https://www.akitashoten.co.jp/w-champion/2019/47