絵を見ているだけで、体が疼く。皮膚感覚が、視覚が聴覚が嗅覚が味覚が鋭敏になる。この短編集から得られるのは、そういう体験だ。
いつもの心地よいイラスト体験……白く弾む肌、サラサラした触感、大きな目の愛情表現からは遠い。時に辛い。しかし目を惹く。見るのを止められない。
丁寧に生々しさと向き合った者しか得られない感覚が、心の奥底に残る。
物語もリアリズムに貫かれる。誰かの価値判断を挟まない、どうしようもない物語。絵でも物語でも、美しいものを求める心を拒絶して、そうして絶対的な生の実感を与える。
生半可な審美眼では得られない、恐ろしい強度がここにはあった。
●裸のマオ…貧しい中学生を美術教師がモデルに誘う。ひどく痩せたマオの体、古い家の質感。まともではない話なのに誰をも責めたくない不思議。百合度★★★★★
●きしむ家…ボロアパートの大家は、住人の母娘の男性事情をただ見てるだけ。ボロさが音で切実に伝わる。百合度★(男注意)
●あつい皮膚…重度のアトピーの女子は、図書委員の女子の家に呼ばれる。ボロボロの肌の質感はこちらにも痒さを充分に伝える。ラストが重すぎて…百合度★★★
●推しの肌が荒れた…推しのアイドルのイラストがバズった女子。推しへの想いが増すほど推しの肌荒れを描いてしまい…実は描く方もアトピー。様々な点を踏まえて丁寧に読みたい作品。百合度★★★
2020年7月の豪雨による災害で、『放課後ていぼう日誌』のモデルである熊本県芦北町は大きな被害を受け、作者の小坂泰之先生も被災されたとのことです。先生と被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
このような事態を受け、『放課後ていぼう日誌』の連載は休載になると、編集部よりアナウンスがありました。
あまりにも大きな災害ですので、軽々に早い復帰をとは言えません。まずは身体と心の安寧を図っていただき、安心できる日常を取り戻す時が来ることを、心より願っております。
私達に出来るのは、今ある作品を愛でながら、回復を祈ることくらいだと思いますので、こちらのスレッドで、読んでるよ!アニメ観た!とか、あそこがいいよね!とか、話しながら熊本に想いを寄せましょう!
これから読みたい!とかでもいいですよ!
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