KADOKAWAマンガの感想・レビュー2697件<<7891011>>青々とした影の下で息絶えるものたち #1巻応援スーサイドエイジ あらやかわい兎来栄寿カドコミがリニューアルされ、とても見やすく使いやすくなった今日このごろ。アプリのBOOK WALKERもこの調子で使いやすくして欲しいです。 そんなカドコミで短期集中連載されていたこちら。 作者のあらやかわいさんは「絶対天使」や「ゾンビは走らねえんだよ」などでも感情を迸らせる女子高生たちを描いていましたが、この『スーサイドエイジ』も、まさに自身が高校卒業する際に同人誌として描いたもののリメイクだそうです。 第1話 天真爛漫な合田さん 第2話 陸上部の松田さん 第3部 惰性に生きる田嶋さん 第4話 優等生の真田さん 第5話 学校嫌いな金子さんと刈谷さん 第6話 卒業式 という目次を見ていただければ解る通り、概ね1話ごとにメインでフィーチャーされるキャラクターは変わりながらも、同じクラスで共に過ごす女の子たちを描いた群像劇です。 まず、シンプルに絵に惹きつける力があります。スタイリッシュな作画で描かれる女の子たちが魅力的で、特に三白眼になりがちな眼力の強さが良い。個人的な好みで言うと、4話でチラシを配っている金子さんの横顔と、6話の包帯の子が特に好きです。 そして、「女子高生」という特別な3年間が終わるに際して生じるさまざまなものが入り混じって消化不良を起こしそうな感情を若々しさを迸らせながら表現しているのも良いです。人生において、その瞬間にしか湧かないものというのがありますが、この作品にはそれがしぬかりと込めてあります。普通の人であれば、記憶の中から時と共に少しずつ薄らいでいくであろうものがこうして作品として永遠に残る形で留められている。それは、他者が触れれば自身の記憶に呼応して何かしらを呼び覚ます契機にもなり、またいつか歳を重ねて自分で読んだときにはその貴重さを噛み締める類の素晴らしい営みであろうと思います。今の私には、この昏さが眩しいです。 作品の構成もまたとても良く、1冊で綺麗に完成しているのも美しいです。あれだけ楽しい時間を一緒に過ごした友人でも、その裏にあるものをまったく知らないこともあります。努力していた人。怠惰な人。真面目な人。奔放な人。他者に行っていたさまざまなラベリングのその裏は、もしかしたらこんなだったのかもしれないと思わせてくれます。 ウクライナやパレスチナにいる同い年の子の存在を思えば日本に生まれて毎日食べるものや水に困らず今この瞬間に命が消されることに怯えなくてもよく、さまざまな権利があるだけでも幸せなはずです。しかし、たとえひとつひとつ大きな不幸を消していっても残った小さい不幸の大小が隣の人と比べてほんの少しでも大きければ結局不幸だと思ってしまうのが人間。難儀なものです。人間はどこでも幸せになれるし、どこでも不幸になれる。若いころなんて特に今の自分が宇宙のすべてであるのもよく解ります。ああ、苦い。 キャラクターで言えば、容姿的にも関係性的にも金子さんと刈谷さんのエピソードなどはどうしたって好きです。ここを煮詰めたものなども一回描いてみて欲しいなと思うくらいには、短い中に良さが溢れていました。 あらやかわいさん、瑞々しくて初期衝動に満ちていて、これからますますたくさんの傑作を描いていくであろうことを確信できる1冊で今後が楽しみです。二人の恋を応援したいお見合いにすごいコミュ症が来た 矢野としたか名無し※ネタバレを含むクチコミです。もしもお見合いに虚無僧女子が来たら #1巻応援お見合いにすごいコミュ症が来た 矢野としたかstarstarstarstarstar_border兎来栄寿Twitter(現X)で掲載した読切が大反響を呼び、連載化された異色のラブコメです。 40歳の会社員伊丹は、婚活サービスに登録して1年ほど頑張っているもののなかなか良い相手に巡り会えずにいた男性。そんな伊丹に密かに思いを寄せる28歳の部下の園田さんがかわいくて仕方がありません。 園田さんは、自分の友達を紹介するという体で自身が虚無僧の天蓋を被ってコミュ症の「野田」と称して伊丹とのお見合いを断行します。そうして12歳差+相手の顔を見れない状態での不思議なお付き合いが始まっていきます。 『光る君へ』で『源氏物語』が盛り上がっている昨今ですが、かつては滅多に顔を見せることがない状態が普通だったわけで、今の慣習からすると特異には見えますがある意味では回帰的であるとも言えるのかもしれません。 普段会社では常にクールな佇まいである園田さんですが、ひとりになると思考も言葉もヒートアップして暴走していくさまがたまりません。何なら、この作品はそのシーンを見るために読んでいるようなところがあります。がんばれ園田さん、負けるな園田さん! 君に明日はある!! また、そんな園田さんが惹かれる伊丹の優しさと健気が応援したくなる感じで良いです。なぜ好きになっていったのか、どこに愛情が湧いてくるのかという部分のエピソードが良いですね。伊丹はいわゆる子供部屋おじさんではあるのですが、おじさんというものが女性からあまねく嫌われる存在であることを自覚して常に一歩引いたところにいようとする姿に親しみを覚えます。 ただ、母親と同居している家を手放せないなどの事情もあって婚活難易度が高くなっているところがあるのはリアル。もし結婚しても、一回りの年齢差があり特に男性側の年齢が高い場合は老後も気がかりになるのはその通りです。男性も40を超えてくると妊活もなかなか大変なこともあるでしょう。それでも、園田さんと無事に幸せな家庭を築いていって欲しいです。 余談ですが、4話で登場する虚無僧にやたら詳しい主婦が好きです。こだわりの食の楽しみ方ギャグ漫画目玉焼きの黄身 いつつぶす? おおひなたごうstarstarstarstarstarカイ様々な「食」へのこだわりを取り扱った漫画 美味しい料理ではなく、食べ方や楽しみ方にフォーカスしたユニークな作品 タイトルの目玉焼きの黄身 いつつぶす?は潰して白身にソースのようにかけて一緒に食べるのか、先に白身だけ食べて黄身は贅沢に一口で食べるかというお話 (黄身潰さないのは必要以上にお皿を汚さないタメでもある) 私は油多めの片面焼き、白身はカリカリ、黄身堅焼きで最後に一口(黄身が垂れないのでお皿にこびりつかないタメ)。調味料は醤油がベスト。 他にも…とんかつのキャベツを食べるタイミング、カップラーメンの蓋を剥がすか付けたままか、口内調味するしない、そば(温)のかき揚げはサクサクにかぶりつくかつゆに混ぜ込んでしっとりいただくか、一口ちょうだいはあり?なし? などなど 普段気にしない他人の食べ方やその理由など、変わった視点から気づくきっかけとなる漫画です 私はとんかつのキャベツはデザート、剥がした蓋にスープ小袋のゴミを置く、レンゲでミニラーメンは作らない派閥です。 11巻オチの一口ちょうだいアンケートが秀逸 頭おかしくなるくらい圧倒的に壮大なSFファンタジーイムリ 三宅乱丈ピサ朗地球とは異なる惑星で暮らす、奴隷民族であるイコル、支配民族であるカーマ、そして先住民にしてタイトルのイムリ、これらの戦争が描かれていくのだが、 三民族それぞれの文化、いわゆる魔法に相当する技術、支配種族の権力闘争、逆転に次ぐ逆転が続く展開、とにかく徹底して「世界」のディテールが細かく濃い。 ハッキリ言ってこのディテールの細かさは間違いなく人を選ぶ。 巻末で登場人物紹介や用語解説が掲載されているが、独自用語で耳慣れない単語が多いもんだから、別ウインドウ表示か小冊子にして読みながら確認させてくれと言いたくなるし、世界設定の説明や大まかな登場人物紹介と序章に当たるストーリーに3巻を費やしていので、ストーリーが動き出すまでも遅く、正直序盤はじれったい。 しかしほとんど説明なのにめちゃくちゃ中身が濃いし、後から見るとこれでも足りないくらいで、スケールのデカさに戦慄する。 最低3巻読まないと殆どストーリーが動かないという展開の遅さなのに、一度物語が動き始めてからは息をもつかせぬ急展開の連続で、疲労感すら漂う重い展開の嵐だが、ある種の絶叫マシンに乗ったような気持ちよさもあり、それぞれの戦いの方法も見応えがあり、胸を打つ場面も多い。 序盤の展開の遅さとオリジナリティの高さ故の入りにくさはあるが、描かれていく世界史と陰謀、英雄譚に和平は非常に読みごたえがあり、間違いなくハマれる人はハマれるタイプの作品。ダンジョンが熱い今だからこそ #1巻応援冒険者絶対殺すダンジョン 道満晴明starstarstarstarstar_border兎来栄寿『ダンジョン飯』や『葬送のフリーレン』や『俺だけレベルアップな件』といった大人気作品のアニメ版でダンジョン攻略が現在絶賛放映中で、先日は弐瓶勉さんの最新作『タワーダンジョン』も1巻が発売し、いまだにTLでは『シレン6』が盛り上がっている世間がダンジョンに湧く今、最高のタイミングで満を持して発売されたこの『冒険者絶対殺すダンジョン』。 昔テクモの『刻命館』というゲームのシリーズが好きでした。普通のゲームは冒険者としていろいろな場所を旅するのですが、『刻命館』シリーズはそうした冒険者のような者たちを含めて侵入者を罠に嵌めて殺していくゲームです。罠によるコンボを作るのが非常に楽しかったですね(第1作はメモリーカードを9ブロックも使うので大変でしたが)。 本作は、まさにそんな『刻命館』シリーズのような楽しみを味わえる道満晴明さんの最新作です。 トラック事故で死ぬと冒険所に、落ちてきた飛行機のエンジンに潰されるとダンジョンのフロアスタッフに転生するという世界で、見事に飛行機のエンジンに潰されてしまったナハトとアイネのふたりが主役となり、毎回さまざまな方法で冒険者を待ち受けたり逆に自分たちが死んで復活(リスポン)したりする物語です。 道満晴明さんらしい、あっけらかんとした下ネタ(サキュバスに前立腺の位置を教えてもらったり、MM号が出てきたり)やメタさ(冒険者がエリクサー症候群で使わなかったエリクサーを回収して保管していたり、「ここだけSNSに拡散されたらやべえ奴〜〜」というセリフだったり)が随所に出てくるのも流石で好きです。マンドラゴラの描き方や設定ひとつとっても、これぞ道満晴明さんと膝を打ちます。 また、特に6話や14話などは短編で設定を活かしながら巧く落とすのが得意な美点もよく出ています。最後にブレイバーンのような最新のネタまで放り込んでくる辺りも流石です。 かわいい絵柄でありながらそこそこエロスとバイオレンスが盛られていますが、その辺り込みで美味しく食べられる方にはお薦めです。性格0点な陰陽師探偵と追う、妹の失踪に隠された秘密 #1巻応援探偵の式神 田辺ゆがたsogor251ヶ月前に行方不明になった妹の衣緒理を探す高校生の桐形綴はとある場所を訪れます。 それが陰陽師である天ヶ屋七都が人形式神の矢千代と共に営む探偵事務所。 警察の捜索も進展がなく、陰陽師の力で衣緒理を探せないかと思っていた綴。 しかし、手始めに七都が能力を使って得られた情報は、衣緒理の反応が遺体や幽霊という状態すらみつけられない、すなわち、**衣緒理がこの世に存在していない**というものでした。 実は衣緒理の失踪には衣緒理の存在自体にまつわる秘密が関わっていました。 そしてその秘密は、七都たちがずっと追いかけていたある事件とも関連が…。 そんな繋がりから、綴を事務所で働かせて共に衣緒理の消息を追うことにした七都たち。 この作品は、実力は折り紙付きだけど態度は最悪な七都、そして思わぬ戦闘能力を秘めている矢千代と共に、 綴が衣緒理の失踪に隠された秘密に迫る様子を描く作品です。 1巻まで読了 聖女の異世界転生のおまけで社畜まで転生しちゃったw異世界の沙汰は社畜次第 大橋キッカ 采和輝 八月八starstarstarstarstarるる5巻まで既読。 難しそうな内容なのかなー、女性漫画扱いだけど?色々思いながら読んだらすごく面白かった。 社畜の近藤はオマケの転生で一応生活の保証はあるのに経理の仕事を志願。 社畜故に働き過ぎ、薬、瘴気と魔力の耐性無しで近藤はアレシュの「治療」が度々必要になる。 こうやってBL化していくのねw 硬派なアレシュ格好いいなー。 でも近藤が鈍感でアレシュが切ない。 それでもグイグイ来るけどw お揃いのクッションとか可愛いかよ😂 聖女のユアは途中まで問題起こしそうで、 登場するとイラッとしてた。 あの王子から離れてマトモになってきた。感想俺が主役なわけがない ほとなか名無し面白いし絵も綺麗です。ただ第1話で三角関係のコメディとしてすごく面白くてこの方向性でいくのかと思っていたら、シリアスになってきてしまい、魅力だったコメディ要素がなくなってしまったのがちょっともったいなかったです。(コメディがすごく良かったので)枕の擬人化はじめて見た社畜と枕と安眠と 岩谷たわい名無したまらんかわいい 自分が今つかってる枕はどんな子なのか想像したくなった 彼はなぜバスで眠るのか春日 出はバスで眠る 西田心名無し※ネタバレを含むクチコミです。感想幽霊さんと不良A 鴉月ルイ名無しヒプマイのコミカライズをしていた作者さんで、絵はきれいでカラーも鮮やかですごく上手い。ストーリーは事件発生→解決まであまり心が揺さぶられる展開がなく、絵は上手いのでうまいこと話を盛り上げればもっと人気出そうなのでもったいない印象。エンプレスエイジの世界観エンプレスエイジ ~闇社会の主役は我々だ!~ せらみかる ゾムOsamaBinLadenoskといったロゴのみから舞台となったのは大阪のあい○ん地区だろう。さらに警察のお偉方が女子供に尊大な態度をとり、そんなダメダメな上層部に嫌気が差した刑事が本来なら敵対する反社とコンタクトをとり、何より十代の姉弟だけの家庭が放置されたりと治安も経済もお世辞にもいいとは思えない。“13地区”というのも臭いものに蓋をする目的みたいな場所であり、“ナイト”という異能力者も鬼○の血鬼術やちいか○のキメラを彷彿とさせる。この世界では“ナイト”は半ば忌むべき存在とされている感じもする。そんな中で異能力が身に付いた主人公が「怖い」と口にしたのもうなずける。彼女にとってチート能力が身に付いたのは余命宣告をされたに等しい。主人公をはじめとする“ナイト”が今後どのようになるのかが気になる。 誰かの、近所の、好きな店鍋に弾丸を受けながら 青木潤太朗 森山慎starstarstarstarstarhooperテレビでネットで見ただけで、行ったわけでもないのに知った気になっていたわけです。 過去にした「アメリカの食べ物ってさぁ〜」みたいな半笑いの言い回しを、本書を開くたびひっそり恥じ入り心が土下座陳謝する。 そらそうよ。州があり市があり街があり村だの川だの大自然だのがあり(ブラジル回)、そこに暮らす個人とその人の生活、現地の習慣や、行動範囲がそれぞれあり。 そして、友達が来たら「美味い店連れてってやるよ!」という日々のご近所グルメがあるわけで。 例として3巻11話の「ホットドッグ・アンド・フライ」。上に揚げたてフラポを載せ、その上から塩を振ってあるホットドッグ。 だよね。アメリカ全土で"いわゆる"なホットドッグしか食べてないわけがない。 もっと素敵ィ〜な外国グルメもあるが、とにかくこの話に衝撃を受けた。(単に私が愚かなだけか)。 ちなみにこの漫画をクルッと裏返しにすると、個人的に『米国人一家、美味しい東京を食べ尽くす』になると勝手に思っている。ブラックサンダーアイスを絶賛するサイズ感の滞日グルメ本です。活字ですが、グルメモノが好きならおすすめ。 とにかくジュンターロサン、これからも私めの蒙を啓いてください、応援しています。土下座陳謝で。 タイトルは天井裏に誰かがいる サイトウマド名無し本作品のタイトルは 「天井裏に誰かがいる」です…3話まで読むとじわじわハマってくる秋津 室井大資ミューズ1話目読んだときはギャグの方向性が明後日過ぎてちょっと微妙かなって思ってたんだけど3話くらいまで読むと、明後日の方向に投げられたギャグがブーメランみたいに直撃する感じで笑えてくる。 田舎の美少年田舎の美少年 右野マコstarstar_borderstar_borderstar_borderstar_border寸々地方差別×ルッキズムをすごい速度で主張してくる漫画が目に入ったので冷やかし程度に買って読んでみたけど、コメディ調のまま「田舎の」「美少年」を(暴力的に)独占して行く流れになり、すごかった。場合によっては、罪だと思う子どもをネットにさらすのは罪ですか? まきりえこstarstarstarstarstar_borderポコニャン※ネタバレを含むクチコミです。知らないものは怖い。想像できないものは怖い。光が死んだ夏 モクモクれんstarstarstarstarstar_borderゆゆゆまず、擬音表現が怖い。 ジョジョだとゴゴゴとか書かれているアレ。 シャワシャワシャワシャワって、小さく1列にたくさん書かれていて怖かった。 頭をワシワシする音かと思ったけど、セミがものすごく鳴いている様子が正しいのかな。どちらにせよ、怖い。 気味が悪いシーンのあと、先生の顔を隠して、やたらリアルに口だけ描かれていたのも怖かった。 男二人が周りの女の子に恋愛感情抱かず、二人の秘密を共有してはいるけど、二人の間でキスすらしているわけではない。 すごく仲の良い友人ともとれる関係性。 ホラーは的を得たジャンル分け。すごく怖い。 光から出てくるやつ、怖くて直視できない。 ネズミだと気づいてしまったら僕の心がチューと鳴く 胃下舌ミィstarstarstarstarstar野愛※ネタバレを含むクチコミです。転生したら温泉だった、細かいことはいいんだよ異世界温泉に転生した俺の効能がとんでもすぎる 森あいり 七烏未奏 庄名泉石さいろくでも・・・細かくないところはよくない。 2017年刊行、この頃はコミカライズがめっちゃ安く仕上げられてしまってるのが多く、例に漏れずこちらもそういう感じに見える。原作読んでないですが>< 端的に、乳首が出てないシーンを探すほうが大変なぐらい、ずっと幼女と古い感じのデザインの女性キャラが全裸で話をしているだけのマンガでした。 ※添付は出てない回想シーン応援したくなるお嬢様の訳ありピュアラブ #1巻応援天恵さんは甘えたいのに ももたんstarstarstarstarstar兎来栄寿『本屋の鬼いさん』や『枯れ専女子高生と時かけおじさん』で独特の世界観を提示してきたももたんさんの最新作は、少し切なくて、笑えて、エールを送りたくなる素敵なラブコメです。 不思議な力に守られた一族で悪意を持って近付く者には天罰が下される天恵一族。それぞれが不思議な力を持つ家系で、主人公の心結(みゆう)は人の心の中が見える少女。その能力により苦しんでいたときに稀有な美しい心を持った正直(まさなお)に出逢い、彼が初めての友達兼初恋の相手となります。 しかし、その後とある事情で記憶を失ってしまった正直。15歳になってからお見合いをして、たとえ相手が自分のことを忘れていても振り向いてもらおうと懸命に努力していきます。 多くの女の子がそうしているように正直に可愛く甘えようとしても、いつも絶妙に間違って上手く甘えることができない心結がかわいいです。とにかく主役がふたりとも純朴で優しいことで、ひたすら応援したくなります。心結は恋に生きていながらもそれ以上に人として大事な部分を持っていて、いざというときにはそちらを優先するのが尊いです。お嬢様とはかくあるべきです。この子たちが幸せになれない世の中なんて嘘だッ! と言いたくもなります。 心を読めるというひと匙のファンタジー要素が物語とキャラクターに彩りを添え、正直の記憶が失われていても以前と変わらない心根や所作が切なくもときめきを与えてくれます。 ライバルのアイナが登場後の 「恋とはふわふわして可愛らしいことだけだと思ってましたわ でもそれだけじゃありませんのね 痛くて苦しくて深い海の底にいるみたいなのも 恋なんですわ」 というモノローグなどはたまりません。ここではっきりと良い少女マンガだなぁと思いました。 何とか娘の恋を叶えてあげようとする心結の父親の金持ち特有の強引ムーブも、突っ込みたくなるけど楽しい部分です。 「笑顔が国宝」 「存在がファンサ」 などの心結の中のうちわ芸や、突然出てくる訳知りモブおじなど細かいギャグのジャブ連打も好きです。 巻末描き下ろしはもちろん、カバー下までサービスたっぷりでありがたいです。お見逃しなく。 天使と悪魔、ハラグロラブコメ愚かな天使は悪魔と踊る アズマサワヨシstarstarstarstarstar_borderゆゆゆゲスな天使と、心根優しい悪魔による、腹の中は互いに隠したラブコメ。 人間もなかなかハラグロなキャラクターがいて、ラブかつコメディしているので、天使と悪魔以外もハラグロラブコメ。 第一部まで読んだところの感想だと、相手が自分を好きになるように仕向けるというのは、よくあるテーマよねと思える。 でも読んだきっかけである、アニメ(24年1月放送開始)のPV(しかも第二弾)を見たときは「これって、かぐや様…」という感想が消えなかった。 いや違うかもしれないと思い直し、原作を読んでみた。 最初の数話で、「いや、一緒だろ!!」というツッコミを入れたくなった なお、あからさまなかぐや様シーンはオマージュだったらしい。 ヒロインのリリーが以後禁止を伝えていた。 そう、きれいな絵柄なので忘れがちだけど、これは(ラブ)コメディマンガ。 オマージュは他にも見つけたけど、きっともっと散りばめられている。 単なるラブでも、ファンタジーでもなく、ラブコメ漫画だ。 絵柄がきれいなので、とてもエッチにみえるシーンもあるけど、ラブコメ漫画だ。 偏見をもって読み始めてしまったけど、偏見が吹き飛ぶほどおもしろい。対悪魔用兵器リーリヤ愚かな天使は悪魔と踊る スピンオフ みだらな素体は性に目覚める すいみんstarstarstarstarstar_borderゆゆゆ本編でもしばし阿久津に対して胸を揉むか聞いていたリーリヤ。 穴はあるけど人ではない。 冒頭、その言葉と穴の絵とともに、三種の人器と描かれていて笑ってしまった。出だしでやられたので、これは良いコメディと思った。 リーリヤは寄主であるリリーの性格・判断・行動などの性質を継いでいるそうだけど、本編と変わらずどこか抜けている。 リリーも育った環境が違えばこうなっていたんだろうか。 スピンオフでは、普段は見られないプライベートの二人の生活が見られる。 性に目覚めたリーリヤが、すごくおもしろい。 中学生男子のような勢いで、性に結びつけていく。 そして言動は親なのに、見た目はちびっこのリリーもおもしろい。 ちなみに寄主のリリーは天使のようなかわいらしさ。 そしてリーリヤの顔はリリーそっくりで、さらに胸はリリーより大きく、背はリリーより高く、スタイル抜群。 ちなみにスピンオフ作家さんは、原作とそっくりな絵で連載されている方もおられるけど、この方は違うようだ。 デフォルメ風なテイストが、想像するための余白とコメディ感を強めてくれていて、そこがまた良い。 むしろ、この方の絵柄でないと、「ドタバタエロコメディ」でなく、すごく卑猥な作品になってしまっていたと思う。ほどよくシンプルってすごい。 アニメ化しているとのことで、原作を読んでみたらおもしろくて、検索したら出てきたこのスピンオフもおもしろかった。 兵器に意思は必要なのか、なんて哲学を忘れさせてくれる。 このリーリヤをみると、原作のほうで初めてリリーから出てきた時、ほんとにびっくりしたんだろうなと思えて、フフと笑ってしまう。<<7891011>>
カドコミがリニューアルされ、とても見やすく使いやすくなった今日このごろ。アプリのBOOK WALKERもこの調子で使いやすくして欲しいです。 そんなカドコミで短期集中連載されていたこちら。 作者のあらやかわいさんは「絶対天使」や「ゾンビは走らねえんだよ」などでも感情を迸らせる女子高生たちを描いていましたが、この『スーサイドエイジ』も、まさに自身が高校卒業する際に同人誌として描いたもののリメイクだそうです。 第1話 天真爛漫な合田さん 第2話 陸上部の松田さん 第3部 惰性に生きる田嶋さん 第4話 優等生の真田さん 第5話 学校嫌いな金子さんと刈谷さん 第6話 卒業式 という目次を見ていただければ解る通り、概ね1話ごとにメインでフィーチャーされるキャラクターは変わりながらも、同じクラスで共に過ごす女の子たちを描いた群像劇です。 まず、シンプルに絵に惹きつける力があります。スタイリッシュな作画で描かれる女の子たちが魅力的で、特に三白眼になりがちな眼力の強さが良い。個人的な好みで言うと、4話でチラシを配っている金子さんの横顔と、6話の包帯の子が特に好きです。 そして、「女子高生」という特別な3年間が終わるに際して生じるさまざまなものが入り混じって消化不良を起こしそうな感情を若々しさを迸らせながら表現しているのも良いです。人生において、その瞬間にしか湧かないものというのがありますが、この作品にはそれがしぬかりと込めてあります。普通の人であれば、記憶の中から時と共に少しずつ薄らいでいくであろうものがこうして作品として永遠に残る形で留められている。それは、他者が触れれば自身の記憶に呼応して何かしらを呼び覚ます契機にもなり、またいつか歳を重ねて自分で読んだときにはその貴重さを噛み締める類の素晴らしい営みであろうと思います。今の私には、この昏さが眩しいです。 作品の構成もまたとても良く、1冊で綺麗に完成しているのも美しいです。あれだけ楽しい時間を一緒に過ごした友人でも、その裏にあるものをまったく知らないこともあります。努力していた人。怠惰な人。真面目な人。奔放な人。他者に行っていたさまざまなラベリングのその裏は、もしかしたらこんなだったのかもしれないと思わせてくれます。 ウクライナやパレスチナにいる同い年の子の存在を思えば日本に生まれて毎日食べるものや水に困らず今この瞬間に命が消されることに怯えなくてもよく、さまざまな権利があるだけでも幸せなはずです。しかし、たとえひとつひとつ大きな不幸を消していっても残った小さい不幸の大小が隣の人と比べてほんの少しでも大きければ結局不幸だと思ってしまうのが人間。難儀なものです。人間はどこでも幸せになれるし、どこでも不幸になれる。若いころなんて特に今の自分が宇宙のすべてであるのもよく解ります。ああ、苦い。 キャラクターで言えば、容姿的にも関係性的にも金子さんと刈谷さんのエピソードなどはどうしたって好きです。ここを煮詰めたものなども一回描いてみて欲しいなと思うくらいには、短い中に良さが溢れていました。 あらやかわいさん、瑞々しくて初期衝動に満ちていて、これからますますたくさんの傑作を描いていくであろうことを確信できる1冊で今後が楽しみです。