肝練りはいつ見ても凄いねにコメントする
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薩南示現流

トンボに構えたくなる

薩南示現流 とみ新蔵 津本陽
名無し

偶然「肝練り」なる奇天烈な文化について知り、それがこの薩南示現流に登場するということで読んでみました。とみ新蔵先生の作品を読むのは初めてだったので、ワクワクしながら読み始めたのですが、結構意外なところがたくさんありました。 【絵柄】 バリバリ硬派に武士を描いていて格好いいのですが、ペンのタッチやコミカルなデフォルメが西洋っぽいなと感じましたなんというか…昔の海外の風刺画っぽいというか、ルパンっぽいというか。 【意外とノリが軽い】 絵とストーリーがバリバリ硬派なのに、コマのスキマで頻繁に先生が自分の作画にツッコミ入れまくりなのに驚きました。(たしかに昔の漫画は作者の独り言とか漫画家仲間への手紙とか多いですけど、こんなにセルフツッコミが多いのは初めて読みました) あと「✧」「♫」「♡」などの漫符が使われていて、野性味溢れる力強い絵とのギャップがすごい。 井上雄彦がバガボンドで極力記号を使わないように描いていると言ってて、それまでその必要性が理解できなかったのですが納得しました。 【作品への感想】 裸足で歩き回って足裏の皮を厚くし、その辺の犬の首ねじって食うのめちゃめちゃで好き。 善吉和尚22歳なの普通にびっくりだし、過去が壮絶すぎ。「道理のない憎しみ」って自分も持ってるんじゃないかなとハッとしました。 重位の修行シーンの描写が長くて濃密なだけに、そのあと長谷場たち弟子が割と簡単に示現流の技を習得しているっぽいのがちょっと気になってしまいました。もっと苦労してほしい。 日本史に明るくないうえ、前情報抜きで読んだので最後に巻末に「(財)示現流東郷財団・ホームページ」とあり、示現流も東郷重位も実在すると知り驚きました。

COBRA THE SPACE PIRATE

夢と呼ぶにはあまりに厳しく余りに哀しい影に向かってのオデッセイ

COBRA THE SPACE PIRATE
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

著者のライフワークなので一言で括れない幅がある作品で、私は 1.手塚治虫的なタッチが残り奇想展開なアイディアの楽しい「少年ジャンプ初期」(「コブラ復活」~「ラグボール」) 2.線がややソリッドになりシニカルな描写の増えた「少年ジャンプ中期」(「二人の軍曹」~「黄金の扉」) 3.ヒロイックな描写の光る「少年ジャンプ後期」(「神の瞳」~「リターンコブラ」) 4.「聖なる騎士伝説」 5.CGフルカラー期 で分けている。どの期間も見るべき所のある漫画であるが、4.の「聖なる騎士伝説」について書きたい。  「聖なる騎士伝説」は青年誌に掲載された長編で他の話より暗く、いつもよりシリアスでアダルトな展開や描写が多い異色のエピソード(何てったって、レディーさえ出てこない) だ。ここでは新世界の興奮は悪鬼に蹂躙され、コブラのいつもの剽軽な態度やヒロイックな勇気は鳴りを潜め、笑みは嘗て見られなかった暗い影を忍ばせている。絵の線もどの辺よりも細く、陰影もまた濃く、混沌とした悪意蔓延る世界をこれでもかと描き出す。筋も宝や冒険ではなく悪鬼の暗殺と言う剣呑な代物で、終盤に明かされる種も周到に張られた伏線もあり陰惨な世界観を補強する。  今までのスペースオペラと比べると余りにもノワールであり、退廃的でもあるが、それだけに強烈であり、私はこのエピソードが一番好きだ。けだし、このノワールが単なる露悪に終わらず、コブラが常に世を儚むようなニヒルな皮肉を呟きながら銃をぶっ放しながらもどこか善や正義を諦めきれていないからではないかと思う。有名なコマでもある様にコブラは終盤、実際には何の利益を齎さなかった教会を批判し「神か……最初に罪を考え出したつまらん男さ」と呟いてみせたが、これはやはり神や正義についてどこか夢を持っている証拠に他ならないと思う。さもなくばこんなセリフは決して言わないだろう。  コブラの海賊としてのアウトローな性格や享楽主義は上記の理想主義的な思想やストイックさに支えられている。寺沢武一は彼の初期作品を「思弁的」と批評していた記憶があるが、そういった性格が彼の作品から消えた事は一度も無かったことは確かだろう、そしてそれこそがこの漫画をいつまでも輝かせているのだろう。海賊と言う自由とギルドに対抗する高潔な戦士の顔を持つあの男のとこしえの旅に祝福を。

さつなんじげんりゅう
薩南示現流 1巻
薩南示現流 2巻
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