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バトンの星

作者の成長速度がスポ根的!

バトンの星 矢島光
兎来栄寿
兎来栄寿

『彼女のいる彼氏』の矢島光さんによる新作です。 矢島さんとは活動初期の頃から知り合いで、矢島さんが人生史上初めて描くというサイン色紙も頂きお店に飾っておりました。 それから2年と少し経ってから再びサイン色紙を頂いた時、見違えるほど画力が上達していて驚きました。 そして、この『バトンの星』を読んだ時に画力のみならず漫画力そのものが圧倒的に上がっていると感じました。 『潔癖男子!青山くん』の坂本拓さんの下でアシスタントをしながら美術予備校でデッサンなどの修行も積んだとのことですが、この短期間でここまで総合力が上がった方はなかなか見たことがありません。 テーマとなるバトントワリングへの愛。バトンを知らない読者をも惹きつけるバトンアクションのカッコよさ。イケメンと可愛い女の子を始めとする魅力的なキャラクターたち。テンポの良さ。 昔から「バトンマンガを描きたいんです!」と仰っており、原型となる作品のネームを見せて頂いたこともあって僭越ながらアドバイスもさせて頂いたのですが、『バトンの星』は本当に素晴らしい作品として結実したと思います。 連載は終わってしまっていましたがもっともっと見ていたい物語でした。矢島さんの今後の活躍もとても楽しみです。

この世界の片隅に

漫画と映画を久しぶりに見返した!

この世界の片隅に
かしこ
かしこ

2025年のお正月にNHK広島放送で映画「この世界の片隅に」が放送されたのは、今年で原爆投下から80年が経つからだそうです。この機会に私も久しぶりに漫画と映画をどちらも見返してみました。 やはり漫画と映画の一番の違いはリンさんの描き方ですよね。漫画では夫である周作さんとリンさんの関係について触れられていますが、映画ではありません。とくに時限爆弾によって晴美さんと右手を失ったすずさんが初めて周作さんと再会した時に、漫画ではリンさんの安否を気にしますが、映画ではそれがないので、いきなり「広島に帰りたい」という言葉を言い出したような印象になっていました。映画は子供のまま縁もゆかりもない土地にお嫁に来たすずさんが大人になる話に重点を置いているような気がします。それに比べると戦時下無月経症なので子供が出来ないとはっきり描いてある漫画はもっとリアルな女性の話ですよね。だから漫画の方が幼なじみの海兵さんと2人きりにさせた周作さんに対して、あんなに腹を立てたすずさんの気持ちがすんなり理解することが出来ました。個人的には男性達に対してだけではなく、当時の価値観で大事とされていた後継ぎを残せない自分に対しての悔しさもあるのかもしれないと思いました。けれどもあえて女性のリアルな部分を描きすぎない選択をしたのは、原作である漫画を十分に理解してるからこそなのは映画を見れば明らかです。 久しぶりに漫画と映画を見返してどちらも戦争が普通の人の生活も脅かすことを伝えているのはもちろん、すべてを一瞬で無いものにしてしまう核兵器の恐ろしさは動きのある映画だから強く感じた喪失がありました。そして漫画には「間違っていたら教えて下さい 今のうちに」と巻末に記載されていることに初めて気づきました。戦争を知らない私達が80年前の出来事を想像するのは難しいですが、だからこそ「この世界の片隅に」という物語があります。どんなに素晴らしい漫画でもより多くの人に長く読み続けてもらうのは大変なので映像化ほどの後押しはないです。これからも漫画と映画どちらも折に触れて見返したいと思います。

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