樹村みのり先生といえば笹生那実さんの「薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記―」にも登場されていましたが、作品を読まれたことがないという方も多いかもしれません。夏目房之介先生のコラムでは「ジャンルに捉われない作家」として取り上げられていました。
私が樹村みのり先生を知るきっかけになったのが、こちらの短編集に収録されている「夢の入り口」という作品です。主人公の友達がカルトだとは知らずに講習に参加してしまい、徐々にマインドコントロールされてしまう過程が描かれています。
他にも実際の事件をモデルに描かれた作品が収録されていて、この情報だけではとても重いテーマの短編集だと思われるかもしれませんが、樹村みのり先生の力量により不快な気持ちにはなりません。ただ「こんな時に私たちはどうすればよかったのか?」ということを優しく問いかけてくださっています。
凄惨な強姦殺人、カルトの洗脳、家庭内暴力と息子殺し……。事件が照射する人間と社会の深淵を描いた短編漫画集。