なんて良作な漫画なんだにコメントする
淀川ベルトコンベア・ガール
これからも必要とされる物語
淀川ベルトコンベア・ガール 村上かつら
ひさぴよ
ひさぴよ
2020年11月、マンバ通信の新連載「壊れやすい卵のための21世紀マンガレビュー」の第1回「淀川ベルトコンベアガール」は、これまで読んできたマンガ系レビューの中で最も記憶に残る記事の一つとなりました。なぜなら、取り上げた作品のレビューが素晴らしいだけでなく、自分の中で、漫画とはどういう存在であったかを、改めて考えるきっかけを与えてくれたからです。 https://manba.co.jp/manba_magazines/11638 書き手の可児洋介さんは、文芸誌ユリイカなどで漫画評論を執筆されている方で、文章からも真面目で誠実な雰囲気が伝わってきて、個人的に好きなライターさんです。 まず、記事の序文で村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチになぞらえて、拡大を続ける物語世界の現状と、漫画というものの文化の立ち位置を示されています。 「壊れやすい卵を無慈悲なシステムの壁から守るものが物語である」とするならば、これは絶対に読まなければ、という思いに駆られまして、気付いたら全3巻を読み終わっていました。それ以降も、二度三度と繰り返し読み直してますが、レビューの通り、本当に素晴らしい漫画でした。作品の見所についてはマンバ通信の記事中で、余すところなく紹介されていますので、そちらを読むことをおすすめします。 個人的に感じた事としては、10年前に完結した漫画ながら、2021年の今読んでもそこまで古さを感じさせないテーマである、という部分にあります。今の日本社会を取り巻く状況があまりにも変わってないせいなのか、この作品が孕む幾つものテーマが、今後も間違いなく必要とされる物語であり続けるであろうと感じました。 何一つ不自由なく幸福な人生を送っていたとすれば、その人にとって、もしかして必要のない物語かもしれません。ただ、生まれ育ちによってそれぞれの置かれた状況があり、価値観も何もかも異なる他人がいるということを知るということ、立場の異なる他人の人生にどれだけ思いを馳せることができるかということを、この作品からは投げかけられているような気がします。 変更された最終回について。 東日本大震災を契機に、村上かつら先生が表現したものは、うまく言葉にはできませんが「他人のために祈るという行為そのもの」であったのではないかと感じました。かよちゃんが祈る対象が、自己から他者へと次第に移り変わり、他人のために心の底から祈る姿に、私は心を打たれ感動したのだと思います。もはや宗教や神様なんてものは何でもよくて、真に他人を思いやる気持ちこそが、すべての始まりなのだと。そう受け取りました。 最後に、マンバ通信の記事でも触れられていますが、各巻のあとがきにて作品の生まれた経緯や時代背景、作品に込められたメッセージが記されています。それと、CUE3巻に本作の元となった読切作品「純粋あげ工場」が収録されていますので、余裕があればそちらも読んでみると良いです。本編で前作と繋がりがあるコマの存在に気付けます。 https://manba.co.jp/boards/16324/books/3 さらに完全に蛇足ですが、あとがきネタでもう一つ。 取材先の食品工場というのが、「日の出食品」「太子食品工業」と書いてあります。いずれもスーパーでよく買う油揚げを作ってるメーカーさんだったことに気付きました。日常的に食卓でお世話になってる人も多いのではないでしょうか。特に太子さんのは他より美味しいので、おすすめです。🦊 http://www.taishi-food.co.jp/?pg=143530690610828
え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?(コミック)
コスプレをして働く人がフロアにいたら
え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?(コミック)
ゆゆゆ
ゆゆゆ
めちゃくちゃな仕事環境と業務量のなか、主人公の心を守ったコスプレの完成度はさっぱりわからないのだけど、作中でそのコスプレ&振る舞いに対し「解釈違い」と言われているのを見て、神は三物も四物も与えないのねと思ってしまった。 プログラミングも裁縫も、人間関係を円滑に進めるコツもよく知っている主人公。 さらにガチのコスプレ衣装姿を会社の人に見られても、普通に仕事ができる心の強さをもっている。 美容室で髪をサラサラにして、エステでお肌ツヤツヤにして、ネイルをサロンでバチッと決めて…が彼女にとってのコスプレらしい。 ものすごく優秀な人とは言え、職場のコスプレはどうなの?TPOは?と思ったものの、それなら和装ならOKかとふと疑問が湧いてきて。 さらにおかしな環境のせいで、おかしなことをし始めた(服装以外はおかしくない)なら、そもそも、おかしな環境を提供したブラック企業がおかしいわけで…と考え始め、混乱してきてしまった。 プログラマ向け塾がメインの舞台となるが、プログラミング知識は不要。 大変な状況にある方への処方箋というか予防薬というか、スカッとするというか、誰かと生活するうえでの心構えというか、そういうかんじの漫画だった。
くまみこ
女子中学生巫女と、神の使いのクマ
くまみこ
ゆゆゆ
ゆゆゆ
『江戸前エルフ』が好きな方は『くまみこ』も好きかもしれないなと思った。 連載もアニメ化もこちらが先みたいなんですが、知った順番が逆だったので…。 こちらは女子中学生巫女とクマ。 神の使いである、人語を話すクマのナツと祖母と一緒に暮らしている女子中学生のマチは、高校は都会へ出たいと思っている。 でも家電は使うと即壊すほど苦手(冷蔵庫は使用可)、パソコンは少し操作すればブルーどころか黒画面。 Suicaもヒートテックも知らず、クマのナツに都会クイズを出される始末。 薪割りやら、かまどで飯炊きするマチをみているとこれはどのくらい前の漫画なんだろうと思ったのだけど、ナツを見ると現代に戻される。 ナツはパソコン・タブレット・インターネット等々に詳しく、操作も問題なく、テレビも見るし、村には携帯電話の電波が届かないことも知っている。 マチ以外のムラの人たちはナツと同じくらいの知識量にみえるので、もしかしたらマチだけおかしいのかもしれない。 第一話を読んで、そんなマチが都会の高校へ進学して、都会生活をやいのやい過ごす物語かと思いきや…。 村からほぼ出ない。 出るのはナツが与える都会慣れ試練か、村おこしを望む従兄弟の手伝い(なかば強制)。 慣れ親しんだ人以外と会話は苦手で、服も巫女服・制服・ジャージくらいしか持っておらず「服を買いに行くための服がいる」状態。 なんなら村につながる橋が、割とよく崩れ落ちているように見える。村から出られない。 よく考えたらまだ中学生なんだし、そこまでして、ひとりで街なかのイオンやらなんやら行かなくても…と思うのは私が地方の田舎出身だからだろうか。 マチとナツ、二人のやり取りが楽しい。あっという間に読み進めてしまう。
よどがわべるとこんべあがーる
淀川ベルトコンベア・ガール 1巻
淀川ベルトコンベア・ガール(2)
淀川ベルトコンベア・ガール(3)
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