月が導く異世界道中

ちゃんと面白い異世界もの

月が導く異世界道中 木野コトラ あずみ圭
名無し

またよくある異世界ものでしょー、と思っていたらかなりの良作でした! 主人公の高校生男子が両親の契約で仕方なく異世界に連れていかれたら、とある理由からその世界の女神に嫌われて世界の果てに放置されて過酷な環境から這い上がっていく異世界ファンタジー! https://www.alphapolis.co.jp/manga/official/48000051 アニメ化棚にあってなんとなく手に取って読んでみると少しずつ、 「へぇー、意外に面白いじゃん」 「ほうほう、次どうなるんだ?」 「おいおい、ヤバイじゃん!どうなっちゃうんだ!?早く先を見せてくれ!」 と感想が変化していきました。 特に最新の8巻~9巻の展開は本当に先が読めなくて夢中になって読んでしまったほど! お約束のフィジカルや能力がチートな主人公ではあるのですが、女神によって酷い目にあったことや、現実の家族の身代わりとなって自ら嫌々やってきたことなどもあり、それくらいチートでもいいよなという気持ちにしてくれるのがよかったですね。 強さの理由も裏付けがあってとてもいいです。 コミカルなノリと堅実な話運び、お約束のハーレム(?)と、それでも手を出さない理由もしっかりしてますし、「勇者になる」「魔王を倒す」わけではない珍道中も面白いですね。 さらに言えば、主人公が巻き込まれ体質ながら、ちゃんと自分自分と自己中な動きをせずに周囲を助けたり、そのための共同体運営や隠れ蓑と運営資金のための商人としての活動など複合的に面白くなっていきます。 原作としての話の面白さもありますが、アクションシーンや和風な衣装や設定など視覚的にも面白いのでいい漫画化ですね。 主人子の心の起伏も黒い部分もちゃんと出ていたり、清廉潔白超人じゃないのが人間らしくていいです。 なんでもあり、俺TUEEEにならず、見た目や言葉の問題についても上手く処理してる印象があります。 ただ序盤の話で、主人公の見た目が悪くて美男美女ばかりの弓道部で浮いてるとか、そういった見た目のいじりがきつく感じたのは、ここ数年の時代の流れでしょうね。 原作が書かれたときは全然OKだったと思うのでしょうがないのかなと。 気になってアニメ1話確認してみると、女神のひどさを強調する意味で言われる「ブサイク」という言葉以外は大部分カットされていて見やすくなっていたのでナイス判断だなと思いました。 それでも、ファンタジー世界に入ってからはこの顔がブサイクというより亜人よりの顔として言われたり、そっちの設定としての言い方になっている感じがあるのでマイルドに感じて、ストーリー的な部分だから全然問題なく感じました。 総合的にはとても面白く、思わず「アルファポリス」のアプリを落として単行本未収録の最新話まで追ってしまいました。

ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 完全版

昔は「ガンガン」っ子でした

ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 完全版 藤原カムイ 小柳順治 川又千秋
六文銭
六文銭

小学生の時分。まわりが、ジャンプやサンデーやマガジンで湧いていたころ、ひねくれ者だった自分は「ガンガン」を読んでいました。 というか、わりとクラスで、地味めの、いわゆるオタクっぽい輩は大体ガンガンだった。(あくまで個人的な感想です) 「魔法陣グルグル」「ハーメルンのバイオリン弾き」そしてこの「ロトの紋章」は当時、ガンガンの3大タイトルでした。 ジャンプで例えるなら「ドラゴンボール」「スラムダンク」「幽遊白書」みたいなもんです。(ちょっと違うか) ジャンプでドラクエをベースにした「ダイの大冒険」がヒットしたので、エニックス(現:スクウェア・エニックス)のお膝元である、ガンガンで連載したのでしょうかね? ガンガンには、既にドラクエの「4コマ漫画」が掲載されているので、「ドラクエ要素」は結構あったのですが、 4コマがギャグならこっちはシリアス路線で、小学生ながら違う味を楽しんでました。 大人になった今、電子書籍でもう一度読み直してしまいました。 懐古厨といわれても、いい。 今読んでもホントに面白かったです。 著者いわく、電子版配信にあたって今風に加筆修正されているそうです。 その意欲スゴっ! なのですが、一方でストーリーの大筋は変わっていないので、 小さい頃読んだことある人でも、特段違和感はないように思います。 さて、本作の魅力ですが、個人的には2つあると思ってます 1つ目は、純然たる少年漫画であること。 2つ目はそれに加えて、人生の苦味とも言える要素があること。 私はこの2点だと思っております。 1点目は、とにかく少年漫画の王道。 ストーリーも有りてい言えば、修行して強くなって、悪い魔王を倒す。 んで、魔王は底なしに悪いやつ。という設定は、少年漫画そのものです。 更に、少年漫画ではド定番の「必殺技」もたくさんでてきて、特に賢者(賢王)の合体魔法は、ゲーム好きでもあった自分には胸アツな技でした。 小学生の頃はよくマネしたり、自分で考えたりしたものです。 敵キャラも、獣王、竜王、冥王など四天王のようにわかりすく強そうな感じで登場し、味方サイドも剣王、拳王、賢王という、これまた戦士、武闘家、賢者というわかりやすく職業が決まっているのが良い。 シンプルでわかりやすいのは、少年漫画としては大事ですね。 そして2点目は、これが割と大人になった今でも無理なく読めたところなのですが、上記のように少年漫画チックにしておきながら、人生の苦味ともいえる要素があって、例えば、重要な人物が結構死ぬということ。 しかもあっけなく。 少年漫画では、よくある 「実は死んでませんでした~(てってれー)」 みたいなことがなく、ガチで死にます。 ドラクエならザオラルがあるよね? 世界樹の葉があるよね? なんて、どこか思っていた節があったので、このガチな死は子供ながらにトラウマだったんですね。 ですが、今読むと、 「まぁそうだよなぁ」 世界救うのに、こっちの犠牲は0じゃすまないだろ、と妙に納得してしまいました。 トラウマから納得。 この加齢とともに変わってしまった感覚もどこか楽しかったです。 特に、タルキンの決死のメガンテから、賢王覚醒は今読んでも涙してしまいました。 もう1つは、主人公のアルスが魔人王ジャガンとの初戦闘で、 ボロ負けして、最後に「ビビる」シーン。これが鮮烈なんです。 少年漫画の主人公ならどんな逆境でも、物怖じせず、引かぬ、媚びぬ、突っ込むの精神(少なくともジャンプなら)だと思うのですが、 本作では上記のとおり、主人公であり勇者でありながら、あまりに人間的(まるでモブキャラのように)に死を恐怖する。 少年漫画の主人公が超人的な強さと精神力をもった次元の違う存在、ある種の絶対的なヒーローとして君臨するのに対して、 本作のアルスは違うんですね。 そこが、大人になった自分はグッときたのです。 そこらへんの子供と何も変わらない一人の少年なのに、勇者の家系に産まれた血の運命と、世界を救う使命だけで気を張って戦ってきたのかと思うと、その姿に腹の底から応援したくなるんです。 (上述の戦いの後、アルスが再起する姿も、また涙ものです。) 勇者一人じゃ何もできない。 だからこそ、仲間の助けが必要だということを理解させてくれます。 勇者とは単純な強さだけではなく、仲間を信じ、助けあい、逆境の中で奮い立たせられる力なんだと身にしみてわかります。 ラストシーンの全人類VS異魔神も、アルスのその姿が際立ちます。 懐かしい人も、初めての人も、ドラクエ好きな人も、ファンタジー漫画の定番としてぜひおすすめしたい作品です。 余談ですが、惜しむらくは、 電子版には、背表紙がないってことですかね。 キャラが行進?していく姿が一枚絵になる、あれが何気に好きだったんですけどね。それが、ちょっと残念でした。