出禁探偵 ~クララが来たりて謎を解く???~

多分「夢」「日常」を問う?ポンコツ迷探偵コメディ

出禁探偵 ~クララが来たりて謎を解く???~ 屋乃啓人
名無し

名探偵はカッコいい。 次々と出会う難事件を颯爽とスマートに解決する。 しかし現実の日常では、滅多に難事件はおこらない。 事件がなければ名探偵の出番はない。 それだからか、探偵物の名作小説やドラマ漫画は数多くあるが、 「そんなに殺人事件に連続して遭遇するわけないだろ」とか 「むりやり密室や完全犯罪にしているだろ」 とファンからツッコまれたりもする作品も多い。 現実の探偵さんは浮気調査などの地味な仕事が殆どだとも聞くし、 名探偵が存在し活躍する世界は「夢」であり「非日常」 なのかもしれない。 だからこそ中二病的に名探偵に憧れる人はいる。(と思う) この漫画は、そんな自称・名探偵で実質は迷探偵の 中二病的な夢が一杯で、勇み足やから騒ぎが得意で、 しかも結構開き直るし責任転嫁もする、という 見た目は綺麗だが中身はポンコツな女子高生・クララが、 祖父の残した喫茶店をただ平和に守りたいと思っている、 平凡な日常を好む男子高校生・コウタが店長の喫茶店に 「迷惑だから出禁!」と言われつつも、やってくる、 というコメディ。 全二巻のうちのまだ一巻しか読んでいないが、 コメディ漫画として凄く面白い。 自称・名探偵の女子高生の ポンコツゆえの強引で的確な外しっぷりと、 それにつきあわされて喫茶店としては実害も被っている 高校生店長の悲哀が凄い。 ただ、読んでいて「あれ、これ伏線だろ?」 という点がけっこうアチコチに描かれているように思った。 恐らくだが「夢」とは何か、「日常」とは何か、という伏線。 多分、店長・コウタにも店員・副島さんにも常連・和嶋さんにも、 第一巻では明らかにされていない部分がある感じがする。 そしてそれは自称・名探偵の出禁探偵の女子高生にも。 と、読みながら推理しました(笑)。 二巻も読みたいのだけれども、近所の本屋には見当たらない。 何故だ(いや、出版社と本屋の判断だろうけれども) 面白いんだから出版社さんには重版してほしいのだが。

龍宮殿

「龍宮殿」読んでみた

龍宮殿 松永豊和
かしこ
かしこ

松永豊和の漫画を初めて読みました。恥ずかしながら最近まで存在を知らなかったのですが、マンバの書き込みでバクネヤングが面白いというのを見かけて気になりました。先に手に入ったのが龍宮殿だったのでこちらから読んでみた次第です。失礼になっちゃうけど…知識も期待もゼロの状態で読んだので、読み進めていくごとに「お、思っていたより面白いぞ…!」となりました。傑作というにはあと少し何か物足りないような気がしますが、また読みたい作品であるのは間違いないです。 タイトルと表紙で「あ〜男の子が竜宮城に行くんだろうな」というのは分かっていましたが、深海の遊郭「龍宮殿」ではメスは人間の姿で産まれるけど、オスは頭が魚の形をしている魚人の姿で産まれて、ある事情でオスは産まれたらすぐに殺されることになっている…という事が判明してから一気に面白くなりました。ちなみに主人公兄弟がうさぎの着ぐるみを着てますがストーリーとあまり関係なかったです。 作者さんがホームページで公開してくださってるので、次は「パペラキュウ」を読んでみようかな。自伝小説?「邪宗まんが道」も気になったので早速kindleもダウンロードしました。

京都寺町三条のホームズ(コミック版)

説明しすぎな骨董品屋

京都寺町三条のホームズ(コミック版) 秋月壱葉 望月麻衣
名無し

骨董品や美術品はを言葉をしゃべらない。 けれど名品は見るものが見れば多くのことが伝わる。 しかし世の中は目利きの人ばかりではないので、 ときに鑑定人による説明が必要となる。 説明をしてもらうのならばわかりやすくしてもらうのに 越したことはない。本来ならば。 「京都寺町三条のホームズ」はまだ第一巻しか読んでいない。 この先に二巻以降を読みたいかと言われれば複雑ではある。 第一巻のなかでとても面白いと思った話もあるのだが、 話の中には、こういうのは好きじゃないな、 と思える部分もあったので。 もしも第二巻以降が、 犯人はだれだ、みたいな話じゃなくて 色々な骨董品の様々な意味や価値を、 読んだ人間がそれぞれに自由に想像して楽しめる、 みたいなそんな話が多いのなら読んでみたいと思った。 主人公が語りすぎるように感じた。 物言わぬ骨董品や美術品にかわって名鑑定人の主人公が語る。 語り方には品があるし内容に説得力もある。 ちょっとした洒落っ気もある。 しかし骨董品には語らない良さもあると思うのだ。 骨董品自体がしゃべれないからこそ感じられることや、 見てわからない人には説明してもしょうがないことや、 むしろ説明しないほうが良いことすらあると思う。 主人公・ホームズには殆どそういう考えはないようで、 その品の故事来歴から価値価格、作者の意図まで とてもわかりやすく説明する。 鑑定人や探偵としては名人だし有能なのだろう。 しかし商売人とては儲からんことしかしていないし、 趣味人としては野暮なレベルに感じた。 またページに限りのあるミステリ漫画だからしょうがないが、 絵に雰囲気や情緒を出す役目をふりすぎていて、 セリフや文章に、物語の説明の役目を振りすぎな気もした。 さらに主人公以外も登場人物が殆ど 素直すぎるレベルで心中を詳しくわかりやすく吐露する。 わかりやすいし話はやいけれども、 そのへんはもうすこし抑えて、秘するが華というか 各人の心の中に収めて終了、とかのほうが 良かったんじゃないかと思ったりした。 そもそも犯人捜し、みたいな話になると、 限られたページ数で登場人物も少ないのに 伏線も張りつつ意外な結果だと演出しなければならず、 言葉でのはしょったような説明が多くなり、それでいて こいつしか犯人はいないよな、と早々に分かりやすい。 最後になって、それまで登場していない人物を犯人として 登場させるわけにもいかないのだからしょうがないが。 「漫画文化論」みたいなことを主人公が語る話もあって、 それはすごく興味深かった。 けれども同時に 「いやいやいくら何でも漫画の業界人でもないのに  どこでそんな知識を習得して理解して  説明できるようになったんだよ」 とも感じてしまった。 あなたホントは骨董品屋じゃなくて漫画業界人じゃないの、と。 二重の意味で面白く感じたけれど(笑)

70年目の告白~毒とペン~

毒親に育てられたミステリーコミックの女王による自伝漫画

70年目の告白~毒とペン~ 高階良子
かしこ
かしこ

高階良子先生の作品を読んだことはないのですが、本屋の新刊コーナーで「ミステリー&サスペンスコミックの女王」「高階良子引退作」「真実の実話的物語」という気になるワード満載の帯を見たら買わずにいられませんでした。 実母の葬式で泣くことが出来ず、むしろホッとしていた主人公。どうして自分がこんな気持ちになったのか過去を振り返るところから物語が始まります。主人公が生まれたのは戦後ですが、まだ母のお腹の中にいた頃、疎開する旅の途中で何度も空襲に遭いながら、母は「ああ苦しい…!こんな子いなければよかったのに…」思っていました。そんな出来事があったからなのでしょうか、5人兄弟の3番目に生まれた主人公だけが母から愛されることなく虐待を受けて育ちます。しかも母には虐待をしてる自覚がないというのが恐ろしいです。 主人公がまだ小さかった頃に命の危険があるような病気になってしまうのですが、母がロクに看病をしようとしないのを父が見兼ねて、子供を欲しがっていた自分の姉夫婦の養子に出そうとしますが、母と姉の関係が悪化した為に一年で元の家に戻されてしまう事がありました。これが主人公に「自分は母に捨てられ、叔母にも捨てられた…」という意識を植え付けていて読んでいてとても辛かったです……。 とにかく最近よく問題にされている「毒親」の事例がてんこ盛りです!しかも学校の先生にもいじめられるし、唯一の救いだった父も亡くなるし、ハード過ぎる人生が続きますが、「辛くても自分には漫画があるから大丈夫だった」という言葉と、これから漫画家として活躍されることを知っているので、安心して読むことが出来ます。高階先生にはこれまでのしんどかった出来事をすべて吐き出して頂きたいです。続きを楽しみにしております。 #1巻応援