あらすじ

「寄生生物を一匹ずつ殺そう」新一は思いたつ。今まで寄生生物の存在を知りつつ、何も出来なかった自分への苛立ち、身近な人間に危害が加えられるのでは、という不安、親しい者を殺された怒りの感情が新一の心にはずっとうずまいていた。しかし、新一は自分の認識の甘さを思い知らされる。寄生生物の刺客・三木が新一を狙う。「三匹で一人」の三木に、新一とミギーは…!?
寄生獣 1巻

ごく普通の高校生・新一は、ある晩部屋で、ヘビのような生物を発見する。叩き潰そうとしたその生物は、新一の右手に侵入してきた。その生物の正体は、他の動物の頭に寄生して神経を支配する寄生生物だった…!寄生に失敗し、新一の右手に寄生したミギーと新一の奇妙な生活が始まる。やがて二人は、お互いの命を守るため、人間を食べる他の寄生生物と戦い始める…。全人類必読!未来への警鐘の書が登場!!

寄生獣 2巻

新一の右手に住みついた寄生生物、ミギー。ミギーの仲間たちは、人間の頭に寄生して全身を操り、人間を食べる。全国各地で「ミンチ殺人」事件が起こっていた。新一はただ一人、その原因を知っていたが、何も出来ずにいた。ある時、新一の学校へ赴任してきた教師・田宮良子は寄生生物だった。彼女が連れてきたもう一人の寄生生物「A」は新一を殺すために学校へ乗り込んできたが…!?

寄生獣 3巻

旅行中の母親が寄生生物に襲われた!自宅に返って来た母は、もう以前の母ではなかった。その姿に、新一は戦意を失い、心臓を貫かれてしまう。しかし、ミギーの必死の努力で新一は一命をとりとめた。入院している父の元へ、再び寄生生物が現れる、新一は、母の仇をとるため対決に向かう。母の姿で情け容赦ない攻撃を仕掛ける寄生生物を相手に、新一&ミギーは戦えるのか!!

寄生獣(4)

新一の心臓を修復して以来、新一とミギーには変化が起こっていた。ミギーは一日のうち数時間、完全に眠っている状態になってしまい、またミギーの散らばった細胞が原因なのか、新一の身体能力は格段に上がっていた。ある時、普通の高校生を装い、新一の高校へ転入生として現れた寄生生物・島田秀雄。「君と争う気はない」とうそぶき、生徒として学校生活を送る彼の真の意図とは!?

寄生獣(5)

人々は寄生生物の存在に少しずつ気付いていった。学校内で惨殺事件を起こし、死亡した島田秀雄は、人間以外の生物である、と言い出す者も現れ、「人間に化けた怪物がいたるところにもぐり込んでいる…」そんなデマが飛び交うようになった。一方、寄生生物を探知する能力を持つ女子高生・加奈。しかし、新一と他の寄生生物との区別のつかない彼女は、危険にさらされてしまう。

寄生獣(6)

人間社会の事を理解しはじめた寄生生物たちは、同じ地区に集結し、人間たちを食べる「食堂」を確保していた。東福山市長選では寄生生物の広川が当選、新一は寄生生物たちが何を始めようとしているのか、動きを気にしていた。一方、寄生生物・田村玲子が放った人間の私立探偵・倉森に、新一とミギーは正体を知られてしまう。彼らは寄生生物に加え、人間からも追われる立場となるのか!?

寄生獣(7)

「寄生生物を一匹ずつ殺そう」新一は思いたつ。今まで寄生生物の存在を知りつつ、何も出来なかった自分への苛立ち、身近な人間に危害が加えられるのでは、という不安、親しい者を殺された怒りの感情が新一の心にはずっとうずまいていた。しかし、新一は自分の認識の甘さを思い知らされる。寄生生物の刺客・三木が新一を狙う。「三匹で一人」の三木に、新一とミギーは…!?

寄生獣(8)

「なぜ寄生生物は生まれたのか?」自身の存在に疑問を抱く寄生生物・田村玲子。しかし、本能のまま人間を補食しつづける仲間たちは、彼女を危険視し、殺そうとした。また、寄生生物のことを知りすぎたことが原因で、家族を殺された探偵・倉森は、寄生生物への復讐を決意し、玲子が実験として産んだ子供を誘拐する。交渉の場に呼び出された新一は、玲子から意外な言葉を聞く。

寄生獣(9)

田村玲子は警察の銃弾に倒れた。警部補・平間が中心となり、水面下で寄生生物掃討に向けて人間たちは動き始めていた。新一は、普通の高校生として学校へ戻って来る。しかし、平間は新一の周囲で、寄生生物の事件が続けて起きていることから、新一に何かを感じ、助けを求めた。ターゲットは寄生生物のコロニーと化した東福山市役所。寄生生物たちのリーダー・市長の広川はどう動くか…!?

寄生獣(10)

寄生生物掃討作戦は、人間側が優勢だったが、五体の寄生生物を操る後藤を前に、53人もの死者を出してしまう。後藤に追われ、山中をさまよう新一とミギー。互いの連係で寄生生物を倒してきた彼らの力も、後藤には通じない。二人は奇策を講じ、生き残りを計るが、作戦は失敗し、ミギーは新一だけを逃がそうとする。ミギーは死んでしまったのか!?ここに人類の是非を問う!!不朽のSF、堂々の完結。

寄生獣

不徹底と言う名の慈悲

寄生獣 岩明均
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

「人間が何故泣くのか分かった。俺には涙は流せないが」-『ターミネーター2』  再読して思ったがつくづく不思議な漫画だ。今現在の漫画は『童夢』を一つの里程標として映画的な立体を備えた場面や編集(コマ割)で事件を描きその「アクション」で以てテーマを射影するのであるが、『寄生獣』はそれに比べると余白が多い。ならば、手塚治虫のような捲し立てる戯曲風かと言えば、やはりあの余白やコマの多さを考えるとそうでもない。  モノローグの豊かさや情報の緩急のコントロールは正しく他の作家の系譜と言い切れない、アラン・ムーアやフランク・ミラーとかとは意味が異なるが正しく「グラフィック・ノベル(絵のついた小説)」とでも言うべきものだった。  この作品の「結論」が出るのは恐らく「田村玲子」の死亡からだと思う。田村は一種の心尽くしとして拳銃弾の雨に背を穿たれている最中に、回避、防御され二の次にしながら新一の亡くなった母の顔を模し彼に「不格好でもパラサイトも他人を慮れる」事を示しその心を解し、ミギーを驚愕させる。即ち、パラサイトが「人間味を持てる」事を示したのだが、その反対に市長の広川(パラサイトと共存していない純粋な人間)はディープ・エコロシー(敢えてこう言えば地球と言う自然全体の保護のために人間の淘汰さえ辞さない発想)に基づく、或いはナチス・ドイツさえ彷彿とさせる虐殺と管理を提唱し、人間でありながらパラサイトと誤認される。  要するに、「相手に対する慮り」こそが「人間」の得難い性癖であるが、それは人間の条件や特権ではないと言う事、それを元に環境を考えなければならない事がこの作品のテーマだと思う。  恐らく、最初は広川的なディープ・エコロジーこそが結論だったのかも知れないが、彼の示す如き全体主義を現出させる事に気づき、涙ながらに後藤を殺める新一が新たに象徴として浮き上がったのだろう。  私はこの変遷を見て『ターミネーター2』を思い出した。この映画も「歪な生き物」が現代社会に登場し、人間の過ちや罪深さを浮き彫りしていくのだが、ターミネーターが「命の大切さ」を学んだ事―又はこれを通してサラが未来の為と言って他人を殺める事は出来なかった―で黙示録を回避できるのではないかと言った希望が紡がれる所で終わる。  広川やスカイネット的な計画と管理ではなくこの「感情」を軸にした他者へのシンパシー、自己の尊重こそが世界的な終末を避けると言う結論はあるいは失敗するかもしれないが、岩明やキャメロンのようにそれに賭けるべきなのかもしれない。その面でもいい漫画だと思う。 P.s 投稿より約9時間後、「「相手に対する慮り」こそが「人間」の得難い性癖であるが、それは人間の条件や特権ではないと言う事」、「広川やスカイネット的な~」との文言を追加、編集