寂しさの紛らわせ方
寂しさを紛らわせるために、身体の関係を持つって、永遠に満たされないはず。 でも、それが分かっていても人って一時の感情で動いてしまうもの。 感情的になって行った一度の過ちが、その人の人生までも変えていくという考えまでは、到底及ばない。 寂しくなった時、自分の心と相手の心にまっすぐに向き合えるとどんなに幸せだろう。 難しいけど・・・。
誰に対しても変わらぬ夫の優しさに、ときに胸を傷める新妻。別れを告げられた過去の傷を癒すかのように年下の既婚者を誘うバツイチ・アラフォー。女の子と間違えられるほど美しい顔立ちで定まらない自身の“性”に、戸惑う男子学生。旦那と瓜二つの双子の義弟と、不貞を働く人妻。客に密かな恋心を抱く、シングルマザー風俗嬢。恋うほど傷む、迷えるものたちの過失。
『きみが心に棲みついたS』天堂きりんさんの最新作です。
優しい夫は自慢である一方で、誰にでも優しすぎるところに日頃から言い知れないもやもやを抱えていたある日、そのもやもやが一気に爆発する事件が起きる妻の話から始まります。
基本的に1話完結ですが、それぞれの話が上手くリンクしており、前話である人物が取った言動の理由が連鎖的に後から明かされていくという構成に面白さがあります。
その上で、現実にありそうな痛みを催す関係性や感情が巧みに描かれていき、人によって嫌悪感や苦々しさ、狂おしさ、あるいは深い共感などさまざまな感情を喚起させられることでしょう。
ピュアで綺麗な恋より、ドロドロでリアルな愛憎を読みたいという方にお薦めです。