BECK

音楽によってすべてを変えられた人に捧ぐ

BECK ハロルド作石
六文銭
六文銭

青春時代に読みかけで、そういえば最後どうなったのかな?とふと思い出し、一気に読んでしまった。 吹き出しも少なく、文字通りスラスラと一気に読めてしまった作品でした。 そして、完全に自分の中で、名作の一つになりました。 そもそも自分自身、音楽に大分助けられたところがあり、 下手な物好きで楽器も手にした口なので、 出てくる登場人物も、ストーリーにも、 グイグイ引き込まれて、共感しっぱなしでした。 漫画だから音なんか鳴ってないのに、 作中内のライブ会場にいるわけでもないのに、 登場人物たち同様、なぜか楽曲に「やられてしまう」感覚は、 まるで、音楽によって人生を変えられた人たち共通の価値観を表現しているようで、これが本作の魅力だと思います。 ストーリーは、冴えない主人公・コユキが、バンド仲間と出会い、音楽によって自身を、オーディエンスを、そして世界を変えていくという展開。 王道も王道。 奇をてらわないからこそ、作者の持ち味が試されると思うのですが、本作は全く裏切りません。 物語の扉絵が名盤のジャケットを模したものになっていたり、有名アーティストがモデルになったような登場人物たちだったりと、 作者自身も音楽に造詣が深いと感じ取れ、そこから描かれる物語が音楽好きも共感できる内容になっております。 誰のマネでもない  唯一無二だからこそ響く音楽の世界を真摯に時に面白おかしく表現しております。 音楽に魅せられたキャラクターたちも非常に魅力的で、 特に、年食って読み直したら川久保さん(ベックのプロデューサー)の存在はシビれました。 こういう裏方キャラ、めっちゃ好き。 語り尽くせないのですが、特に好きなエピソードが ・なぜエディが親友ではなく、コユキに楽曲を聞かせたのかの理由 ・アヴァロン・フェスティバルでのレオン・サイクスの粋な演出 (彼もまた音楽によって救われた人間だったことを感じ取れて震えました) ・バンドの醍醐味でもある参加したフェスが  グレイトフルサウンド  →そのルーツであるアヴァロン・フェスティバル  →そして、またグレイトフルサウンドに戻ってくる流れ  そして、その間に起こるメンバー間の関係性の変化 ですね。 何度でも読みたくなります。 こんなご時世でライブなどままなりませんが、そういう意味でも音楽によるアツイ熱気を、魂を、本作で感じてみてはいかがでしょうか? 最後に音楽は改めて偉大だと感じました。 BECKを読みながら、昔好きだった曲を思わず聞き直して、つくづくそう思います。

アクシデンツ

事故は起こるさ…

アクシデンツ 山田貴敏
ひさぴよ
ひさぴよ

『Dr.コトー診療所』の山田貴敏先生が90年代に少年サンデーで連載していた、あらゆる事故の原因を解明しようとするヒューマンドラマ。 主人公・鯨樹雄(通称クジラ)は内閣官房特命調査官という役職につき、普段はおもちゃの修理屋を営むオッサン。ひとたび大きな事故がおきると現場に駆けつけ、その調査能力で予想外の真実を導き出していくというのが基本ストーリーです。 https://websunday.net/museum/no40/img/page12.gif 題材としては非常に地味なものでしたが、乗り物事故、自然災害事故、毎回さまざまな危険な事故現場が描かれています。中にはちょっと現実離れした設定もあって、リアリティ不足が気になってしまう部分もあります。 話の終わりには必ず「事故調査報告書」なるものが出てきて一区切りついて、別の事故の話に変わります。この内容で12巻もあるので一度に全部読み通すのは疲れますね。思い切って途中の巻で好きな話だけ読むのもアリです。 主人公クジラとヒロイン柊のキャラクターは抜群にいいコンビで、家族のような恋人のようなすごく良い関係。柊って妙に気になる存在で、クジラと並ぶと子どもみたいに見えるのだけど、話によって大人っぽくなったり見た目の印象がコロコロと変わり、ほとんど同一人物には見えない回もありました。クジラとは家族みたいな関係で恋人でもなかったけど、作品になくてはならない不思議な存在でした。