料理漫画としての「科学」と「謎解き」の融合がいい
この漫画は作品中に登場した絵にネットで流通している画像からの 「トレース使用疑惑」が生じ、疑惑解明まで休載という形での 実質的な打ち切りになっています。 著作権問題に関してはどこかで線を引かざるを得ませんし、 打切りも止む無しかとは思いますが、 私的には、謝罪の上で改めてタイアップなどの解決策を模索し、 連載を継続してほしかったですね。 包丁人味平から始まり、美味しんぼや ザ・シェフなどの登場で 「グルメ漫画」は漫画として確立したように感じます。 いまでは百花繚乱というか、多士済々というか 色々なグルメ漫画が存在します。 それだけにただ「美味かった!」「美味しいよ!」では グルメ漫画もなんのインパクトも与えられなくなっている 感じもします。なので、 「う、美味い!」「だが、どうやってこんな味が!」「実は・・」 みたいな流れに沿った、謎解き系の流れというか、 そこに人情とか絡めたドラマチックな展開というか、 そういう構成になっているグルメ漫画が多い気がします。 「ダシマスター」も基本的にはその流れなんですが、 美味さの解説というか科学的な論証と、 謎解きのそれぞれが秀逸で説得力があります。 それはダシという一見するならばただの液体、 しかも完成形としての料理が出来た時点では見る影もない、 そういう存在は、まさに漫画で謎解き展開を描くのには 適した素材だからかも、と思ったりします。 そこに加えて、当初はなんだかキャラ設定が定まっていないのでは、 とも思った主人公が、実は深い過去を秘めたキャラであることが 徐々に明らかになっていき、 まさに「あ、ダシが効いていたんだ」と思わせる展開になりました。 かえすがえすも連載打切りが残念です。 未完で終わった故にこそのラストの余韻が 皮肉にもミステリアスな終わり方になって、 何とも言えない味わいになっている感じもしますが。
最初に結論書いてしまうと、この作品には、ギミックがあります。それはもう、発明とも言えるべきものでしょう。
一口食べた時のリアクション描写、「ハッ?」と驚愕し、「何故なんだ!」と激怒、時に調理人である、主人公、ヤタ・ダイゴに掴みかかってくるのです。
感情の発露である、「喜怒哀楽」このうち「怒」を、旨い味に当たった時の反応に使うというのは、前例が無いのではないでしょうか?
我々が、「美味しい!」と思う要素であるのは「ダシ」である、を軸足に、料理と調理を、化学的/衒学的に因数分解のように紐解く、それを厳しいけれども人情に熱い主人公、おっちょこちょいっぽい助手、キメ台詞「命が宿ったーーー…!!!」と共にシャープな線で描く。
いいですよね、ケレン味全開で。これでこそグルメ漫画です。
ご存知のように、兄弟バトルの、ちょうどいいところで終わっちゃうんです。
紙も絶版、電子書籍版も予定なし、と言う、懲罰的な現状なんですが、なにかしてなにかして欲しいですわ。