重さと軽さが同居する、命の話
大好きな漫画です。 学生の頃、この漫画に狂っていた時期がありました。 友人全員にこれを読めとしつこく勧めて、 読んだ人に対してはお前はこの漫画の何もわかってない!と浅い考察を語る最悪のオタクでした。黒歴史です。 つまり、人を狂わせるほど魅力ある漫画ということとも言えます。言えますね。 とはいえ、こちらは既に多方面で紹介され尽くした人気作でもあります。 今さら自分の稚拙な語彙でレビューしても読むに耐えませんので、 ネットの海に散乱した情報に少しだけ補足をして、読むことを迷っている方の壁を取り払えればと思います。 この漫画が話に上がる時についてくるのが、とんでもない鬱漫画だという話題。 これが読み手の1つのハードルになってしまっていると思います。もったいない! 大丈夫。救いはあります。怖くないです。 確かに取り扱うテーマは重く、展開に心が締め付けられることはありますが、この作品の魅力はそこだけではないです。 素晴らしいのは重厚な世界観の中に、ポップさのエッセンスを忘れず組み込んでいること。 (ここで言うポップさとは、いわゆる大衆に寄り添う心のこと) 会話のテンポ、 キャラの関わり、 かわいらしいジョークのセンス。 そういう要素の節々に、作者である市川春子氏の人柄を感じられます。 そしてその人柄から読み取れるのは、 この人は読者の心をズタズタにしたい訳ではないよ〜。 ということ。 きっと最後まで読み切った方なら共感してくれると思います。 苦しさの先に希望がある。 これは人間の話。命の話。生と死の話。愛の話。宇宙の話。 火の鳥超えてます。ガチ。
面白かった。
同作者の「ネメシスの杖」にも出てくる寄生虫の権威で天才的な紐倉博士が主人公の1話完結病気サスペンスもの。
「リウーを待ちながら」が秀逸すぎたので作者の過去作品を辿っていく形で読んでいるが、1話完結型でも内容が濃くて満足感がかなり高い。
このシリーズでの連載をずっと読んでいきたかったのだが、もう出ないのだろうか。
この漫画で扱っているテーマは、
・水際対策を越えて入ってきた致死性のウィルスに対する初期対応
・いきすぎたアンチエイジングブームからの不老不死への欲望
・遺伝がもたらすものと環境因子
といった感じの濃厚な3話。
話の内容もかなり掘り下げられていて面白いが、登場人物の関係性も良く描かれている。
かなり変人だが天才の紐倉博士と、元医者の優秀な助手のやりとりがいい。
紐倉博士は目的のためには手段を選ばないタイプで、助手は倫理観、正義感から融通が利かない堅物なので当然衝突するのだが、二人とも優秀なので平行線ということもなく会話は案外建設的だ。
紐倉博士は興味で動き、助手は高い給料で釣られ正義感で動くのも対照的だ。
ドラマで見たいなとも思う。
インハンドというタイトルだが、全ては神の手の内ということだろうか。