青林工藝舎マンガの感想・レビュー16件『ヤナギホールで会おう』感想ヤナギホールで会おう ユズキカズ名無しユズキカズというと、つげ義春に影響を受けた知る人ぞ知るガロ系漫画家。 最近出たこの新刊が初読みだったんだけども・・・ これまた、意外にスケベな話が多い(笑) 初出がガロではなく昔のパチンコ漫画雑誌や今は亡き「みこすり半劇場」なので それもそうか つげ作品のユーモラスな部分を全編に渡って展開したらこんな感じになるのかな?つげフォロワーで言うなら絵・話ともに畑中純の『まんだら屋の良太』のノリを想像すれば大体合ってるものと思う 話によっては絵が濃すぎる(アロエ売りの回などエロ劇画かよってレベル)けど、南国的な昭和ノスタルジーと清涼感は確かだ。「アックス」vol.154(2023)感想アックス アックス編集部名無しアックスはたまに買っているのだが、ここであまり感想を見ないので ちょっとそれらしいのを書いてみようの巻。 2023年154号で表紙になっている森口裕二と逆柱いみりの往復書簡で、逆柱が「グローバルな活動」を視野に入れて性器の描写を修正している・・というのが面白かった。しかし海外で逆柱作品を読もう人がそんな点を気にするかはやや疑問だぜ。 前号に引き続き掲載の、ツージーQ「青いレインコート」後編は貧しい女性のきらきらしていない暮らしと心のひだを丁寧に描いていて、まさに王道のガロど真ん中を射抜いてくる。暗い話なのだが、どこか明るさがあってその形作る叙情にじーんとくる。めっちゃイイ。本作が、この号では一番良かった。どんな感じか気になる人もいると思うので47ページ(と46ページの一部)を引用する。 髙山和雅の「機械仕掛けのツァラトゥストラ」も後編。全裸のキャラがこれでもかと出てくる趣味全開な思弁・バイオレンスSFで、ややオープンエンドぽい終わり方も許せるぐらいの勢いを感じさせます。しかしこれ続くのかな? ほか、三本義治の哀愁に満ちたヤクザ介護漫画「ヤ・ク・ザ」堀道広のオムニバス「月刊どうすれば」9話、そして具伊井戸夫の「消えたウナギ」が印象に残った。 次号は駕籠真太郎特集。想像以上に平田弘史を感じられたおれは短大出 堀道広starstarstarstarstarかしこ題字を平田弘史先生が描かれたことで話題になりましたね。どこの大学にも受からなかった歩留よしおが惰性で短大に入学する物語です。1984年の富山県が舞台なのは作者本人の経験がベースになっているからでしょう。あとがきによると8年も連載していたそうなので話によって面白さにムラを感じることもありましたが、どんな話もあの題字があると傑作に感じられるのですごいです。ラストも平田弘史先生の助言により決めたそうですが、結果として平田イズムを感じられるラストになっているのではないでしょうか。普通のギャグ漫画だと思って読まずにいたことを後悔しました!反省!一家に一冊あるといいと思う改訂版 ねじ式 つげ義春作品集 つげ義春starstarstarstarstarかしこつげ義春の作品をまとめてちゃんと読んだことなかったので面白かった。有名な「紅い花」とか「ねじ式」はもちろん読んだことあったけど、旅ものはほとんど読んだことがなかったので、ようやくつげ義春を知った気分になれた。特に「長八の宿」がすごく好きでした!!ジッちゃんが温泉から富士山が見えることを説明するシーンが好きすぎるんですけど!! あとこの作品集は雑誌掲載時と同じサイズで読めるので、つげ義春の描く背景がいかに味があってよいものかしみじみと分かります。それから年表が付いてるのでつげ義春がめっちゃ引っ越し&湯治してるって本当なんだ!って思いました。息子に買い与えたファミコンでスーパーマリオをクリアしたこともちゃんと書いてあったし、ラストが2018年、81歳「一刻も早くこの世から消え去りたい気持ちが日々たかまるばかり」だったのがシビれたね…。 くそばばの詩シリーズに感動!山松 Very Best of Early Years 山松ゆうきちstarstarstarstarstarかしこマニア向けっぽい雰囲気ですが、巻末の作家と編集者の座談会インタビューを読むと「山松ゆうきちを味わったことない読者に届けたい」とあったので安心しました。「インドへ馬鹿がやって来た」を読んだ時も独特なバイタリティを持った人だな〜と思いましたが、初期作品はもっとダイレクトに作家の思考が反映されていますね。基本的に強い者が勝ち、弱い者が負け、貧乏人が金持ちになることは決してない…こういった現実は甘くないという容赦なさを痛快に描いているのが魅力です。ハッピーエンドになることはないけど読んでて悲しい気持ちにはなりません。特に「くそばばの詩シリーズ」がめちゃくちゃ面白くて、ばばあの健気さとたくましさに感動します。打ち手のばばあと釘師のじじいのプライドをかけたパチンコ対決は見ものです。YouTubeに上がってた昔のテレビ番組で岡崎京子が好きな漫画家は誰?と聞かれて「山松ゆうきち」と答えていて、本気なのかネタなのか観た当時は分からなかったけど、これを読むと現実のシビアさの捉え方とかそれにユーモアを混ぜるタッチとかがちょっと似てるかもなって思いました。現代の正統派ガロアイコン モリノダイチかしこ流れるような夜の風景が印象的な漫画です。芸術を志している学生の苦悩を描いた話でどれも一話完結なのですが、登場人物には繋がりがあったりしてみんな同じ大学の学生だということが分かります。作者の身の回りのことがモチーフになっていると思うのでどうしても私小説みたいな感じで受け取ってしまうのですが、だからこそ往年のガロの名作達に近いものを感じました。でもそういうガロの作品では不安や焦燥感を持った若者が何かしらのアクション(女の人とドロドロの恋愛したりとか…大人しそうに見えて血気盛んな感じ?)を起こしてたと思うのですが、「アイコン」の場合はそういうエネルギーが自分の内側に向かっていくのでよりセリフや線が少なく洗練された印象を持ちました。ちなみにタイトルの「アイコン」とはLINEのアイコンのことです。そんなことも含めて今っぽいガロだと思いました。 青林工藝社の漫画だから紙で買うしかないのでおかしなことを言ってしまうことになるのですが絶対紙で買え!それくらい装丁もカッコよかった。特にカバー下。池田貴というロッカーについてアイデン&ティティ32 みうらじゅんナベテツ※ネタバレを含むクチコミです。 私が初めて読んだ近藤ようこ先生の作品戦争と一人の女 近藤ようこ 坂口安吾かしこ表紙がすごくカッコよかったので手に取りました。内容は坂口安吾の小説をコミカライズしたものになります。原作小説が発表された当時はGHQから大幅に検閲された影響もあって評価はあまり高くなかったそうですが、近藤ようこ先生は2001年に講談社文芸文庫から出版されたGHQ無削除版を元に漫画にされているのでパンチがすごいです。まず「夜の空襲はすばらしい」から始まります。 戦時中にどうせ日本は負けるんだと思いながら生きていた男女がいて、二人は夫婦同然に暮らしてるんだけど、戦争が終わったらこの関係も終わるんだろうってお互いに心の中では思っている。女は貞操観念にダラしなくて、でも不感症で、男は全部を知っていて一緒にいたけど、戦争が終わりを迎えて…という話です。 読んでいて理解はしていると思うんですが言葉にするのが難しいですね。改めて読み返してみたら、あとがきに「青林工藝社に漫画化のアイディアを承諾してもらってから完成までに6、7年かかっている」と書かれていたのに驚きました。でも、こんなにすごいものはそれ程の年月がかかって当然だと思います。心地よい混沌と狂気の成長物語空の巻き貝 逆柱いみり名無し※ネタバレを含むクチコミです。内容と後書きにみる福満しげゆきの本領福満しげゆき初期作品集 娘味 福満しげゆきにわか初期作品なだけあって、さすがの濃度。なんか拗らせ感がすごくて、いい。様々な作品の原型となっているのがよくわかる作品集なのもポイント。なにより2ページにギッシリつまった後書きの陰鬱とした語り口は必見。福満しげゆきが癖になりかけてる人はぜひ 人生を読む短編集夕暮れへ 齋藤なずな名無し恐らくご自身と同年代を主人公に描かれているので、新しい作品になるほど登場人物も年を取り、内容も「老い」や「死」についてが中心になりますが、表現する力はよりイキイキとしているように感じます。 どの作品もまるで存在したかのようにリアルな人物描写なので、ストーリーというよりも人生を読んでいるようです。年齢や境遇によって読後の感想も変わると思うので、次に読み返した時に自分が何を思うのかも楽しみです。70年代の日常チュウチュウカナッコ あらいあきなかやまいかにも青林工藝舎さんっぽい良作 自分はこの空気感が好きで次の作品も含めて定期に読み返しています。 舞台は70年代ということで自分は影も形もなかったわけですが、作風とその時代のゴジョゴジョっとした感じが合っていると「思い」ます。 ストーリーに派手な動きがあるわけではないのですが、各話でのキャラクターの掛け合いが引き込まれます。 基本的に『静』の主人公 カナエカナコ 、『動』な福々軒の店長や常連たち 動な面々が話を動かし、静のカナコが止める ある種の形式美的なテンポがクスッとさせてくれます。 作者さんの続刊が無いなぁと思って調べてみたら、劇団員がメインの方だと知って、納得しました。 もう少し他の作品も読みたい作家さんの一人です大法螺吹の奏でる音楽トロイメライ 島田虎之介影絵が趣味島田虎之介、まず名前がとてもいいですね。 月刊ガロのあとを継いだアックスからデビューしている曲者なんですが、このひとはおそらく、資質的にはガロというよりは手塚治虫が主催したコムよりの正統派作家なんだと思います。白と黒のコントラストが特徴的な硬派なコマ作りもそうですし、何よりコマ作りにある種の照れがある。この照れというのは手塚治虫のヒョウタンツギを筆頭に、コム出身者は吾妻ひでおのパロディに受け継がれたような照れのことです。この方向性は、ガロのつげ義春を筆頭に身辺雑記的な小さな世界からマンガの境界線を探索しようとしたひとたちとはまったく異なるものだと思います。 そして何より、島田虎之介のマンガはとにかく風呂敷をひろげまくる。しかも、あたかも歴史的事実であるかのようなコマ内に出てくる情報がふつうにとんだ嘘であったりするんです。すなわち夢と希望にあふれているといいますか、冒険者的な突拍子のなさがあるんです。 まあ、とっつきにくい絵ではありますので、島田虎之助の入門編といたしましては、ブルボン小林名義のマンガ評論でも知られる小説家の長島有が主催した『長島有漫画化計画』のなかの『猛スピードで母は』がおすすめです。なお『長島有漫画化計画』には他にも、 萩尾望都「十時間」 衿沢世衣子「ぼくは落ち着きがない」 カラスヤサトシ「夕子ちゃんの近道」 100%ORANGE「女神の石」 よしもとよしとも「噛みながら」 フジモトマサル「ねたあとに」 陽気婢「エロマンガ島の三人」 小玉ユキ「泣かない女はいない」 うめ「パラレル」 島崎譲「THE BUNGO」 吉田戦車「ジャージの二人」 オカヤイヅミ「佐渡の三人」 ウラモトユウコ「サイドカーに犬」 河井克夫「タンノイのエジンバラ」 ら、埋もれさせるには勿体ない作品ばかりが目白押しですので是非ともゲットしていただきたい。 変人揃いだが、わりと楽しそうに生きてるおじさんたちそこらへんのおじさん物語 佐久間薫starstarstarstarstarウマタロ気の抜けたようなタイトルと表紙のおじさんたちの顔が気になり、本屋で買ってみたところ、これは面白いと思った。 そこらへんにいるような、そうでいないような、一癖も二癖もある変なおじさんたちが一話ずつ登場して、独特でマイペースな生き様を見せてくれる。 (ちなみに表紙ではおじさんが集合してるけど皆孤立してます) 展開がファンタジックすぎて、なんだかよくわからん話もあるけどそれも含め好き。 他人の家の雑草を刈りたがる「ボーボーおじさん」という、ほとんど妖怪か仙人のようなおじさんから、 生き辛さ、孤独を抱えるおじさんの話(「なめくじおじさん」「2個ずつおじさん」)もあり、登場するおじさんの幅が広い。 お掃除道具と会話する「ハッピーおじさん」、ハンドパワーで家事をこなそうととする「念力おじさん」、電柱や自転車の気持ちになりきる「イマジンおじさん」など、想像力でもって楽しそうに暮らしているおじさんたち。これは独身中年に差し掛かってる自分も共感する部分が多かった。 憎めないけど、ちょっと迷惑なタイプのおじさん(「センチメンタルおじさん」「案内おじさん」など)も登場。 実際にこういう近付きたくないおっさんいるな〜と思いながらも「自分もいつかこうなってしまうのでは…」という考えが頭をよぎってしまう。これは反面教師にしたい。 おじさんに(比較的)やさしい世界で、ホンワカとした絵柄なので全体を通して、明るい気分で読めた。 おじさん自身も、あまり自虐的になったり卑屈になることはなく、 「ありのままで生きてる」って感じなのが、 いいよな〜(いいよなおじさん) こんなにカッコイイ漫画は空前にして絶後ph4.5グッピーは死なない 林静一(とりあえず)名無し※ネタバレを含むクチコミです。言葉に表しがたい面白さ月喰ウ蟲 大越孝太郎片桐安十郎マンバ上でお薦めされたので取り敢えず読んでみたのですが、とても面白かったです。 何がって言われると難しいのですが、世の中の倫理的にほぼほぼタブーなことをやってるのに嫌悪感がそこまでないというか、繊細なタッチで描かれる美しい絵でこんな狂った世界を描かれたらたまないなぁと感じました。 まあ、人は選ぶでしょうが...
ユズキカズというと、つげ義春に影響を受けた知る人ぞ知るガロ系漫画家。 最近出たこの新刊が初読みだったんだけども・・・ これまた、意外にスケベな話が多い(笑) 初出がガロではなく昔のパチンコ漫画雑誌や今は亡き「みこすり半劇場」なので それもそうか つげ作品のユーモラスな部分を全編に渡って展開したらこんな感じになるのかな?つげフォロワーで言うなら絵・話ともに畑中純の『まんだら屋の良太』のノリを想像すれば大体合ってるものと思う 話によっては絵が濃すぎる(アロエ売りの回などエロ劇画かよってレベル)けど、南国的な昭和ノスタルジーと清涼感は確かだ。