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お茶にごす。

悩める最強の男

お茶にごす。 西森博之
名無し

「狩る側と狩られる側、キミはどっち」と聞かれれば、僕は当然狩られる側なわけです。生物は抑圧されることであらたな進化の可能性を得ると言われていますが、僕も中高生のころにヤンキーに対するステルス性能を獲得し、幸いなことにいままで絡まれたことはありません(かわりに、精神が不安定な人と野生動物にはよく絡まれます)。そんな僕ですから、ヤンキー漫画は好きではありません。ヤンキー漫画に描かれている友情は仲間内のものだけで、""それ以外”には向けられないからです。""それ以外”な僕がどうして感情移入できましょうか(いやできない)。  今回紹介する『お茶にごす。』はヤンキーが主人公のマンガです。でもヤンキー漫画ではありません。そこに描かれているのは「優しさとはなにか」に葛藤するひとりの青年です。  『お茶にごす。』の主人公・船橋雅矢は恐ろしい人相と人智を超えた強さで、近隣の不良から”悪魔まークン”と恐れられる男です。そんな彼の望みは『平和な生活を送りたい』ということ。しかし、その凶悪な人相に寄ってくるクズを返り討ちにしているうちに、いつのまにか修羅の道へと突き進んでしまったのです。  高校入学をきっかけにほのぼのスクールライフを送ろうと思ったまークンは、部活に入ろうと思うものの、彼の悪評は広まっており誰も目も合わせてくれません。そんなとき、茶道部の部長・姉崎さんが、誰もが恐れるまークンを勧誘したのです!公平に接してくれた姉崎さんに心打たれたまークンは茶道部に入部し、新たな最凶伝説を作っていくのです。  そんなまークンに「アンタの顔が怖いから」といつだってストレートにツッコミをいれる女の子が夏帆。ちょっとばかりガサツで活発な夏帆は、どうすれば優しさを表せられるのか、まークンと同じように悩み、同じように部長にあこがれています。  しかし、まークンが憧れる部長も、特別な人間ではありません。まークンを勧誘した時も膝が震えるほどビビっていたのです。彼女は、人に優しくすることに躊躇しないと決めただけの、普通の人間なのです。  普通なのに優しい部長に憧れた、普通になりたいまークンは、さまさまざな経験から段々と他人に優しくできるようなります。「もしかしたら、自分は人にやさしくできるかもしれない」そう思った時、同時にあることに気が付いてしまいます。それは「災いを呼びこむ自分は、いるだけで他人を傷つけてしまう」ということ。自分が他人に誤解されるのはかまわなくても、周囲の人にまで迷惑はかけられない。  部長を大事に思うからこそ、近づかないという選択をしたまークンを、夏帆は川へ蹴り落とします。そして、彼の人生を変える一言を発するのです。  以前紹介した『道士郎でござる』の道士郎とは違う、悩める最強の男の小さな一歩がとても心地よいのです。全然爽やかな風ではないのに、爽やかな気持ちになれる、不思議なマンガなのです。  それにしても、西森博之先生が描く人間のクズは本当に非道でドキドキしますね!

不揃いの連理

タイトルから見る"伴侶"の形

不揃いの連理
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

ここではタイトル『不揃いの連理』の語義と内容をリンクさせながら、(6巻までで)四組の女性ペアの関係を追う本作の魅力を書いてみたいと思います。 「連理木(れんりぼく・れんりぎ)」というのは、隣りあった木々の接触した枝や幹が一つにくっつき、木目まで混ざり合った状態のこと。そこから「連理」という言葉は二人の深い契りを表すのだそうです。 幸せな予感のある「連理」という言葉。では「不揃いの」という言葉はどうでしょう? 登場するペアは、いずれも全然タイプの違う二人。そしてどちらか片方、もしくは両方とも「ダメな人」だったりもします。 まっとうな会社員×元不良は見た目に反して、ダメなのは会社員の方。いかにも悪そうな人と優等生のJKコンビは、優等生が意外と暴力的etc……。でもそんな二人が何故か寄り添う。 ではそこにどんな心があるのか。 ある人に惹かれる理由を、言葉で言い表すのは難しい。でも、なぜある人の側にいるかは、理由を言える場合もある。 この作品でそれが分かりやすいのは、ダメな漫画家に接する生真面目な編集者。彼女は恋愛的惹かれの他に、ダメな漫画家を支える動機としての「ある気持ち」を持っている。そして同じようなものは、他の三組にも見て取れる。「ある気持ち」はおそらく頼りない人に対する普遍的な心情なので、納得する人は多いと思います。 「ある気持ち」で支え合い、接するうち、彼女たちはいつのまにか離れ難くなっていく。そこには理屈ではなく、もはや必然として一つになった連理木が生まれている。 伴侶って、こういうことだよな……大きな安心感とエモーションが同居する感じ。実はかなり暴力描写・しんどい内容も多いのにそれはとても不思議な感覚で、いつまでもこの物語を追う動機となってゆくのです。 ダメな人に対する、共通する「ある気持ち」......どんなものか、ぜひ本作から探してみてください。 さあ、まだ不穏な堅物教師×生徒の物語はどうなるかな? (6巻までの感想) (追記:実はマンバ読書会でリアルタイムで書いたものから、細かく改稿しています。どんなふうに変化しているか、ぜひ配信と比較してみてください! https://www.youtube.com/watch?v=FgBPuVvUHFI) #マンバ読書会 #クチコミを書く回

お茶にごす。 2巻
お茶にごす。 3巻
お茶にごす。(4)
お茶にごす。(5)
お茶にごす。(6)
お茶にごす。(7)
お茶にごす。(8)
お茶にごす。(9)
お茶にごす。(10)
お茶にごす。(11)
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