ラストがつらい
どうして紫電改のタカを読もうと思ったかというと萩尾望都先生が好きだとおっしゃっていたな〜と覚えていたからです。主人公の滝城太郎は誰にもマネできないくらい高レベルの飛行テクニックを持っているんですが、まだあどけない少年なので可愛らしさが満点です(確か萩尾先生もそこを推していたはず)。少年マンガで連載されていたのでストーリーもTHEマンガな展開が続くんですが、ラストでいきなり現実を突きつけられるのでかなりショックを受けました。やっぱり反戦がテーマの作品なんだな…。
第二次大戦末期の昭和19年夏、台湾南部にある高雄基地、名機「紫電」で編成された七〇一飛行隊に、少年飛行兵・滝城太郎がやってきた。訓練ばかりが続いていた七〇一飛行隊だったが、滝が入って早々実戦の機会が訪れる。勝手に編隊を離れ、単独行動をとった滝は大目玉をくらうが、仲間達には受け入れられる。ある時、フィリピンのマルコット米軍基地を七〇一飛行隊だけで襲撃せよという緊急指令が入って…戦争とは何か?何のために戦うのか?生と死の狭間で苦悩する少年飛行兵の青春!!
戦争の悲惨さを問う物語ならば、これからも語り継がれるべき”負”の記憶として発表されることでしょう。しかし一方で戦争は、国を守る軍人を英雄視する面もあったことは確かで、なんとなくそういった描き方は今の世の中ではタブーに近い。ですがこの作品では、その戦争の二つの面が同居しています。前半は戦闘機乗りとして成長し、勇ましく敵機を撃墜していく主人公の物語。しかし後半になると主人公は戦争の意味を考え、苦悩するようになる。結果的にこれは戦争を扱うには有効だったのかもしれません。少年向けの作品として描かれていても、戦争とは結局何だったのか、という問いを入れられると感じ方がそこで違ってきてしまう。作者も体験として戦争に接し、思うところがあったからこんな展開になったのでしょう。描き手として、そして読み手として戦争を知る人がいなくなりつつある現在、こんな戦争の空気感を内包する内容というのは貴重な存在。今こそ読んでおくべきでは、と思います。