七浜高校水族館部のふたりきりの部員となった、小雪と小夏。小雪は高嶺の花の優等生として、小夏は都会からの転校生として、異なる孤独を抱え、お互いに惹かれ合っていく。連れ立って町の夏祭りへ出かけたある日、小夏は、以前から気になっていたことを小雪に問いかける。「初めて会ったあのとき、どうしてわたしに声をかけてくれたんですか?」小雪は戸惑いながら、慎重に言葉を紡ぐが、うまくまとまらず、不器用な答えにしかならない。気まずい雰囲気が流れる中、それでも、お互いの距離を確かめ合ったふたりは――?電子特別版には、作者萩埜まことがTwitterで更新中の描き下ろしイラストやコミックを11ページ追加収録!
父と離れ、東京から愛媛に引っ越してきた転校生の小夏。 美人で成績優秀、完璧すぎて近付きづらいと周囲から思われている小雪。 それぞれの孤独を抱えた2人が寄り添い合い、心を通わせていくお話。 寒いほど独りぼっちだった2人が、水族館部でふたりぼっちになる。 お互いの存在が支えになって世界が広がっていくけれど、わたしだけのあなたでなくなってしまうのが寂しい。 傍にいてほしい、寂しい、一緒にいてほしい。 そんな気持ちに気づくまでに、ちゃんと伝えられるまでに、たっぷり時間をかけてしまう不器用な2人が愛おしい。 そんな物語じゃないと井伏鱒二は言うかもしれないけれど、孤独の岩屋を抜け出しても山椒魚と蛙は寄り添い続けられるんだと伝えたい。 光の中で笑い合う2人の姿に涙が止まらなかった。心が洗われる作品。