幻冬舎コミックスマンガの感想・レビュー236件<<56789>>人間らしくておいしすぎる休日の過ごし方おいしすぎて深刻なエラーが発生しました。 高橋すぎな野愛真面目でお堅いOLの不破さんが美味しいものを食べて飲んで笑ったり泣いたりするお話。 作品中に登場する料理やお酒ももちろんですが、不破さんの人間性が魅力的なんです。 きっちりしていて機械みたいな人に見えて、季節の移り変わりや旬の食べものを大事にする一面もあります。 胃を休めようと思ったのにカレー作っちゃったり、釣り堀にガチジャージ&長靴で行ったり…人間らしくて好き。 行きつけのお店のマスター蓮見さんとの恋模様もピュアでもどかしくて可愛らしいんです。 グルメ漫画を読むと外で飲みたい気分が高まってしまうんですが ベランダで手作りサンドイッチ食べたり、浴衣と1人鍋でおうち温泉宿気分を味わったり、お家でできる楽しみ方もたくさん描かれているので今のご時世にもぴったりです。耽美が炸裂している山田章博初期作品集人魚變生 山田章博名無し帯にも書いてありましたがデビュー作である『ぱだんぱだん』が読めるのがセールスポイントなのかな。9pしかないのに危険な女とそれに惹かれる男、という世界観が完成していてすごいです。 個人的に一番好きだったのは表題作の「人魚變生」(「へんしょう」と読む)。船医の男が船上で人魚を捕まえた話をバーで怪しげな人物(女とも男ともわからないところが素敵!)に語るところから始まるのですが、白黒でバチッと、それでいて艶かしくやわらかな絵作りに一気に引き込まれてしまいました。人魚の美しさ、読んでくれとしか言えない。 繊細な画面がずっと味わえる素晴らしい読書体験でした。片方が死んでても良ければ、おすすめどう考えても死んでいる 雁須磨子nyae※ネタバレを含むクチコミです。家族って、血のつながりって・・・。私・空・あなた・私 いくえみ綾starstarstarstarstar干し芋母子家庭がありました。 母親の胡桃さん、長女の林檎、次女の杏。 そしてそこに、父親の愛人の子、れもんが一緒に住むことになりました。 一緒に暮らしていた祖父母が亡くなったり、痴ほう症で施設に入ったので。 不思議な生活の始まりです。 そこに、植木屋を始めたばかりのイズミが加わり、人間関係がごちゃごちゃになってきました。 最終的には、誰か幸せになったのか・・・? 読んでみてください。 BLの可能性は無限大どう考えても死んでいる 雁須磨子さいろくBLは本当に何でも出来るなーと思う。 読了後にそんな感じで感心しつつ、どうなってるんだろうとか色々想像(妄想)も膨らませつつ、幸せになってほしいものだと思う作品でした。 最終的にどうなるんだろう、「意外ともつものですよ」はどのぐらいもつものなんだろう。あとの展開が気になるなぁうーんあなたに捧げる私のごはん 松田洋子名無し何回読んでも共感できないし、言い方悪いですが主人公が鬱陶しい。全体的にご都合主義。未亡人のお供えご飯あなたに捧げる私のごはん 松田洋子野愛新婚旅行の帰りの飛行機で夫を亡くした主人公・菜恵が、愛情たっぷりのお供えを作って食べるお話。 こんなのあらすじ読んだだけで泣きたくなる!悲しすぎ。やるせなさすぎ。 ほのぼの飯漫画を読みたい気分だったのに、逆にもう読むしかない!という気持ちになりました。 翔ちゃんの遺影に語りかけながら、思い出の料理を作る菜恵が健気で切なくていじらしい…。 思い出を話す菜恵の語り口がコミカルだからこそ、切なさがひき立つんですよね。明るく生きててえらいよ菜恵…。キャベ巻きご飯美味しそうだよ菜恵…。 あとがきによると未亡人×飯の漫画は新しいんじゃない?的な発想で生まれた作品のようですが、その新しい発想とやらで菜恵の夫は死んだんだよかわいそうだろ…思うくらいに菜恵は可愛いです。 男娼ロボと姉 in 懐かし商店街時計じかけの姉 いけだたかしあうしぃ@カワイイマンガ昔ながらの商店街には、腕の立つ時計職人の女性と、若く美しい弟が住んでいた。一見平和なその街だが、姉と商店街はとある秘密を守り続ける。それは、弟が男相手に売春する事、そして弟がロボットである事。 --..-.-.--. 枠組みとしては成年漫画に見られる、秘密の売春宿とか、夜這いの風習がある村とか、そんな感じ。「少年を守る」という大義で客をコントロールしながら、商店街において売春はコメディタッチで肯定される。 十年前に死んだ弟のロボットに惑溺する姉は幸せそうな様子。商店街の穏やかな近所付き合いに、皆んな幸せそうだからいっか!と思ってしまいそうになる。 エロマンガの世界観としては完璧。しかし、そんな都合の良い世界の裏が、次第に明かされる。しかもそれを「悪」と描かないのが、この作品の読み応えあるところ。 電気屋の男性は、ロボットを作れる程天才の姉に、尊敬と好意を抱く。そして彼女に真っ当に幸せになって欲しいと願う。男性は童貞と揶揄されるが、そんな彼にしか無い「正しさ」がある。彼は〈売春組織を作る〉商店街の男達と共犯でありつつ別の所にいる。 エロスとタブーが肯定される世界観。しかし、電気屋の恋は私の感覚を、辛うじて「まともな」方に留める。そこで得られるのは、狂った世界への無力感。そして、自分の中の「童貞」への肯定感。愛する二人と〈周囲〉の話ふたりはだいたいこんなかんじ いけだたかしあうしぃ@カワイイマンガ女性カップルの同棲話が平熱で、淡々と描かれながらも愛らしい本作ですが、その良さを端的に言い表すのは難しいと感じます。 なので私が言う事も作品の一部分だと思うのですが、特徴として「周囲を丁寧に描く」事があります。 2巻にして既に二人の親、古馴染み、仕事仲間や先輩、ご近所がしっかり登場して関わります。基本二人は優しく関係を深めてゆくので、安心して読んでいられるのですが、それでも周囲の関与は少しの緊張感をもたらします。 二人が盤石であれば、関与する人の中には悲しい思いをする人も現れます。そういう人の秘めた心や行動を見る時、私は主人公二人の視点を離れ、その人に感情移入する。そして気付く……自分(=主人公)だけ良ければいいっていう話じゃないよな、と。 誰かの幸せの影には、他の誰かの様々な感情があるんだよ、という視点は、実は他の百合作品でも得られる視点ではあります。しかしこの作品は、多様なサイドストーリーを複数同時展開する事で、カップルを起点とした世界の広がりと複雑さとままならなさを同時に表現している。 そしてそこから得られる感情は「みんなが幸せになれればいいよな」という、優しい物でした。まだ映像化してないの?ってくらい面白かった江戸モアゼル キリエ 江戸キリエ名無し第一話の冒頭からいきなり主要キャラ3人が江戸から現代へタイムスリップします。一気に3人も?って感じで驚きましたが、これがキャラによって現代への順応スピードが違って面白いんです。 まずは主人公の花魁・仙夏さん。仙夏さんはクセの強い新人としてコンビニでバイトしたり順応度はまずまず。でも重要なシーンで決めてくれるのはやっぱり仙夏さんの手練手管な花魁の人を魅了するテクニックなので流石です。 次は女郎部屋の小間使いだった平吉ですね。平吉はずっと江戸が抜けず職質されまくりです。だんだん現代に慣れて乗り鉄やらメイドカフェやらオタクとしての才能が開花するのが面白かったです。 最後が新人遊女の寿乃です。現代への順応スピードが異常に速いです。公式のキャラ紹介でも「アグレシッブ」って書かれてました。都会の絵の具に染まっていく様子が痛快です。 全1巻として完結した後に続編が決定したようで、何事もなかったかのように2巻でもう一度タイムスリップしているのも面白かったです。 あらゆる方向で面白いのに何故かマイナーがらくたストリート 山田穣愛妻号オーディオとかアニメ作画とか渡世人とか妖怪ハンターとかいろんなウンチクも楽しいし女の子も可愛いのに、なぜマイナーなのかどんどんネタかぶりあたりまえのぜひたく。 きくち正太名無し※ネタバレを含むクチコミです。「近さ」を巡る百合短編集おねだりしてみて 雪子あうしぃ@カワイイマンガ『ふたりべや』では二人の恋愛ではない?親密さを描き続ける雪子先生。この短編集『おねだりしてみて』も、様々な「近さ」を描いている。 それは寄り添って安心を得る、という『ふたりべや』に近い内容もあれば、秘された心と向き合い、関係を構築する内容もある。いずれも恋心がどうこうよりも「どうすれば安心できるのか」の方が大切なテーマの様だ。 だから読後には、二人の「続き」への興味と空想が尽きない。興味深い連載のパイロット版が何本も並んでいる様な面白さなのだ。 そしてここから『ふたりべや』も始まる。 ♡♡♡♡♡ ●『おねだりしてみて』隣人の喘ぎ声が気になる。近付き、事情を知り、そして……ラストにビックリ。 ●『魔法少女が将来なりたい職業1位になりました。』魔法少女養成学校に、おバカ女子と賢い親友が挑む!彼女の資質は親友力? ●『No.105』液体になれるけど元に戻れないアンドロイドと、彼女に苛立つ博士の助手。心開けば、彼女は水鏡。 ●『筍と帆立の春雨サラダゆず胡椒風味』不眠症のお姉さんとサラダしか食べない少女、深夜の逢瀬。 ●『泣きたい人は何処にも居ない』彼女は私に傷付けさせる。嫌なのに抗えない、そして彼女は……。グロ注意。 ●『蜂蜜日和』双子の姉妹はいつも密接していて、でも少し内面は違って、それでも一緒にいる。 ●『ふたりべや』連載作品の元になった同人作品。少し設定は違うらしいが、ほぼ一緒。この近さ、良いなぁ。 〈超密着〉二人の同居はもう7年目…ふたりべや 雪子あうしぃ@カワイイマンガ同居物語には大抵、喧嘩が付き物。喧嘩しても仲直りして絆深まるのが物語の常ですが……いやいや、現実なら拗れて終わるでしょ?と思う訳です。 『ふたりべや』の二人は……そもそも喧嘩しませんねぇ、驚く程。 仲が良過ぎて、同居初日から一緒のベッドで寝てるし、頬寄せ、膝枕、手繋ぎ、何かと言うと体寄せ合ってくっ付いている……恋愛抜きでですよ?それを8巻、高校から大学四年まで7年間続けて、本人達も読んでる方も全く飽きない。 しっかり者の桜子は、食いしん坊で面倒くさがりのかすみに、あれこれ世話を焼く。彼女にとってはそれが愛情表現で、やりたい事。でもそれはかなり過剰。そんな桜子をかすみは、やりたい様にさせて置き、喜ぶことで受け止める(意外な程の思慮深さで)。 お互いのあるがままを受け入れ(時に引かれても)相手に素を見せて甘え、寛ぐ。そこには恋愛の甘々や情動ではなく、夫婦という絆でもない、ただ一緒に生活を楽しむだけの、決して壊れない究極の「仲良し」感がある。 周囲には女性同士の恋愛模様が、幾つか描かれる。それを見ても二人の様子は、何も変わらない。私としては、いつか壊れる恋愛よりも、こんな関係性が羨ましい。 物語とか要らない。二人の同級生になったつもりで、この関係性を何処までも眺めていたい。そんな風に思わせる作品です。 (8巻までの感想です)言い訳してもいいじゃない、美味しければいいわけごはん 杏耶野愛杏耶さんのレシピは絶対美味しそうだし美味しいので好きです。限界まで疲れた日でも作れる簡単なものだったり、カロリーなんかどうでもいい美味けりゃいいってものだったり、忙しい中でも栄養ちゃんととれるよってものだったり、アプローチは違えど生活に寄り添った優しいレシピを教えてくれるところも好きです。 こちらはレシピ本と言ってしまえばレシピ本ですが、日常漫画要素もしっかりあるのがいいところ。 仕事で疲れてプライベートまで手が回らないこともある、ゆるっとだらっとしたいけどこだわって料理しだすと止まらないこともある、クタクタではやくご飯食べて寝ちゃいたいけどどうしてもネギ入れたいから買いに行くこともある…そんなささやかなあるあるが満載です。 作者の杏耶さんはぷにっとした自画像とはかけ離れたセクシーでゴージャスな美女ですが、限界人間たちの気持ちがわかるんだなあと嬉しくなります。人間味! 二日酔いのときカレー食べたくなるのめちゃめちゃわかる。胃腸よわよわなので後悔するけども。子どもが健やかに育つには・・・つづきはまた明日 紺野キタnyae親をはじめとした身近な大人たちが全力で守ってあげなくてはいけない。しかし、過保護になりすぎてもいけないのが難しいところ。 少し子供を心配しすぎ?気にしすぎ?とも思える杳と清の父親。父子家庭になったばかりという背景ももちろんあるけど、子供がもし事故にでもあったら!?誘拐されたら!?クラスメイトに悪口を言われたら!?と心配で心配でならない親の気持ちが痛いほどにわかる。 この漫画はそういった、子どもを守る立場の大人たちの目線と、守られる子どもたちの目線どちらも真摯に描いた素晴らしい作品。子ども時代を思い出して懐かしさも感じつつ、大人の目線で子どもの成長を見つめる感じで読みました。 マンバでおすすめしてもらったんですが、こういう漫画、もっとくれ…!と読み終わった今なってます。 すべての子どもが健やかに育つには、大人はどうすればいいんでしょう。と考える。そうやって大人が悶々と考えてるうちに、子どもはどんどん大きくなる。 結局大人にできることって、あーだこーだ口は出しながらも、無事に育っていくところを見守り続けることなのかな。 異世界転生のチート系神さまSHOPでチートの香り 金田正太郎 鈴木イゾ 佐々木さざめきさいろく他の異世界転生もののチート系をあまり知らないけど(正直流し読みしてしまって記憶にあんまり残ってないというのもある)本作も例に漏れずチートで「商品」を扱える感じ。 絵は上手いし女子も可愛いのだけどどうも最近の流行り絵柄は印象に残りづらいんだよなぁ…と本作も思ってしまう。 5巻まで出ていて完結していて、というところで手にとってみたが、砂漠の国っぽい雰囲気のキャラクターたちやヒロインなどは割と好みだし、物語もテンポや展開は悪くなかった。 終始上から目線な書き方になってしまったけど、悪くはなかったです。 転生モノあんま好きじゃないのですが最後までスッキリ読めて良かったかな。絶対に最後まで読むべし!惑星クローゼット つばな名無し2巻まで読んで「不思議な世界観だな…」と思ったまま放置してしまっていたのですが、4巻で完結したと聞いて慌てて読みました。4巻の中盤からの怒涛の展開がすごいですね!ずっと「夢の中でしか会えない女の子の為にどうしてこんなに一生懸命になれるんだろう?」と思っていましたが、そういうことだったのか!!と納得がいきました。もう一度最初から読み直したいです。割れ鍋に綴じ蓋ならぬ作りすぎに完食系ご飯つくりすぎ子と完食系男子 揚立しの名無し題名でほぼ完ぺきに話の中身が予想できてしまう 面白くて美味しいコメディ。 ほのぼの系というか癒し系というか。 しかし日常系ではないな。 だって、 ・綺麗な可愛い妙齢の女性が ・アパートの隣の部屋に一人暮らしをしていて ・美味しい料理を作れて ・必ずつくりすぎてしまう というのは、日常ではかなりありえなさそう。 特に最後の「必ずつくりすぎる」が(笑) 現実にありえそうなのは上記の4条件のうちの 2つくらいなんじゃないかな。 そういう意味では結構ありえない話なんだけれども、 食事はだれかと一緒に食べるほうが美味しいし、 自分の作った料理を美味しそうに食べる人の顔をみたり 美味しい料理をふるまってくれる人の顔をみれば なにより幸せな気分になるのは間違いない。 実は色々とありえない設定ではあるが、 その点をついていることで 確実にこの漫画は読者の心をとらえる。 共感できる、そう思う。 自己紹介より先に料理を渡しあったり、 最初は隣の部屋から同じ料理の匂いがすることだけで 嬉しかったり、それが互いの顔を見ながら食べる仲になったりと ちょっとじれったい速度で距離感が縮まっていくのも ほのぼのしつつ面白い。 まだ2巻までしか読んでいないが、読みながら 「これ、男女のキャラが逆でも面白かったのでは?」 とか 「お酒が絡んできても面白いんじゃないか?」 と思ったりしたのだが、すでにちゃんと? 「自炊男子に不器用な恋してます。」 「ハッピーアワーガールズ」 とかの作品もあるんですね。 これら、絶対にそういう方向の漫画だろ(笑) そっちも読んでみたいと思います。 柔らかく刺をくるむ白の短編集Cotton 紺野キタあうしぃ@カワイイマンガ紺野キタ先生のこちらの短編集は、一冊通して驚きの白さ。画面もそうなのだが、描かれる心も、刺々しい感情を受け止めたり、誰かを思う心を届けたり、苦しみから解き放たれたりといった、優しさと繊細さの白。 柔らかさ・吸収力・伸縮性で、溢れる心を受け止める。そんな感性に包まれた一冊だ。 ●『cotton』…気難しい義妹の女子高生に懐かれ、彼女と向き合う事になる女性。もどかしい子供の心、反抗心と傲慢さ、それと向き合う困難と真摯さ。共に笑い、喧嘩して時に泣き、寄り添う二人の信頼関係が胸に染みる。 ●『生物I』…弱くて群れの中で迫害される少年は、優しい。彼の側に立った少女は彼の心と触れる。 ●『朝の子ども』…結婚と仕事の狭間で悩む女性は、大人を一日休み。 ●『手紙』…引っ越した友達に手紙を出したいのに、どこに行ってもポストが無い! ●『残夏』…本家のバーサンからメールを貰うじーさん。バーサンの死と共に、真実を知る。 ●『telephone』…電話越しに悲しみを共有する子を、側から見る現実感。 ●『under the rose』…母の死と共に異母姉と暮らす。複雑な感情と共に、誰にも内緒の関係を築く。 ●『放課後』…友達を迎えに来る、彼女の声を追ってしまう。子供の夢には、もう留まれない。Lily lily rose 紺野キタあうしぃ@カワイイマンガ母を亡くして心を閉ざした9歳の凛々(りり)は、叔母・のばらの元に預けられる。不思議な感覚の中に住む凛々が、周囲の理解によって心を開いていく過程を描きながら、次第に物語は、叔母・のばらの過去と内面を描き始める。 凛々の母・ゆりかは、のばらの双子の姉妹。感覚も感情も共有していた二人の幼少期の安心感・楽しさ……それを抱き続けたまま大人になったのばらの、ゆりかへの愛着は重い執着となり、痛々しい。 のばらの想念が捻じ曲がって凛々に向かう、息苦しい後半。同居人の麻耶との、まるで時間のかかる認知行動療法を一気に行うような対話。のばらの感情の起伏に、心を揺さぶられる。 童話、魔女の家、幽霊、不思議な双子語……子供の為の世界をふんだんに描きながら、いつまでもそこにはいられない、という現実を残酷に描く物語。それでも何回も読みたくなってしまうのは、そこに沢山の優しさと美しさがあるからだろう。 (本作は百合作品枠で紹介されることがありますが、のばらと麻耶の関係よりは、双子の強すぎる絆と、そこへの囚われという『双子百合』と捉えると良いと思います。甘いのはありません)「人に言えない」生々しい百合 #1巻応援猫とシュガーポット 雪子あうしぃ@カワイイマンガ『ふたりべや』雪子先生の短編集は、kadokawa、双葉社のアンソロジー掲載作品、同人作品に加え、書き下ろし。アンソロジー読者には既読の作品もあるのだが、一冊に纏まると共通点が見えてくるのが、面白いところ。 全体を貫いているのは「人に言えない」事。 人に言うのが憚られるような、変わった嗜好や感覚の生々しさ。性癖的にも精神的にも、遂に受け入れられる時の無常の喜び。秘密の関係に、密かに浸る背徳感……細やかで軽いタッチに中和されつつ、濃厚な感覚がクセになる。 ●『猫に離人』『猫と囀り』『猫に電話』…人が野菜にしか見えないキャバ嬢は、人の姿に見えた女性と付き合い始める。 ●『シュガーポットは壊れない』…かなり変わったM癖を持つ女性は、友人に連れられたSMイベントで意外な人と会う。 ●『つるつる』…恋人の毛を抜きたい子。 ●『私の幼なじみは…。』…幼馴染と離れたいギャルは、清楚系幼馴染に「アブノーマルに」ガンガン迫られる。 ●『午前1時のコインランドリー』…上京したてのOLは、コインランドリーで知り合った美人に部屋に誘われる。 ●『蝶々の暇つぶし』…やる気のないメイドがお嬢様に取り立てられて……? ●『鬼と山神』…人の世を追われた鬼の姫は、山の神に触れられる。 魔法は子供達を傲慢にするDark Seed―ダーク・シード― 紺野キタあうしぃ@カワイイマンガ傲慢さという性質は、なかなか御し難い。それは時に私を駆り立てる力になる。しかし一方で、自分を特別視し人を見下し、高みから誰かに噛み付いては、自分の心を傷つけ狂わせていく。 この『Dark Seed』という魔法学校ファンタジーは、そんな「傲慢さ」とどう折り合いをつけるか?という事が主題になっている。 ★★★★★ 魔力を持つ子供は、毒でもある魔力を中和する「対(カノン)」の存在無しでは生きられない。しかし魔力を持つ子供は力に思い上がり、仮初の魔力を得る「対」を見下す。そんな魔法学校で、主人公の少女は強い傲慢さを持ちながら、とある偉大な魔法使いの力を受け継ぐ。 主人公と「対」の諍い、学生達それぞれのパートナーシップ、偉大な魔法使い一族の内情と、跡目と目されていた少年の画策……それぞれに見て取れるのはやはり、力を持つ故の「傲慢さ」。しかし描かれる感情には共感できる部分が多く、それ故に己の持つ危うさが、客観的に見えて来る。 そして偉大な魔法使いの仕事を受け継ぐ時、主人公は酷くどす黒い「傲慢さ」と対峙する事になる。 学校や師から学ぶのは、魔法より小さくても実のある優しい力との「世界の均衡」。それを好んだ少女は、荒々しさを抱えたまま「傲慢さ」と対話を始める。変に悟って腑抜けてしまうのではない、元気なままで己の傲慢さを手放すやり方に、どこかスッとする。夜を歩く、生まれる場所へ。夜の童話 紺野キタあうしぃ@カワイイマンガ春の夜の闇はあやなし…と口にしたのは凡河内躬恒であり、紺野キタ先生の『つづきはまた明日』の主人公・藤沢杳(はるか)少年だった。視覚を制限される夜に、出会う感覚は豊かで、月夜歩きは意外なほど自由。 そして夜は、何かが生まれる場所……朝、生誕、故郷……へ辿り着く。 暗い闇を歩んだ者・不安を共有する者しか辿り着けない、豊かな感慨のある詩的短編集。夜に一つずつ、ゆっくりとどうぞ。 ●『家路』…夢の故郷を絵にしてみた。それが画集になる時、彼の夢はどうなる? ●『庭』…姫の庭には、園丁の少年が眠る。姫が悲嘆に暮れる時、庭は姫を受け止める。 ●『バイエルのワルツ』…営業の谷川君は、事務の時枝さんの結婚話を聞いてしまう。夜道で彼は思い切る! ●『春を待つ家』…奔放な父に振り回される姉弟。それでも共に桜を見る父が好きだ。 ●『カラカラ』…かつて事故に遭った時、祖父と空を操った。 ●『眼鏡売りの男』…月夜の下を不思議な眼鏡を売り歩く男が、出会い・配る物とは? ●『あかりさき』…病院の前で、裸足の少女と出会う。一番星を灯す彼女に託される物。 ●『夜の童話』 ①長いこと借りていた「猫」を返す。 ②三匹の捨て猫と心配な子供達。 ③猫を見つけたお礼に初恋(概念)を貰う。<<56789>>
真面目でお堅いOLの不破さんが美味しいものを食べて飲んで笑ったり泣いたりするお話。 作品中に登場する料理やお酒ももちろんですが、不破さんの人間性が魅力的なんです。 きっちりしていて機械みたいな人に見えて、季節の移り変わりや旬の食べものを大事にする一面もあります。 胃を休めようと思ったのにカレー作っちゃったり、釣り堀にガチジャージ&長靴で行ったり…人間らしくて好き。 行きつけのお店のマスター蓮見さんとの恋模様もピュアでもどかしくて可愛らしいんです。 グルメ漫画を読むと外で飲みたい気分が高まってしまうんですが ベランダで手作りサンドイッチ食べたり、浴衣と1人鍋でおうち温泉宿気分を味わったり、お家でできる楽しみ方もたくさん描かれているので今のご時世にもぴったりです。