殻を破った先にある絆へ
内気で自己表現できない女子高生が、堂々とした転校生女子に引っ張られて演劇部を立ち上げる物語は、意外にも内気な主人公に脚本の才能がある一方で、転校生女子の方が焦っている様子が描かれる。読み始めの二人の印象は、少しずつ変わってゆく。 主人公も、そして転校生も、「本物」を得るために殻を破る必要に迫られる。次第に突きつけられる現実、問われる覚悟。その中で主人公は転校生の側にいるために、転校生は恐れている現実に抗うために、先へ進む。熱くて緊張感のある物語。 そこに高校生ながら劇団で活躍する「本物」の同級生、彼女らに当てられた新入生が加わり、学園祭のステージへ……この新入生の苦闘に引き摺り込まれる。 彼女はやりたいことがあるのに、その才能が決定的に欠ける人。その現実を突きつけられた彼女は、新たな道を模索するしかなかった。目指すものへの未練と、現実との葛藤……それでどこまでも若い時間を消費できると知っているので、彼女の先行きが俄然気になる。 高校演劇を描きながらプロの劇団と交流する点や、転校生と他の生徒との関係など「目指すものと現実の距離」「内部と外部」を意識的に描いて、冷静でシビアな視点がある物語。そんな中で主人公と転校生の関係は強固だが、互いに成長することでその絆がどのように変わってゆくのか、先が楽しみだ。
小説を書くのが好きだけど自分に自信を持つことが出来ずにいた高校2年生の阿久津桜は、
転校生の柊つばめに小説を書いていたノートを取り違えられ、彼女に小説を読まれてしまいます。
小説を誰かに見せるどころか人と話すことも苦手で自分から動くことが出来ずにいた桜。
そんな彼女に対してつばめは、彼女の物語を世界に伝えたいと、演劇部を立ち上げることを提案します。
これまで自分では誰かに伝えることができなかった桜の言葉を「演劇」という方法で形にしてくれたつばめ。
彼女との出会いで少しずつ変わってゆく桜は、つばめに対して何か自分が返せるものはないかと考えるうちに、
彼女もまた桜とは異なる形で心に澱を積もらせてきたことを知ります。
この作品はそんな2人が高校演劇を通して「本物」へと近づいてゆく、
その姿を熱量高く、そして瑞々しさ溢れる絵で描き出す作品です。
1巻まで読了