表題作以外もすごかった
超有名な表題作が面白いのはもちろんなんですが、それ以外の短編ももれなくすべて面白かった。 親と子という関係を描く中で、親は大人だからと言って心まで大人になりきれているとは限らないんだなと思える表現が多い短編集だった印象。 そんな中でも異彩を放っていたのが「学校へいくクスリ」。かなりSF色が強めで、作者の遊び心も見えて、何を伝えたかったのかはよく分からなかったけど読んでて楽しい一作でした。
その日、生まれてきたのはとても可愛い女の子だった。だけどなぜか母親の目には、その子の姿がイグアナに見える…。母と娘の間に横たわる愛と憎しみの葛藤を描いた表題作ほか、両親にスポイルされた少年が人生をみつけるために戻らなければならなかった場所「カタルシス」、アバンチュールへの一瞬の迷い「午後の日射し」、コミックス未収録の短編「帰ってくる子」など6編の異色傑作集。
自分が生んだ娘がイグアナに見えてしまい、どうしても愛することのできない母親と、自分もイグアナだと信じてしまっている娘の物語。
主人公の見た目がイグアナなんて、絵も物語もなかなかシュール。
それでも、健気に母親の愛情を求める主人公の姿には涙が出ます。
よりによって、妹の姿は普通の人間の子に見えるお母さん。姉妹の扱いは雲泥の差に…。
母親の態度が、いかに子供の人格形成に影響するか! これは今でいう「毒親」の物語かもしれません。
最後は、死んだお母さんの姿もイグアナで、主人公はその気持ちを思い、許すのですが…。
心に突き刺さる、母と娘のお話でした。