大江戸恐龍伝

その意気や良し

大江戸恐龍伝 夢枕獏 やまあき道屯
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し

夢枕獏の小説は、漫画化してもあまり売れない…と、昔、知り合いの漫画関係者から聞いたことがある。 いやいやいやいや、岡野玲子との『陰陽師』があるし、谷口ジローとの『神々の山嶺』は名作だし、板垣恵介との『餓狼伝』だって売れたでしょ!…と反論したのだが、先方は「そうなんだけどねえ…」と言葉を濁した。 (ちなみに、この会話は「それに比べると菊地秀行の漫画化は数字的にかなり手堅い」と続いた。その比較について考えるのはとても興味深いのだが、このクチコミと主旨がズレまくるので触れない) 実は彼とは、かつてボクシングについても同じようなやり取りをしたことがある。 ボクシング漫画って売れないんだよねえ…と言われ、いやいやいやいや、『あしたのジョー』や『がんばれ元気』や『はじめの一歩』とか、ド名作があるじゃない!…と反論したのだ。だが彼は「いや、それはそうなんだけどね。でも、漫画家は描きたがるんだけど、かなり実力がある人でも、あまり上手くいかないんだよ」と答えた。 「夢枕獏」や「ボクシング」は、多くの漫画家がそれに魅了され、漫画にしたいと願い、そして実際に挑戦するのだが、作品的にもセールス的にもなかなか送り手が期待するような結果にならない、と言うのだ。 そう考えると、確かに、夢枕の小説が持つ破天荒な面白さを、漫画というフィールドに結実し得た作品というのは、あまり思い浮かばない。 上記三作はそれぞれの漫画家の類い稀な個性によって「面白く」なったのだが、あくまで「例外」ということなのか。 そういう意味では、スティーブン・キングの映画化と近いかもしれない。 (ちなみに、ボクシングについても、「村上もとか『ヘヴィ』や細野不二彦『太郎』といった意欲作が彼らの豊かなキャリアの中でどんな位置か」とか、「明らかにボクシング漫画を指向していたにも関わらず森田まさのり『ろくでなしBLUES』はなぜそのジャンルとして失敗したのか」とか、「車田正美『リングにかけろ』が正統的ボクシング漫画であることを止めてから売れたのはなぜか」とかを考えるのはとても興味深いのだが、これもやはりこのクチコミと主旨がズレまくるので触れない) 前置きが長くなりすぎた。 とにかく、夢枕獏の漫画化は「難しい」のだ。 しかし多くの漫画家や編集者は、この魅力的で危険な「賭け」に、今も挑み続ける。 やまあき道屯『大江戸恐龍伝』は端倪すべからざる作品である。 原作の、江戸期のスター・キャラをズラリ並べて荒唐無稽・縦横無尽に突っ走る面白さに、漫画家は必死に喰らいついている。 構成は少しダイジェスト感があり、いかんせん詰め込みすぎではあるのだが、熱気と主張ある絵柄で美事なコミカライズとなっていると思う。 近年の収穫と呼ぶに相応しい力作だと信じる。

そばもん ニッポン蕎麦行脚

読んでスッキリし味わってスッキリしたくなる蕎麦漫画

そばもん ニッポン蕎麦行脚 山本おさむ
名無し

蕎麦は和食の中での一料理として立場を確立はしている。 しかし和食について語り話題にする場では そこそこ以上の評価はあまりされていない気もする。 和食は美味しくてヘルシーで見た目も美しい、とか、 煮物や焼き物は素材の味を引き出している、とか、 天ぷら・寿司・鰻がいかに美味しいか、とか そういうことについて語ったものは多いが、 意外に蕎麦そのものについては熱く深くは 語られていない印象もある。 立ち食い店もあれば老舗名店もあるし、 家庭で普通に気軽に茹でたりもするし、 職人しか作れない手打ち蕎麦もあるし、 広くて深くて面白くて美味しい存在だと思うのだが、 一部の「通」と言われる人以外はあまり興味をひかないみたい。 それは多分、見た目に地味だとか、 脂肪分とか糖分とかの判りやすく刺激的な美味さよりも、 風味や旨味といった感覚的な美味しさを味わう存在 だからかもしれない。 インパクトに欠けるから、ともいえるかも。 しかし「そばもん」を読めば、蕎麦をもっと知りたくなる。 食いたくなる。味わいたくなる。 そして知って食ってスッキリとなれる。 蕎麦なんて嫌いだ美味しくないし、という人や、 蕎麦なんて立ち食いでサッと安く喰えりゃいい、という人や、 逆に、いや蕎麦は美味しいよ最高だよ、という考えの人や、 それぞれの人達に 「え、そういう食べ方って美味しそうだね」 「そうか今度はそうやって味わってみよう」 と思わせる面白い話が満載されている。 家で茹でて食べる蕎麦をより美味く味わう方法。 多数ある蕎麦屋の中から自分の好みの店を探し出す方法。 手打ちにも機械打ちにも良さ悪さがあり夫々が存在する意義。 蕎麦がいかに日本各地に根付き発展し様々な形態に至ったか。 読んだら 「今日は蕎麦を食おうかな」 となり、食ったら 「明日は、今日と違う蕎麦も試してみようかな」 と、なってしまう漫画(笑)。

まじっく快斗

あなたの怪盗キッドはどこから? (わたしはコナンから)

まじっく快斗 青山剛昌
野愛
野愛

怪盗キッド=コナンの映画に出てくるかっこいいやつ、程度の認識しか持ち合わせていなかったので読んでみてびっくり。 クールな方かと思っていたら、お調子者でちょっとエッチな男子高校生だったとは…!! 1話の冒頭も冒頭、登校して青子に奇術を披露して数式解いて…のシーンがめちゃめちゃ可愛くてポップで早速心を盗まれました。 絵柄も目がまんまるで輪郭が柔らかくて可愛いなあと思っていたら、コナンより以前の作品なんですね。知らなかった。 なので(なのでと言い切っていいかわからないけど)だんだん絵柄はシャープにお話はシリアスに変わっていきます。連載は途中で中断されているのでだいぶ間が空いていると知り、これまた納得。 好みは人それぞれだと思いますが、1巻2巻のポップでキュートな世界観がめちゃめちゃ好きです。黒羽快斗の可愛さと怪盗キッドのかっこよさと丸みのある絵柄と軽やかなストーリーがぴったりハマって絶妙に気持ちよいです!適切な表現かわからないけど、可愛い。 名探偵コナン→まじっく快斗の人と、まじっく快斗→名探偵コナンの人では見方が変わる作品かもしれないな、と思いました!