SFではなく、文字通り「少し不思議」な短編集
全9編。不思議な状況に対する説明がなくても自然に読めるのがよかった。特に「ザ・人間チャレンジ」と「孤塔にて」が好き。 「ザ・人間チャレンジ」 2週間オフィスで人間の仕事を体験することになった猫の話 「BAR 俺のドッグフード」 雷の日に逃げ出した飼い犬と久々に再会したらBARのオーナーになっていた話 「笑うゴリラと未亡人」 災害で亡くなった夫に似ているゴリラに会う為に動物園に通う未亡人の話 「ロケットおばさんの献身」 家出少年の「僕はあの星からやって来た…」というウソ話を親身になって聞いてくれるおばさんには訳があったという話 「孤塔にて」 出口のない高層ビルの屋上に閉じ込められた殺し屋と掃除のおばちゃんが恋する話 「窓際の僕」 誰からも好かれていない窓際族のおじさんサラリーマンの家庭での幸せなひとときの話 「夢売り人の恋」 キャラクター遊園地の着ぐるみの中の人として働いていることは大好きな彼女にも言えない決まりになっていて苦悩する青年の話 「メメント飛日常」 時空を循環する不思議なバスに乗った少女と少年の話 「ぼくちんに罪はない」 繭になって蝶になった書けない小説家の帰りを待つ恋人と飼い猫の話
なんとも不思議な話ばかりだった。
かといってまったく理解できないような話はなく、ふわっと着地するものが多かった。
あ、飛んでるからオチがこうなのか。
ただ、読んでて1つだけ納得行かないのがあった。
窓際会社員のオジサンが主人公の話で、この読後感はモヤモヤというかエンヴィなのだろうか、すごーく納得いかん感じだった。決して不満であるというわけではないんだけど…なんだろうこの気持ちは。
ズルいなと思ったのか、羨ましいような気もするけどそうでもないような?なんというか複雑な心持ちになった。
いずれもふわっとしていて、どれもふわっと着地してしまう。第1話・2話と猫→犬と続いたから、こういう動物ものの短編集なのかなと思ったけどそんなこともなく。
ただ、「このぐらいがいい」という心地よさがある。