読んだあといろいろ考えてしまう
特殊能力によって人の心の闇の形が見えてしまう主人公。登場人物たちの内面の葛藤や欲望、トラウマなどの描写がすごいです。それぞれに独特な形態を持っていて、心の闇を象徴的に表現するとこんな感じなのかと関心してしまいます。 登場人物たちが抱える社会問題や偏見、性差別、虐待など、現代社会が抱える問題を扱っていて、それらを深く掘り下げながら、問題提起をしている漫画です。
▼第1話/新宿 ▼第2話/依頼 ▼第3話/金欠 ▼第4話/素性 ▼第5話/オペ ▼第6話/活性化 ▼第7話/実験 ▼第8話/左側 ▼第9話/左目 ▼第10話/カマ ●主な登場人物/名越(新宿西口のカーホームレス。34歳。詳細な身元は不明)、伊藤(22歳の医大生。名越にトレパネーション手術を持ちかける) ●あらすじ/新宿西口で車上生活をしている主人公・名越は、持ち前の虚言癖のためか、他のホームレスの中にとけ込めない日々を送っていた。そんな彼の唯一の楽しみは、車で気ままに走るドライブ。だがついにガス欠となり、お金も底をついてしまう。そんなある日、名越の前に不気味な男が現れて、彼に声をかけてくる(第1話)。 ●本巻の特徴/伊藤という医大生から、「70万円で頭蓋骨に穴を開ける人体実験をさせてほしい」と持ちかけられた名越。“トレパネーション”と呼ばれるその手術を受けると、第六感が芽生えるというのだ。最初は全く相手にしなかった名越だったが…?
ホムンクルスは頭蓋骨に穴を開けることで他人の内面が視覚化されるというアイデアだけでもビジュアルだけでも読み進めたくなる物語なのだが、主人公の名越が、他者が偽ってきた自身の内面を救済していくたびに、主人公名越自身のそして現代の読者の偽りがあぶり出されてしまうのだ。前作の殺し屋一から遙かにグレードアップされた、絵柄はこの手の青年漫画の中でもトップクラスのリアリズムを醸し出している