独裁君

ギャグとシリアス、両面から描き出す"独裁”

独裁君 業田良家
兎来栄寿
兎来栄寿
この本に収録された短編「慈悲と修羅」。 私は、この18ページの物語を、世界に住む全ての人に読んで貰いたいと切に切に願っています。この短編が描くのは、チベット問題。あまり大々的にこの問題が報じられることのない現代日本で平和を享受している私達には、およそ実感の湧かない、しかし今もなお現実に起き続けている陰惨極まる悲劇です。ここで描かれる残虐な拷問や、敬虔な仏教徒に対する精神的陵辱の限りは、決して知らないままでいて良いものではありません。読むと、激しい嘆きや憤りが生じることでしょう。実際には、ここに描かれている以上のことも行われているといいます。文章だけでは千の言葉を尽くしても伝わり難い現実が、マンガという表現によって描かれることでその悲惨さをダイレクトに伝えてきます。業田良家先生の絵はかなりデフォルメが効いたタッチですが、しかしこの絵柄でこの内容が描かれるからこそ、その主張が際立ちます。マンガの持つ力という物をも、改めて考えさせられる内容です。私は、中学生や高校生に教科書と一緒にこの短編マンガを配布しても良いと考えます。 この本のメインは、ヒトラーやスターリン、金正日といった世界の独裁者たちへの激しい風刺の効いた4コママンガであり、それも勿論面白いのですが、「慈悲と修羅」及び、北朝鮮を描いた「シャルルの女」「シャルルの男」は非常にシリアスで、人として、この世界に生きる人間として、一読しておくべき作品です。
ぶっカフェ!

どんな失敗も受け止めてくれるやさしい世界「ぶっカフェ!」

ぶっカフェ! 小林ロク
たか
たか
表紙を見て「なんだ、イケメンたちにちやほやされる逆ハーものか」と思った人、ちょっと待ってください!! 微塵もハーレムじゃないです!! 3人ともお坊さんなんで! 壊滅的ドジのルリは、数々のバイトをクビになったすえ寺カフェ「喫茶去(きっさこ)」にたどり着きますが、またそこでもドジの連続。 想像を超えるドジに驚くお坊さんたち。 でも彼らはルリを見捨てません、お坊さんなんで! ドジなルリを見ていると多少苛立つかもしれませんが、むしろ逆。 こんな底抜けにおドジな子ですら包容してくれる優しい世界を知ることで、自分の心も癒やされていくんです。 またルリの恋についてですが、ルリはアルバイトを通じて仏教の世界への理解を深めていき、いつも優しく教えてくれるコウさんのことがだんだん気になりだします。なおコウさんはびっくりするほど女性に奥手でラブの進展は驚くほど遅い、そこがイイ…! 登場人物はみんなステキな人ばかりなので、嫌な気持ちになったり落ち込んだりする必要全くなし! ルリの成長&ピュアな2人のラブを見守っていると、いつのまにか仏様への理解も深まり心はまさにラブ&ピース。 優しさに包まれたい時におすすめです。 https://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/buddhacafe/