「クラゲの骨は青」感想
何とも意味深なタイトルだ。そもそもクラゲに骨は無い。この得体の知れなさが、しかし読んでみると妙にしっくりくる。 物語全体を覆うヒリヒリした痛みや不安に煽られるように、ページを捲る手はどんどん早くなっていく。…結局ひとは得体の知れないものに対して、恐れを感じながらも惹かれてしまうものなのだ(笑)。
セミの鳴き声がうるさく響く夏のある日。高校2年生の七海遥花は、隣の高校に通う工藤暁に告白される。「話したこともないのに…」と戸惑う遥花に対し、工藤は「まずは友達から」と提案し、2人は連絡先を交換することに。時を同じくして、2人の住む町のとある踏切では連日、同じような人身事故が続いていた――。
『花は口ほどにモノを言う』の追本さんの新作なら間違いなく面白いはずだという確信に近い期待を持って、楽しみに第一話を読みました。
そして、読み終えた後は第一話最後のセリフと同じ感情に陥りました。
不穏と不安と闇と絶望をじっくりコトコト煮込んで冷やして固めたものを、見目は良い薄く脆い何かしらで覆って取り繕った歪な料理のような。普通の物語であれば救済を担いそうなはずの存在が、名状し難き深淵へと繋がる道塗となっています。
以前から感情表現の巧さは光っていましたが、マンガという媒体における不穏さを煽る表現力もすこぶる高く、常に嫌な予感をもたらされます。その一方で毎話毎話の引きも非常に強く、ページを捲る手が止まらなくなる。そんな魔的な誘惑を感じる作品です。
言うまでもなく通常クラゲには骨はないわけですが、それを青いと表するタイトルは一体何を意味するのか。
ジェットコースターのような目眩く展開と、精神へのダウン追い打ち。色々な意味で目の離せない物語です。