あらすじ七浜高校水族館部のふたりきりの部員だった小雪と小夏。この春新入部員が入り、部は活気を帯びつつあった。やがて夏が近付き、小雪は、いよいよ本格的な受験勉強をはじめることになる。意を決した小雪は、月明かりの下、小夏を海辺に誘う。小雪のある決断を聞いた小夏の願いは――。迫る卒業、残されたふたりの時間、今まで以上に、かけがえのない日々。止まらない時を刻み、暗闇から光を見付け出したふたりは――。電子特別版には、紙書籍版5巻の各店店舗特典イラストを9ページ追加収録!
父と離れ、東京から愛媛に引っ越してきた転校生の小夏。 美人で成績優秀、完璧すぎて近付きづらいと周囲から思われている小雪。 それぞれの孤独を抱えた2人が寄り添い合い、心を通わせていくお話。 寒いほど独りぼっちだった2人が、水族館部でふたりぼっちになる。 お互いの存在が支えになって世界が広がっていくけれど、わたしだけのあなたでなくなってしまうのが寂しい。 傍にいてほしい、寂しい、一緒にいてほしい。 そんな気持ちに気づくまでに、ちゃんと伝えられるまでに、たっぷり時間をかけてしまう不器用な2人が愛おしい。 そんな物語じゃないと井伏鱒二は言うかもしれないけれど、孤独の岩屋を抜け出しても山椒魚と蛙は寄り添い続けられるんだと伝えたい。 光の中で笑い合う2人の姿に涙が止まらなかった。心が洗われる作品。