モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います

ちょうどツボをおさえてきて好き

モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います ラルサン こるせ よっしゃあっ!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

この話はゾンビものではないけど、 ゾンビものがなんで好きかって、かつてあった日常が破壊されて同じ人間や場所でさえ全く違う表情を見せてくるあの感じ。 それまで戦いやサバイバルを全くしてこなかったような人も必要を迫られ覚醒したり、狂気に飲み込まれたり、人を蹴落としたり、欲望のままに動いたりと、本性が剥き出しになっていく。 そして、いつ命が奪われるかも分からない中で紡ぐ関係性が刹那的で美しいのだ。 上のは、あくまでゾンビものの好きな点だが、この話は少し似つつまた違う文脈で語られているから面白い。 日常が一晩にして崩壊し地獄と化すのは同じだが理由は全く違って、どうやらファンタジーな世界の生物が現実に出現し、なぜか人間を蹂躙しまくっている。 しかもゲームシステムのごとく、モンスターを倒すと経験値が入り、レベルが上がり、スキルを獲得し、目に見えて分かりやすく戦闘力が上がっていくのだ。 現実を舞台としたサバイバルで読みやすいし、敵がゾンビ一種類とは違っていろんなファンタジー生物がいるし、ワクワクしないわけがない。 自分だったらどうするだろう、なんて考えちゃう。 現実の日常が蹂躙される「ゾンビもの」と、いわゆるファンタジーを舞台とすることが多い「なろう」の流れ、その中でもゲームシステムを組み込むタイプが上手く融合されていて、視覚的にも数値的にも成長度合いが分かりやすい。 いろんな面白さがあるけど、主人公が成長のスピードが速いとシンプルに楽しいものだ。 そして犬がかわいい。 総合的に単純な消費しやすさのレベルが高く、ライトな読み口で適度にちゃんと苦境に立たされるというとてもいい塩梅。 ハンターハンターのようなガツンと濃厚でのめり込めるストーリーを求める人には物足りないかもしれないが、優等生的な良さがあり万人受けしそうだ。 この読みやすさなら原作も読んでみようと思う。

売国機関

「幼女戦記」「テロール教授」のカルロ・ゼンが原作を務める新作

売国機関 品佳直 カルロ・ゼン
mampuku
mampuku

 さすが同志カルロ節が今回も爆裂しています。そして作画もまた、「幼女」などに劣らぬ濃ゆ~い且つ美しい素晴らしいものになっています。同志カルロ・ゼンの作品にはやはり激シブいオッサンは不可欠であります。 https://kuragebunch.com/episode/10834108156630826048  煙草モクモク、人間至上主義、資本主義経済の急速な発展に伴う「人権」の空洞化──近代を近代としてちゃんと描いてる作品は安心して読めます。中世と謳ってるけど全然中世じゃないマンガ多すぎるし…  主人公は幼女とも教授とも違う、クールで美人な将校のおねいさん。紫煙の似合う凍てついた眼差しと裏腹に、オシャレ且つ清潔にまとまったシニヨンがめっちゃいい匂いしそう。売国奴の誹りを受けながら暗躍し、陰で国の平和を守る部隊「売国機関」を率います。  初めのうちは「幼女」や「教授」と比べるといささか冗長なので若干読みにくさを感じるものの、そういう感想が多く寄せられたのか途中から持って回ったセリフ回しが減って読みやすくなります。特殊な言い回しまみれなのに面白すぎて読むのが止まらなくなる「幼女戦記」や「ブラックラグーン」ははっきり言って筆力が異常なのだな、と気づかされましたw  読みにくいながら端々に彼女らの宗教観や社会的背景などが読み取れるので、考察しながらじっくり読むのが理想。という点で、「くらげバンチ」連載とはいえスマホで流し読みするより書籍化を待ちたい作品ではありますね。

オメガ・メガエラ

男女混合オメガバース!名門一族後継争い

オメガ・メガエラ 丸木戸マキ
たか
たか

 馬宮の『きれいなディオ様感』がいい。やはり顔の良い貧しい生まれの男が成り上がる物語は最高ですね…!丸木戸マキ先生のレトロな絵柄と、昭和の旧華族やら上流階級っぽい世界観がマッチしてて雰囲気が素晴らしい!  子どもを生むことができない「メガエラ」として蔑まれている主人公・犀門が、愛する夫の第一婦人の座に戻るために他人を利用していくさまに痺れました。 やはり愛憎と権力欲のドロドロは、ハズレのない面白さ。 馬宮とともに、日本有数の名家を欺く…それは日本の社会システムを覆すことそのもので震える…!  世界観が古めかしいのにときどき言葉遣いが現代すぎるところがすこし気になりましたが、ストーリーがおもしろいのでオッケーです!  いつもBLを読みつつ「オメガバースに女性のαとかΩとか出てくれば面白いのに、なんで出てこないんだ?」と思っていましたが、よく考えれば女性にたくさん焦点が当たってしまうとBLじゃなくなってしまう!!…そりゃそうだ。  丸木戸先生いわく、この作品はBLではなく『BLみあるドラマティックな少女漫画』とのことです。  萩尾望都、古屋兎丸作品が好きな人はハマると思うのでぜひ読んでください! 【追記】  マンバのクチコミで知った杉山美和子先生の『Bite Maker ~王様のΩ~』も女性が登場するとのことです(気になりつつまだ読めてません) https://manba.co.jp/topics/16353

CLOTH ROAD

「キルラキル」が好きな方におすすめです

CLOTH ROAD 倉田英之 okama
兎来栄寿
兎来栄寿

最初に出会った時は、その圧倒的なデザインセンス・線の美しさに惚れ込みました。 作画を担当しているOKAMAさんは、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で使徒やセントラルドグマなどのデザインもされている方。 その緻密な筆致により描かれる服飾や背景美術が、唯一無二の世界観を生み出しています。 独特のアーティスティックなセンスが一コマ一コマに行き届いて、画集のような楽しみ方もできる漫画です。個人的には、背景を眺めているだけでも十分に楽しい作品。 きっとこの世界が好きだけれど未読という人は、まだ世の中に一杯いる筈! 是非ともそういった人に届いて欲しいと願います。 又、キャラクターもとても魅力的。 元々女の子の可愛さに定評のある方で、事実可愛いのです。 でも、それだけではありません。格好良いおっさんだって沢山出て来ます。 感情が迸ってくるようなキャラの表情も良いですし、躍動感溢れる構図は画面の外まで突き抜けて来るかのよう。 そして、ビジュアル面のみならず物語自体も実に面白いです! 脚本を担当するのは、今季では『東京レイヴンズ』『サムライフラメンコ』に携わっていた倉田英之さん。 『R.O.D』で紙を用いて戦う少女を描いていましたが、今作では服で戦う少女を巧みに熱く描きます。 ここで、ちょっとばかりその独特な作品世界を説明しましょう。 ナノテクノロジーが極限まで進化し、産業革命ならぬ「繊」業革命が起きた時代。 ケーブルは繊維に、基板は布になり、コンピューターは服と一体化。 世間では服を作る「デザイナー」と、服を着こなす「モデル」が脚光を浴びる中、生まれてすぐ捨てられた双子、デザイナーの少年ファーガスとモデルの少女ジェニファーを中心に物語は進みます。 この世界のモデルは、デザイナーの作った服の驚くような機能を駆使してバトルを行う存在でもあります。モデル同士のバトルは人気の競技であり娯楽。 生き別れの双子が再会し、ファーガスが作った服をジェニファーが纏って戦っていくという大筋です。 そして、物語が進むにつれ話はどんどんスケールアップ。 それこそキルラキルばりに、星をも巻き込む物語になって行きます。 ユニークな要素が沢山詰まった作品ですが、大筋を辿れば実は正統派ビルドゥングスロマン。 少年と少女の成長、人と人との暖かい絆、熱い絆を感じられるようになっています。 この部分がしっかり創られているからこそ、私としても多くの人に呼んで貰いたいと思うのです。 『クロスロオド』が素晴らしいのは、全11巻で11巻が一番面白いということ。 序盤はもしかしたら乗り切れないものを感じるかもしれません。 が、尻上がりに面白くなっていきますので安心して下さい。 とりあえず、まずは4巻まで読んでみるのが良いでしょう。 最初は三流・二流モデル達がメインですが、トップモデルやトップデザイナー達のキャラ立ちぶりは凄まじいです。 中でもメイ様と呼ばれるモデルは非常にカリスマ性が高く、格好良いです。 『クロスロオド』自体名言が頻出する作品ですが、特にメイ様は名言製造機と呼んでも良いほど。 少々引用すると…… > どこで咲こうと花の美しさは変わらないよ   > シャクナゲの花言葉は『威厳』『荘厳』君たちにはないものだ  > そしてもう一つは『危険』 君たちが今味わっているものだ   > 隣で世界が滅亡しても気づかない鬼の集中モードにいつでも入れるように   > 風まかせかい? ……違うね  > 勝利の風は自分で吹かせるものだっ! ああ、メイ様格好良いィッ! ちなみに、一番好きな名言はここでは伏せておくので、是非実際に読んで昂って下さい。 一部キャラの激しい狂気や、ページを捲った次の瞬間に起きる衝撃という意味では『HUNTER×HUNTER』を思い出す位の内容です。 ジェットコースター的な展開が好きな方にもとてもお薦めです。 『クロスロオド』の華やかな世界と凄絶なバトルシーンも、アニメで観てみたいなぁ…… この精緻さを動画でやるのは非常に大変だと思いますが、その分創り上げてしまえばアニメ史に刻まれる作品になると思うので、こっそり期待しています。