熱帯魚は雪に焦がれる

寄り添う孤独と瀬戸内の光 #完結応援

熱帯魚は雪に焦がれる 萩埜まこと
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

愛媛県大洲市長浜を舞台とするこの作品は、井伏鱒二の小説『山椒魚』をモチーフとした作品でもある。 小説の〈山椒魚と蛙〉となぞらえられる、二人の女子高生。閉じ込められるのは、孤独という名の岩屋。そこは暗く冷たいが、二人の外に広がる光景は眩しい。 穏やかな瀬戸内海は、いつでも心を癒してくれる。高校の水族館部の魚や水生動物は愛らしい。そんな光景の中で、孤独を抱える二人はお互いの孤独を知り、不器用に身を寄せ、言葉を交わす。 寂しいという感情を持つ人が「寂しい」と人に告げる事の困難さが描かれ、これは私の物語だ、と思わされる。 しかし私は、その先の光景を知らない。 二人が「寂しい」を告げた、その先の光景はとてつもない煌めきに満ちていて、私は己が体験した事の無いそれを、少しの寂しさと、大きな喜びで眺める。 他にも所謂「優等生」が抱く重圧や孤独について、私の実感と非常に近い物があり、これが描かれた事で私も少し救われた気がした。 二人の関係性に恋愛だの友情だの、区分をつけようとすると最後まで混乱するだろう。この二人はこの形なのだ。そんな事よりも、暗い孤独に共鳴する全ての人に柔らかな光を見せてくれるこの物語を、そのまま丁寧に享受したい。

夫がいても誰かを好きになっていいですか?

衝撃のラスト

夫がいても誰かを好きになっていいですか? ただっち
六文銭
六文銭

某ニュースサイトで連載されており、先が気になりついつい丸ごと読んでしまいました。 内容はタイトルどおりで、専業主婦の主人公が、アルバイトで知り合った同僚に心をひかれていく話。 夫婦(特に夫は)基本無干渉なところがあり、妻が夜遅くなったりしても、その異変に気づかないため、そこまで波風たたないまま展開されます。 そう・・・この波風たたないことに若干の違和感があったのですが、 最後が衝撃的とともに、納得した次第であります。 あまりに衝撃的すぎて、おもわず、「え?これで終わり?」みたいな、何度も見直してしまいました。 (続編あるのかな・・・) 少女漫画のドラマチックな展開とは異なり、 淡々と続く日常で、空いた穴を埋めてくれるやさしさとか、 そしてそれにあらがえない様は、読んでいてとにかくリアルです。 夫婦だって一人の人間!とか、最近よく聞きますが、 〇〇だって一人の人間ってパワーワードっすよね。 このワードの何やっても肯定され、許されちゃう感じは気をつけないとなぁと痛感してます。 人間どこまでも、易きに流れてしまうので、 その反面教師としても、参考になる作品でした。 一人の人間って、 人間なら、安易なほうに流れるのではなく、理性でとどめて、知性をもってしっかりとコミュニケーションとったほうが吉だと思いました。 と、そんなことを考えるくらい、刺激的な作品でした。

ヤンデレ彼女に眠らせてもらえない話

タイトルで判断しないほうがいい

ヤンデレ彼女に眠らせてもらえない話 くすのき
六文銭
六文銭

ヤンデレ属性って、嫌いじゃないんですよ。 病的なまでの恋愛感情が、一周回って魅力的にすら感じるんです。 んで、本作のタイトル 「ヤンデレ彼女に眠らせてもらえない話」 あーなるほど、ヤンデレ彼女から深夜でも連絡がとまらず、 眠れないって話ね。 なるほど、、、、、 いいじゃないの! と脳内シナリオを完成させて、読んでみました。 内容は、交通事故にあって亡くなった主人公が、彼女(ヤンデレ)の能力によって、クマのぬいぐるみに憑依させられたという話。 そう、彼女はヤンデレだけでなく「いたこ」でもあったのだ。 ・・・ちょっと何いっているかわからないかもしれませんが、自分も初見のときはびっくりしました。 あ、霊だから? 霊だから眠れないって、そういうこと?  みたいな。 ただ、全体的にヤンデレ要素はちゃんとあって、 クマのぬいぐるみであっても、主人公への狂愛はかわらず、結界をはって動けなくしたり、または生前の付き合いまで根堀葉掘りとチェックしていくなど進んでいきます。 全体的に、コメディタッチで明るい部類のヤンデレだと思います。 物理的といよりは、霊的?な話ので驚きましたが、まぁ、これはこれでアリかなと読みすすめていましたが、 最後の最後で、また、 え? ってなりました。 1巻完結なようで、これで終わりってマジか・・・となってます。 色々、想像の斜め上をいってくれる作品でした。

ノラ猫の恋

濃密なストーリーで最後はしっかりまとまる良い全2巻

ノラ猫の恋 長野香子
nyae
nyae

Fellows! で連載してる時に読んでいたけどなぜか結末を知らなかったので改めてコミックスで読んでみた。正直、連載時は絵柄がそんなに好みじゃないなと思って読んでいたけど、今はとくに気にならなかった。 主人公の女子高生・ななが、失踪した父親・宗一郎を探しに東京から青森まで出向くと、そこで同じく父親を探している後輩を名乗る男性・サワと、元恋人を名乗るオカマ(あえてここではこう呼ぶ)・キヨシと出会って…という話。 ななの父親・宗一郎がどんな人間だったのかは少しずつ少しずつ明かされてゆきながら、しかしそれぞれが持つ宗一郎と過ごした記憶は三者三様で、人物像が固まらないまま進んでいく。 なぜ宗一郎は消えたのか、サワは何者なのか、などミステリーな要素もありつつ、都会にはない田舎独特な空気感も鬱陶しいくらいにリアルに描写されていると感じます。とくに、物語が進むにつれ変化していく3人の関係性が読みどころ。 最初に結末まで知らなかったと書きましたが、こんなに全2巻でしっかり濃密なひと夏の出来事を描いた作品とは知らず、もっと早くちゃんと読んでいたらよかったなと思いました。あまりコンスタントに作品を発表しているイメージがない作家さんですが、最近青騎士に読切が載っていたりしたので今後またいろんな作品が読めることを期待したい。