終末のワルキューレ』のバトルヒロイン版としか言いようがない漫画。可愛い女の子がいっぱい出てくるので自分はこっちのほうがすき。
読んだことない人向けに説明すると、バトルはナレーションが能書きを述べてより強そうな技をぶっ放したほうが勝ちの、カードゲームやソシャゲ、漫画だとバキに近い感じです。原作が『賭ケグルイ』の河本ほむら先生だからといって高度な心理戦を期待するとがっかりしますが、キャラモノとしては間違いなく面白いです。
先程ソシャゲに喩えたように、誰でも名前は聞いたことのある歴史上の人物(ジャンヌ・ダルクやマリー・アントワネットなど)をそのままモデルにした美少女キャラが盛りだくさんとなっており、ある程度誰でも知ってそうな程度の史実ネタを引用しながらバトルを展開させていきます。
たとえば1巻では、自慢の怪力で大太刀を振り回す巴御前を相手に苦戦する敵が、巴は近接タイプだろうと読み距離をとって飛び道具で嬲り殺しにしようと試みたところ、どっこい武士のメインウエポンは実は弓なのである!とドヤ顔で巨大弓で返り討ちにする……などこのように大味で簡単に先が読めてしまう展開の連続ではあるのですが、言い換えれば読んでいて疲れずスナック感覚で美少女バトルを読みたいという欲求を満たしてくれる娯楽作品でもあるということになります。
ときおり試合中に腹に穴が空いたり四肢が吹っ飛んだりしますが、シグルイとか天上天下とかと比べるとキャラクターたちが痛がるそぶりをあまり見せないため、それほどしんどさは無いです(その点はどちらかといえば『一騎当千』のほうが近いかも)

読みたい
MA・MA・Match

映画『怪物』みたいな構成の話だった

MA・MA・Match
mampuku
mampuku

いい意味で誤解や異説の飛び交いそうな、多層構造のストーリーだったように思う。 主人公の一人である芦原(母)は、生意気な息子とモラハラ夫を見返すべく、息子の得意なサッカーで勝負を挑む。 前半は、ママさんたちが友情や努力によって青春を取り戻しながら、悪役(息子と夫)に挑むという物語で、この悪役というのがちょっとやり過ぎなくらいのヘイトタンクっぷりなのだ。その場限りのヘイトを買うキャラクターは、ヒーロー役の株を上げるための装置として少女漫画では常套手段だ。だが『マ・マ・マッチ』はそういう物語ではないため、話はここで終わらない。 後半は時を遡り、息子と夫の目線で描かれ直す。母目線ではイヤ〜な輩にしか映らなかった彼らにも彼らの言い分や考えがあったのだと明かされる。 真っ先に私が思い出したのが、是枝監督の映画『怪物』の主人公の一人、安藤サクラさん演じるシングルマザーの早織である。 息子が教師に暴力を振るわれたことに抗議するため学校に乗り込むも学校側からぞんざいな対応をされ不信感を募らせる早織。その後教師や子供など、さまざまな視点が映し出されることでやがて全体観が像を結ぶ。 『マ・マ・マッチ』でも、後半部分を読んだあとに最初から読み返すと些か感想が変わる。息子や夫がイヤな奴らとして描かれているのは確かだが、先入観によって印象が悪化していたのも事実だ。なにより、序盤に出てくる夫のコマは母を嘲弄するような不快なものだったが、そもそもこれは芦原母の回想であり主観だ。その後実際に登場する夫は彼女と衝突こそすれ至って真面目だ。 つまり、それぞれの立場から不満を抱いたり譲れない部分でぶつかり合いながら、逐一仲直りしたり折り合いをつけているのだ、という話に畢竟見えなくもない。悪者退治という少女漫画にありがちなフォーマットで導入を描いて入り込みやすくしておいて、後半の考えさせる話でモヤモヤさせる。末次由紀先生、さすがの巨匠っぷりを見せつけた怪作だ。

テセウスの船

どちらかというと『テセウスの船』というより『動的平衡』じゃない?

テセウスの船
mampuku
mampuku

時間遡行をして人生をやり直したとしたら、それは本当に同一の自分といえるのか?という問いを有名なパラドックス「テセウスの船」になぞらえたタイトルだ。 ストーリーに関しては論理的整合性や感情的整合性においてやや粗い部分も感じられたもののサスペンスとして緊張感もあり、ラストは新海誠監督『君の名は。』のような美しい締め方だったし概ね面白かった。 ただ、タイトル『テセウスの船』がイマイチストーリーにハマっていない感じがした。 どちらかといえば「動的平衡」のほうが比喩としてしっくりくるのではないだろうか。 「動的平衡」とはシェーンハイマーの提唱した概念であり、日本では福岡伸一氏による著書『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』で有名になった言葉である。“生命”とは、取り込まれ代謝されていく物質、生まれ変わり続ける細胞どうしの相互作用によって現れる“現象”である、という考え方だ。 主人公の田村心は生まれる前の過去に遡り、そこで巻き起こる惨劇を阻止することで、その惨劇により自身に降りかかった不幸な運命を変えようと奮闘する。作品では、過去を改変して自らの人生を曲げようとする一連の試みをテセウスの船にたとえているが、やはりピンとこない。作中、田村心は殺人事件を未然に防ぐため凶器となった薬物を隠したり被害者に避難を呼びかけたりするが、その影響で心の知る未来とは異なる人物が命を落としたり、結果的に大量殺人を防げなかったばかりか予想だにしなかった事態を招くことになる。 この予測不可能性こそがまさに動的平衡そのものって感じなのだ。生命体は、船の部品のように壊れた部分を取り替えれば前と変わらず機能する、ということにはならない。ある重要なホルモンの分泌に作用する細胞を、遺伝子操作によってあらかじめ削除してしまったとしても、ほかの細胞がそのポジションを埋めることがある。これは心が殺人事件の阻止に何度も失敗したことに似ている。思わぬ不運や予想しない死者が出てしまったのも、脚のツボを押すと胃腸の働きが改善するなどの神経細胞の複雑さに似ている。 船は組み立てて積み上げれば完成するが、生命は時間という大きな流れの中で分子同士が複雑に相互作用しあうことで初めて現象する。『テセウスの船』での田村心の試みは人生あるいは歴史という動的平衡に翻弄されながらも抗う物語だったのかもしれない。

本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
シリアルキラー異世界に降り立つ 異世界バトルロイヤル 連載版

シリアルキラー異世界に降り立つ 異世界バトルロイヤル 連載版

殺人鬼の名は九鬼櫻子。転生した彼女は不死の聖女・ミリアと共に、気まぐれ女神の思いつき『転生者108人の殺し合い』へ意気揚々と参戦するが…?殺したがり「悪女」と死にたい「聖女」の殺戮旅が今始まる。ルール無用・なんでもアリの鮮血無双サバイバル、堂々開幕…!!

シリアルキラー 異世界に降り立つ

シリアルキラー 異世界に降り立つ

止めたいのに人を殺したい衝動が止まらない殺人鬼の男は、望んでいた死刑が執行されて喜んだのも束の間、異世界転生してしまう。女神から託された使命は、男の殺人衝動を活かして12人の転生者を殺すことだった!転生者が聖者とは限らない!異世界転生サスペンス!

善行少女

善行少女

白瑠璃学園は乙女たちの園。ある日起きた一人の少女の死をめぐり、麗子は学園の屋上で“善きこと”を遂行する少女と対峙する。原作:河本ほむら×漫画:森田蓮次が贈る学園サイコサスペンス 『ヤングマガジン』2016年14号掲載の45ページ特別企画読み切りに森田蓮次キャラ設定画と描き下ろしイラストを加えた単話配信特別版。

【無料】厳選バトル漫画試し読みパック 《「終末のワルキューレ」含む全4作品》

【無料】厳選バトル漫画試し読みパック 《「終末のワルキューレ」含む全4作品》

【無料試し読み】『終末のワルキューレ』ファンに絶対に読んで欲しいバトル漫画が集結!『終末のワルキューレ』全世界の神VS偉人、武人、傑人!!!!地上で横暴を極める人類に対し、神々は人類の滅亡を決定する。その決定を覆すべく選ばれたのは人類史上最強、13人の戦士たち。神々とのタイマン13番勝負に勝ち、人類を存続させることは出来るのか!?第一回戦は北欧神話最強「トール神」VS三国志最強「呂布奉先」!人類存亡を賭けた戦いが、今始まる!!『終末のワルキューレ異聞 呂布奉先飛将伝』『終末のワルキューレ』公式スピンオフ、ついに始動!!人類存亡を賭けた神対人類十三番勝負〈ラグナロク〉の先鋒を飾った、人類代表「呂布奉先」。頼れるものは「武」のみであった三国時代において、何者にも縛られず、数多の戦場を翔けた飛将・呂布奉先の伝説の数々が、今、鮮やかに蘇る――!!!!!小5男子も、中2男子も、高2男子も“三国志”に大興奮!! バチボコ三国武侠伝!!!『東京決闘環状戦』戦後日本の復興と発展を支えた制度「決闘環状戦」。 それは、東京の大動脈・山手線を、血で血を洗いながら奪い合う、戦いである。 長らく膠着状態が続いていた最中、新駅「高輪ゲートウェイ駅」が 作られることから、決闘の火蓋が切って落とされようとしていた。 神田駅を受け持つ安田鯉之助は街の存続のため、戦いに身を投じる――。『魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う』フランスを救った奇跡の英雄ジャンヌ・ダルク。火刑に処され、その生涯を終えようとしていた彼女は死の間際、別世界へと飛ばされてしまう。そこにいたのはその名を歴史に刻み、「魔女」と呼ばれる32人の女傑たちであった。 そして、最後の「魔女」ジャンヌダルクが揃い、欲深き魔女たちの殺し合い魔女千夜血戦の開幕が告げられるーー!!

BEYBLADE X(ベイブレード エックス)

BEYBLADE X(ベイブレード エックス)

X(見えないもの)を見せてやる――― 手にしたのは「希望」か、「絶望」か。少年の運命は激変する。求めたのは“強さ”“勝利”“名誉”そして――― “X(まだ見ぬもの)”。これは、ベイブレードにすべてを懸ける物語。いま一人の少年が、“X”を求め、ベイブレードの頂に立つ! 極限加速(エクストリーム)したベイブレードが 新時代を駆け抜ける―――― 全世界で5億個以上販売された史上最強ホビー、ベイブレードの最新シリーズ「BEYBLADE X」を題材とした ストーリー作品。月刊コロコロコミックにて連載中。

勇者パーティーの荷物持ち

勇者パーティーの荷物持ち

勇者パーティーには、最強の「荷物持ち」がいた。冒険の果てに、大魔王を倒した勇者たち。荷物持ちのリディは、憧れの勇者たちのようになるために冒険者としての一歩を踏み出す…! 「賭ケグルイ」の河本ほむらが描く冒険譚! 戦闘スキルゼロ、だけど最強! 無双&無自覚【荷物持ち】の冒険が幕を開ける! ※こちらの商品には、巻末にデジタル版限定特典イラストが収録されています。※

HIGH CARD -♢9 No Mercy

HIGH CARD -♢9 No Mercy

オリジナルTVアニメーション「HIGH CARD」の先行コミカライズ。平凡な学生のパーシー・パーカーは、一枚のカードを手に入れたことで不思議な連中に目をつけられる…。アニメ原案の河本ほむらが原作を、アニメキャラクター原案のえびもが作画を手掛けるスタイリッシュ・アクション! ※こちらの商品には、巻末にデジタル版限定特典イラストが収録されています。※

幕末賭博バルバロイ

幕末賭博バルバロイ

【デジタル版限定!「少年ジャンプ+」掲載時のカラーページを完全収録!!】時は幕末、世は賭博――。剣術師範代の大御神甘楽(おおみかみかんら)は異様な空気を醸す賭博師・豊臣秀と出会い、陰謀渦巻くギャンブル界に身を投じることになる。其々の野望を賭けて、見抜け欺け覚悟を決めろ! 一世一代、大博打劇の幕が上がる!!

異世界の姫との恋バクチに、人類の存亡がかかってます

異世界の姫との恋バクチに、人類の存亡がかかってます

異世界のプリンセス・リュミスは、恋に憧れる可愛い少女だが、その母は最凶最悪と恐れられる大魔王。担任となったカズキは早速彼女に気に入られるが、彼女を突き放して泣かれれば、大魔王の手により地球は爆破され、彼女の好意を受け入れれば文字通りリュミスに喰われることに。ドキドキが止まらない究極のラブコメディー、スタート!

メミニッセ

メミニッセ

絶対破壊の力の獲得と同時に、自身の記憶が偽りであることを知った来栖ライは、本当の自分の過去を取り戻すために戦う――! 記憶を巡るサスペンスアクション、登場!!

シンバ・ラ・ダ

シンバ・ラ・ダ

ほとんどの陸地が水没してしまった世界。外の世界の事を知らない少年バロン。彼は島の人達に嫌われいつか外の世界に出ると決めて船を作っていたが、島に珍しい船が流れ着く。その船に乗っていたのはジュア王国の王子シンバ。シンバは「ラ・ダ」を探してこの島に来た。二人は出会ってすぐ仲良くなり、バロンは初めての友達を得たのだが、争いに巻き込まれ「ラ・ダ」の操縦者になってしまったバロン。二人の旅は今始まる…。

人間カード

人間カード

平凡な大学生マモルは、幼馴染ユウカの、失踪した父親を捜す過程で闇のアイテムに辿り着いた。生身の人間を1枚の紙の中に閉じ込め、売買する「人間カード」! 戦慄の人間トレーディングサスペンス開幕!!

FGOに影響力受けすぎた一昔前のソシャゲ感(絵はSSR級)にコメントする
※ご自身のコメントに返信しようとしていますが、よろしいですか?最近、自作自演行為に関する報告が増えておりますため、訂正や補足コメントを除き、そのような行為はお控えいただくようお願いしております。
※コミュニティ運営およびシステム負荷の制限のため、1日の投稿数を制限しております。ご理解とご協力をお願いいたします。また、複数の環境からの制限以上の投稿も禁止しており、確認次第ブロック対応を行いますので、ご了承ください。