※ネタバレを含むクチコミです。
表題作「サタニック・スイート」を含んだ六編の短編をまとめたヤマシタトモコの短編集。静かにさり気なく描写される表情や動き。六つの短編はどれも不思議な魅力に溢れている。 「妖怪」の友人だろうが、「超能力」をもった女の子だろうが、あるいは先生を手玉にとる女の子だろうが、自然と感情移入し、気がつけばヤマシタトモコの世界にどっぷりと浸かっている。なぜそうも遠い人々に感情移入させられるのだろうか。読み返すと、どの作品にも「人の弱さ」が描かれていることに気付く。つまり人の弱さを精緻に、自然に、描いている。そこでは誰もが弱さを抱えて、生きているからだ。だからヤマシタトモコの作品は面白い。サタニックスイートは、そんなことを教えてくれる貴重な短編集なのだ。
表紙のイラストと装丁(ピンクの液体のところがちょっと立体になってる)が素敵で思わず購入。ファッションをテーマに、ヤマシタトモコ先生が好きなものや悩みを語ります。 好きなメンズファッションの話題で、スケーター男子、空港で見かけた素敵なアフリカ系ビジネスマンのおじ様と並んで、**日曜日のお父さんファッション**(※私服にスーツ用靴下をあわせる)が登場したのには笑いました。 **「田舎貴族の娘が着てそうなドレスが好き」**から始まるヤマシタ先生の妄想がジブリの影響を多大に受けていて、「わかる!!!そういうの大好き〜!!」と激しく共感しました。 読んだのはかなり前ですが ・槇村さとる先生とお食事することになったら ・入院したときのファッション ・フンドシとブラの話 **・松たか子が姉ちゃんだったら** ・ファッションを褒められたときのリアクション など、面白すぎてメチャクチャ記憶に残ってます! この本1冊でヤマシタ先生のことが大好きになりました…! わたしもいずれ手ぶらで新幹線乗りた〜い。
それぞれの孤独の在り方は違うし、理解し合えないことはあるけど、歩み寄れる。こうした人との距離の測り方は現代においてとても大事なテーマをもった作品だと思う。 槙生のスタンスは、分かるまで話し合うわけでも、押し付けるわけでもなく、「受け入れる」こと。理解できなくとも朝ちゃんだけの「寂しさ」があることを認める。それはどこか悲しいことにも思えるが、仕方ない。ふたりは「ちがう人間」なのだから。けれど、「砂漠」があることを認めてくれる人が側にいる。それは朝ちゃんにとって、一部の読者にとって命綱になってくれるのではないだろうか。
ヤマシタトモコの女性は人形のように美しい。色気があって、身体のバランスがよくって、はっきりとした顔立ちをしている。ただ、彼女たちの本当の魅力は『お人形』じゃないところにある。 この作品に扱いやすそうな女性は一人も出てこない。誰もが自身のスタイルを意識しているからだ。自分の内側の本音と外側の出来事。そうした揺さぶりの中から生まれる衝動。瞬間、彼女たちの表情や仕草はこれ以上ないほど瑞々しく描写される。その魅力はお人形には決してない、人だから出てくるものに違いない。何度でも読みたい。
快活な女子高生・夏がヒップホップダンスに憧れて入部した「ダンス部」は実は社交ダンス部だった。同時にアニヲタでネクラな男子、端場くんがイジメッコのせいで社交ダンス部に入部届けを出されてしまう。正反対の2人がこのダンス部でペアを組むことになって…という感じです。とりあえずまあ青春してます。 いつもだるい感じの女部長や、そんな部長が大好きなメガネ君など、ステキな先輩たちも見ていて幸せになります。 読み終えた後は、清清しくも少し切ない気分に。 男性漫画、少女マンガ、BLと幅広く描いてきたヤマシタトモコ先生ならではの部活もの漫画だと思います。
私は好きですが男性は苦手な人が多いだろうなぁ…という印象の内容です。なんかグサッと刺される感じ?私は好きですが。
明らかに虐待ってほどでもないけど「うちのお母さんのこういうとこが嫌だったなぁ」というもやもやした『朝』の気持ちが、『槙生ちゃん』によってほぐされていく。まだ始まったばかりの連載を、不器用なふたりを見守るみたいにして読んでる。 子供は親を取り替えることはできないから、我慢というか見て見ぬフリで耐えなければいけないことがたくさんある。朝と槇生ちゃんの関係を通して、子供時代の私も救われるといいな。
シェルターとか刑務所として使うために開発中だった技術の事故に巻き込まれて、生きているものを通さないようにする透明な膜で町が覆われてしまった。復旧のめどは立たず町から出られずに生きていく人々の話。短い短編がちょっとだけ繋がっている形で描かれている。 閉鎖された空間で生きていかなければいけない閉塞感や、色々な可能性(職業とか)を強引に閉ざされてしまった感じとか、その中でちょっとした生きがいを見つける感じの心理的なところをかなり緻密に描いていて、さすがヤマシタトモコと思った。 この漫画の主軸にもなっている希のストーリーだけど、外の世界に恋人がいてどうしても触れ合えない悲しみをそのまま描いているのでかなり心にきました。
※ネタバレを含むクチコミです。