ゲームの世界に迷い込んで、ゲームの要領で強くなってチヤホヤされたり、悪い輩の手に渡る前に奴隷を買い取ってみたり、聞いたことある「なろう」小説のテンプレみたいな話ではあるんですが、原作がトップクラスの人気だったたけあって漫画のクオリティも高く期待の高さが伺えます。というか涼宮ハルヒやSAOの初期と比べるとラノベのコミカライズも随分地位が向上したように思えますね。絵がもう雲泥。

 ただこの手のオールドファッションなテンプレものは海外でのウケはよくなさそうですね(ポリコレ的な意味で)そういう枠から飛び出た、リゼロとかグリムガルみたいな万人に受けそうな人気作品が先にアニメ化され尽くして、異世界ハーレムみたいのは5chとかで白い目で見られがちですが頭空っぽにして読むには最適だと思いました。

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異世界迷宮でハーレムを

ハーレムハクスラスローライフローグライク

異世界迷宮でハーレムを 氷樹一世 蘇我捨恥 四季童子
えっちな名無し

原作は所謂なろう的な異世界転移で、ゲーム的な異世界にチート能力付きで転移して、戻れないから生活していこうという典型的な物。 だが当時のなろうでは珍しかったダンジョン探索、および迷宮による経済、奴隷ヒロイン等々いくつかの要素は後続に与えた影響も多い作品で、世界観部分は結構しっかりしていた。 ダンジョンに潜るたびにシステムの新たな発見をしてプレイヤーが成長していく過程はローグライクそのもので、その手のゲームにヒロイン攻略要素を付けた上でラノベに落とし込んでいる部分は未だに感心する部分がある。 しかし原作後半は元々主人公にダンジョンの奥の秘宝などの目的もなかったので、ダンジョンに潜るのは単に奴隷ヒロインのハーレムと自分の健康を維持する「日課」になってしまい、最強装備をそろえているのにボス戦前で引き返すようなだらだらした雰囲気が漂い始めてしまった。 その上ノクターンではなくなろうなので、奴隷ハーレムのイチャつきこそ多少有れどえっちな生活は碌に描かれなかった…のだが コミカライズでは作画が上手い上にハーレムのえっちな生活が存分に丹念に描かれるという良改変を行い、色々な意味で満足度は上昇している。 だからといって世界の雰囲気は疎かにされておらず、丁寧に漫画化されていて単純にダンジョン探索物としても出来は良い、原作後半に入っていないのも有るが。 なろう原作のハーレム物としては展開はややスローで、二人目が加入するのに6巻が費やされているが、その分一人目とのえっちぃ部分やダンジョン探索もしっかり描かれていて、そういう部分も見応えは有る。 原作後半部分に入るには相当な年数がかかるので、ヒロイン全員登場できるかは不明だし、原作小説も果たして完結するのかという部分は気になるが、冒険心も下心も満たされる良コミカライズ。

MA・MA・Match

映画『怪物』みたいな構成の話だった

MA・MA・Match
mampuku
mampuku

いい意味で誤解や異説の飛び交いそうな、多層構造のストーリーだったように思う。 主人公の一人である芦原(母)は、生意気な息子とモラハラ夫を見返すべく、息子の得意なサッカーで勝負を挑む。 前半は、ママさんたちが友情や努力によって青春を取り戻しながら、悪役(息子と夫)に挑むという物語で、この悪役というのがちょっとやり過ぎなくらいのヘイトタンクっぷりなのだ。その場限りのヘイトを買うキャラクターは、ヒーロー役の株を上げるための装置として少女漫画では常套手段だ。だが『マ・マ・マッチ』はそういう物語ではないため、話はここで終わらない。 後半は時を遡り、息子と夫の目線で描かれ直す。母目線ではイヤ〜な輩にしか映らなかった彼らにも彼らの言い分や考えがあったのだと明かされる。 真っ先に私が思い出したのが、是枝監督の映画『怪物』の主人公の一人、安藤サクラさん演じるシングルマザーの早織である。 息子が教師に暴力を振るわれたことに抗議するため学校に乗り込むも学校側からぞんざいな対応をされ不信感を募らせる早織。その後教師や子供など、さまざまな視点が映し出されることでやがて全体観が像を結ぶ。 『マ・マ・マッチ』でも、後半部分を読んだあとに最初から読み返すと些か感想が変わる。息子や夫がイヤな奴らとして描かれているのは確かだが、先入観によって印象が悪化していたのも事実だ。なにより、序盤に出てくる夫のコマは母を嘲弄するような不快なものだったが、そもそもこれは芦原母の回想であり主観だ。その後実際に登場する夫は彼女と衝突こそすれ至って真面目だ。 つまり、それぞれの立場から不満を抱いたり譲れない部分でぶつかり合いながら、逐一仲直りしたり折り合いをつけているのだ、という話に畢竟見えなくもない。悪者退治という少女漫画にありがちなフォーマットで導入を描いて入り込みやすくしておいて、後半の考えさせる話でモヤモヤさせる。末次由紀先生、さすがの巨匠っぷりを見せつけた怪作だ。

テセウスの船

どちらかというと『テセウスの船』というより『動的平衡』じゃない?

テセウスの船
mampuku
mampuku

時間遡行をして人生をやり直したとしたら、それは本当に同一の自分といえるのか?という問いを有名なパラドックス「テセウスの船」になぞらえたタイトルだ。 ストーリーに関しては論理的整合性や感情的整合性においてやや粗い部分も感じられたもののサスペンスとして緊張感もあり、ラストは新海誠監督『君の名は。』のような美しい締め方だったし概ね面白かった。 ただ、タイトル『テセウスの船』がイマイチストーリーにハマっていない感じがした。 どちらかといえば「動的平衡」のほうが比喩としてしっくりくるのではないだろうか。 「動的平衡」とはシェーンハイマーの提唱した概念であり、日本では福岡伸一氏による著書『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』で有名になった言葉である。“生命”とは、取り込まれ代謝されていく物質、生まれ変わり続ける細胞どうしの相互作用によって現れる“現象”である、という考え方だ。 主人公の田村心は生まれる前の過去に遡り、そこで巻き起こる惨劇を阻止することで、その惨劇により自身に降りかかった不幸な運命を変えようと奮闘する。作品では、過去を改変して自らの人生を曲げようとする一連の試みをテセウスの船にたとえているが、やはりピンとこない。作中、田村心は殺人事件を未然に防ぐため凶器となった薬物を隠したり被害者に避難を呼びかけたりするが、その影響で心の知る未来とは異なる人物が命を落としたり、結果的に大量殺人を防げなかったばかりか予想だにしなかった事態を招くことになる。 この予測不可能性こそがまさに動的平衡そのものって感じなのだ。生命体は、船の部品のように壊れた部分を取り替えれば前と変わらず機能する、ということにはならない。ある重要なホルモンの分泌に作用する細胞を、遺伝子操作によってあらかじめ削除してしまったとしても、ほかの細胞がそのポジションを埋めることがある。これは心が殺人事件の阻止に何度も失敗したことに似ている。思わぬ不運や予想しない死者が出てしまったのも、脚のツボを押すと胃腸の働きが改善するなどの神経細胞の複雑さに似ている。 船は組み立てて積み上げれば完成するが、生命は時間という大きな流れの中で分子同士が複雑に相互作用しあうことで初めて現象する。『テセウスの船』での田村心の試みは人生あるいは歴史という動的平衡に翻弄されながらも抗う物語だったのかもしれない。

いせかいめいきゅうではーれむを
異世界迷宮でハーレムを1巻
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