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86―エイティシックス―

ヒリつくような命のやり取りが描かれる

86―エイティシックス― 吉原基貴 しらび 安里アサト I-IV
名無し

すごいもん読んだ気がしました。細かい世界観はあらすじを読んでいただくのが一番いいと思いますが簡単にまとめてみます。 ・レギオンという無人兵器群によって共和国は危機に陥っている ・共和国は被差別階級「エイティシックス」の市民を戦闘兵器に乗せてレギオンと戦わせている ・エイティシックスの部隊を率いる「ハンドラー」は安全な壁の中からリモートで指揮する 乱暴に過ぎますが『コードギアス』や『進撃の巨人』あたりをイメージしてもらうのがよいのかなと思います。(Wikipediaには『ミスト』と『スクリーマーズ』から影響を受けていると書いてありました) 押し寄せるレギオンの物量に対してエイティシックスの戦線ははっきり言ってジリ貧で、彼らの戦死率はべらぼうに高く、コスパも倫理観も最悪。エイティシックスが乗り込む「ジャガーノート」もカッコいいスーパーロボットでもなんでもない「棺桶」なんて呼ばれる仕上がりで全然性能よくないです(それで極限の戦闘をするのがハチャメチャかっこよいのだが……)。 それでもこの対症療法を取るしか無い、有効な打開策がないという点では、初期の『進撃』より救いがないかもしれない。それほどずっと絶望的な状況が続く…どころか話が進めば進むほど「詰んでいる」ことが次々発覚していくのが圧巻でした。 そんな状況でもスピアヘッドの隊員たちは決して戦うのをやめません。彼らが戦場に立つ動機が3巻でわかるのですがその瞬間、本当にゾクゾクしました。 エイティシックス最強とされるスピアヘッド隊の隊長シンと、彼らに歩み寄ろうとする指揮官レーナ。絶望的に離れた距離・異なる立場にいる主人公ふたりが価値観を少しずつ重ねていくのがメインのドラマとなりますが、互いへの共感と断絶が苛烈な戦場での出来事を通して多面的に描かれるのがズシンと響きます。 差別する側・される側の心情をステロタイプにまとめず、それぞれの人格・心からズブリと抜き出して目の前に出すかのような、キャラクターのセリフや表情が本当に迫力あるんですよ…。 設定は正直難解だなと思いました。飲み込むまでに少し時間かかる気がします。キャラも多いし。個人的にグッとハマったのも2巻からでした。 それでも一度入り込んでしまうと本当に戦場にいるかのようなヒリヒリした没入感が味わえると思います。読んでみてほしい…。

宝石の国

重さと軽さが同居する、命の話

宝石の国
アフリカ象とインド象
アフリカ象とインド象

大好きな漫画です。 学生の頃、この漫画に狂っていた時期がありました。 友人全員にこれを読めとしつこく勧めて、 読んだ人に対してはお前はこの漫画の何もわかってない!と浅い考察を語る最悪のオタクでした。黒歴史です。 つまり、人を狂わせるほど魅力ある漫画ということとも言えます。言えますね。 とはいえ、こちらは既に多方面で紹介され尽くした人気作でもあります。 今さら自分の稚拙な語彙でレビューしても読むに耐えませんので、 ネットの海に散乱した情報に少しだけ補足をして、読むことを迷っている方の壁を取り払えればと思います。 この漫画が話に上がる時についてくるのが、とんでもない鬱漫画だという話題。 これが読み手の1つのハードルになってしまっていると思います。もったいない! 大丈夫。救いはあります。怖くないです。 確かに取り扱うテーマは重く、展開に心が締め付けられることはありますが、この作品の魅力はそこだけではないです。 素晴らしいのは重厚な世界観の中に、ポップさのエッセンスを忘れず組み込んでいること。 (ここで言うポップさとは、いわゆる大衆に寄り添う心のこと) 会話のテンポ、 キャラの関わり、 かわいらしいジョークのセンス。 そういう要素の節々に、作者である市川春子氏の人柄を感じられます。 そしてその人柄から読み取れるのは、 この人は読者の心をズタズタにしたい訳ではないよ〜。 ということ。 きっと最後まで読み切った方なら共感してくれると思います。 苦しさの先に希望がある。 これは人間の話。命の話。生と死の話。愛の話。宇宙の話。 火の鳥超えてます。ガチ。

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