ピエタとトランジ

謎解きはシスターフッドの後で #1巻応援

ピエタとトランジ キスガエ 藤野可織
兎来栄寿
兎来栄寿

元々は芥川賞作家の藤野可織さんが、芥川賞受賞第一作の『おはなしして子ちゃん』に収録された短編「ピエタとトランジ」から始まっており、それが長編として単行本化され、更にそこからさまざまな反省を経て練られた原作を基にしてキスガエさんの作画によって描かれたのがこのコミック版『ピエタとトランジ』となっています。 不勉強で恐縮ですが、原作未読で何も知らずにまっさらな状態で読み始めた私はちょっとダークな学園百合かな、絵が綺麗だなぁと安穏としていましたが、ちょっとダークどころではありませんでした。 本作のふたりのヒロインであるピエタとトランジの内、トランジの方は「事件を呼び寄せる体質」を持っているという設定になっています。この設定は、誰もが思う「金田一やコナン君は事件に遭いすぎでは?」「何なら厄病神なのでは?」という素朴な疑問から立脚しているといいます。かわいいんですが、キングボンビーや飛行機に乗っているジョセフ・ジョースターくらい近寄りたくないですね。 更に、世の探偵もののバディが大抵男性同士であることから、そのカウンターとして生まれたとも。確かに、ほぼ男性が出てこないような作品でもないとミステリ系で女性同士のバディものというのはなかなかないですね。 トランジが引き起こす事件はテンポも凄まじくドライヴ感すらありますが、何よりそれよりどれよりもその中でのピエタとのやり取りや関係性の動向が気になります。 大事なことなので何度も言いますが、作画担当のキスガエさんの絵が本当に良いのですよ。表紙にいわゆる「売れ感」を覚えます。中の絵もとてもよく、絶妙な表情や目を引く大ゴマなどディモールトベネです。逆から読むと「絵が好き」だそうで、納得です。 表紙の絵に惹かれる方、軽口を叩き合える気さくな女の子同士の関係性を楽しみたい方、そんな子たちがさまざまな事件に挑む姿を見たい方にお薦めです。

僕の部屋のユウ子さん

この幽霊がかわいい2023 #1巻応援

僕の部屋のユウ子さん 武川展子
兎来栄寿
兎来栄寿

幽霊との恋愛を描いた作品は切ない名作が多いと相場が決まっています。おキヌちゃんから幽奈さんまで、幽霊ヒロインというのも時代時代に現れては人気を博してきている歴史があります。 今年の幽霊ヒロインで1位をぶっちぎりそうなのが、この『僕の部屋のユウ子さん』のユウ子さんです。 幽霊を怖いと思ったことがない青年・カンナが、ユウ子の起こす心霊現象を恐れることなく自然体で同居して行くコメディとなっています。 どうやらJKの幽霊らしいユウ子さんは、段々とカンナへの想いを露わにしていき、同時にカンナもユウ子のことを意識しだしてラブがコメっていきます。 やきもち焼きであるユウ子の嫉妬心が剥き出しになるシーンから、甲斐甲斐しく助けてくれる場面まで、少しずつ進んでいく関係性に拍手喝采です。 作者である武川展子さんのアナログ作画も良い味を出しています。大友克洋さんの系譜を感じさせる80〜90年代の懐かしさもありながら、全体を通して読みやすいです。 そして、とにかくユウ子さんが絶対的にかわいいです。本作の魅力の究極はそこに尽きるでしょう。 かわいい幽霊ヒロインをお探しの方や、少し変わったラブコメを読みたい方にお薦めです。

往生際の意味を知れ!

市松くん、さり気なくイケメン

往生際の意味を知れ! 米代恭
ゆゆゆ
ゆゆゆ

長いまつげ、サラサラとした髪の毛、読み取れない表情、時々吐露される感情。 お人形さんみたいな容姿だけど、本心見せず要領よく人をあしらう元カノひより。 冴えない雰囲気の青年として描かれているものの、要所要所でさらりとイケメン、元カノへの未練たらたらな元カレ市松くん。 一緒に映画を撮っていたふたりが再会し、元カノが元カレに言った言葉。 「市松君に私の出産記録を撮って欲しいの。」 「だから市松君の精子が欲しい。」  そして認知もいらない、と。 なんてめちゃくちゃな。 OKしないと話は進まないんだけど、まさかのOKして、さらにまさかのシリンジ法を漫画で見ると思わなかった。 若いから、すぐすぐ妊娠しちゃうのかねえ。わからん。 あと、出産でもしもの事態が起こるとか、生まれた子が五体満足前提なのがちょっと気になる。 世の中どうなるかわからないもの。 老婆心働いて、余計なことを考えてしまう。 本編は妹や叔母が出てきて、ひよりの本心が描かれ、これから一体どうなるんだろうというところで3巻へ続く。 2巻無料でなんとなく読んでみたものの、これは無料分で満足できないタイプの漫画だ‥。