ケントの方舟

環境問題への意識が突き抜けている

ケントの方舟 毛利甚八 魚戸おさむ
ひさぴよ
ひさぴよ

オゾンホール問題やダイオキシン問題など、日本において環境問題への意識が最高潮に高まっていた90年代。その最中に連載されていたのがこの「ケントの方舟」です。 私の好きな「家栽の人」毛利甚八&魚戸おさむコンビなので、”良い漫画”として紹介をしたいのけど…いやいやこの漫画、なかなかの過激な思想を持つ漫画でした。 ゴリラの研究をしているサル学者・森野賢人が区議会議員選挙へ打って出て、型破りなやり方で環境保護政策を進めていくというのが基本ストーリーです。 森野の穏やかな表情とは裏腹に、突拍子もない構想を抱いている事が次第に判ってきます。 例えば、ゴリラのために東京都内に森を作り、森の壁で分断しようとする案。 さらにはゴリラと人間をかけあわせて森と人間の融合を図る案など、どう考えてもヤバい思想です。 環境問題に熱心な人ですら同意困難なレベル。 そういった考えを公に発信しているわけではないものの、ふとした時に本音が漏れ出てくるというか。もちろん漫画の中では肯定されています。 おそらく森野の中で優先順位は、自然>ゴリラ>人間なんです。 環境問題が加熱していた時代特有の狂気を感じました。 おもわず「マッド・エコロジスト」という言葉が頭に浮かんだので、ここに書き残しておくことにします。

ナギサマリンライフ

サプライズ満点のディストピア海洋ファンタジー #1巻応援

ナギサマリンライフ あまおう
sogor25
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海面上昇で陸地が海に沈み、人類が人工地盤の上で生活する世界。旧時代の遺物が遺る海底遺跡へとダイブして探索を行う"アトラダイバー"の物語。新人のナギサは実技の成績はいいけどその他はまるでポンコツ、実際の遺跡へのダイブでもドジばかり。でも優秀な先輩のハルカとバディを組むことになり、持ち前の明るさと切り替えの早さで"アトラダイバー"として成長しながら未知の世界へと足を踏み入れていく―。 という物語なんだけど、物語が進むにつれて徐々に作品の様相が変わっていく。元々海底遺跡へのダイブは危険が伴うという描写が描かれているけど、ナギサが学校で学んできたものとは明らかに違う"危険"が物語の端々で映るようになり、そして1巻の最後でそれは正体不明のままナギサの目にもはっきりと見える形で顕現する。 公式のあらすじにも「ナギサの未知との出会いが始まる」とあるが、果たしてナギサの出会う"未知"とは何なのか。1話からは想像できないような物語が今後も広がっていきそう。 「がっこうぐらし!」を例に挙げると極端かもしれないけど、この作品も実際に手にとってもらった人に最高の形でストーリーのサプライズ感を楽しんでほしい意図があって表紙や帯・あらすじをデザインしてると思う。だけど、逆にそのために本来のターゲットに届いてないとすれば勿体なさすぎる作品。ぜい、騙されたと思って1巻を読んでみてほしい。 1巻まで読了

おひ釣りさま

「趣味は独りで」というライフスタイル

おひ釣りさま とうじたつや
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

『おひ釣りさま』の主人公、OLの上条星羅が一つだけ譲らないこと、それは「釣りは独りですること」である。 彼女は決してコミュ障ではない。表情に乏しく無口だが、同僚とビュッフェを共にし、古い友人もいて、仕事もできる常識的な社会人。 しかし、誰かが釣行に誘うと、それだけはきっぱりと断るのである。 「釣りは1人で行きたいので」と。 どんな釣り場にも独りで現れては、男性ばかりでも気にすることなく釣りをする姿は最初は奇異だが、夢中で釣りに打ち込むうち、すぐにその場に馴染む。そして名人じみた釣果を挙げ、おじさん達を感服させる。 彼女の周囲には、釣り好きや初心者が集まる。彼女は決して邪険にはせず、丁寧に教えたり、釣果を喜び合い共に食したりする。それでも、釣行はあくまでも独り。 初心者に教えるのが大変だとか、同行者に合わせるのが煩わしいとか、そういう後ろ向きな理由は語られない。とにかく魚とフィールドとの決闘に真剣で、相手を制した時の恍惚を独りで味わう、その贅沢。 集中したい時間はとことん自由にのめり込み、それ以外とバランスを取る彼女のスタイル、趣味人の生き方として、最高かもしれない。 沖磯から遊園地まで毎回バラエティ溢れる釣行と、皆を幸せにしつつ自分が一番幸せな趣味人ライフスタイルを、星羅に学ばせてもらおう!