月華美刃

ジャンプ式 平安風コズミックバトルファンタジー

月華美刃 遠藤達哉
mampuku
mampuku

 竹取物語をモチーフとし平安時代の日本のような舞台設定のファンタジーでありながら地球~月間を移動するハイテクノロジーを持つ近未来SFでもある。  月の世界の皇女であった主人公・カグヤは敵対勢力によるクーデターに巻き込まれ、皇女の証である宝剣を携え地球へと落ち延びる。その星は「穢星」と呼ばれ、月の重罪人が流される"流刑地"だった。というあらすじ。  精神的にも未熟だった主人公が幾たびの試練を乗り越えていくうちに使命に目覚めめきめきと頭角を現していくという、少年漫画としては割と王道な主人公像じゃないでしょうか(マキバオー、ナルト、東卍のタケミチなど)絵に関してはすごくジャンプの血が濃いなと感じました。デフォルメの仕方がバクマンによく似てます。  画力、世界観、キャラクター、どれを取ってもハイレベルですが、元ネタが中学古文で習う竹取物語だったり地球の重力に苦しんだりするのに一切の注釈や解説がないハイコンテクストぶり、衣服や装飾品の細やかな描き込みも含めて、週刊でなくウェブでもなくSQという雑誌に合っていたなと思います。「いとウザし」「マジあはれ」などのフレーズは中学生が喜びそうです。  絵やセンスがすごく好きな作家さんなので長編の新作が読みたいと思いながら6年が経ってしまった…

青のフラッグ

複雑に交錯する青春

青のフラッグ KAITO
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

ジャンプ+で隔週連載中。 高校生の性や恋、友情に関するものすごく繊細な部分を直接的な言葉に頼らずとても丁寧に描いている作品。 よくある高校生の青春ものかと思ったらもっともっと深いところまで連れていってくれる。 高校3年4月、太一は小学校からの幼馴染だがあまり話さなくなった人気者のトーマと、彼のことが好きな小動物系女子の双葉と同じクラスになり、変わりたいと願う双葉に協力することにしたのだが努力は空回り人間関係は複雑に絡み始める。 1話目からもしや、という布石が思春期の人間関係の中に丁寧に散りばめられていて、読み飛ばしてしまいそうな仕草や視線の中に恋心が織り込まれているから一コマも見逃せない。 男と女、男と男、女と女、恋と憧れと友情と混ざり合い交錯する。 この漫画の会話って実はすごくて、限りなくリアルな話し言葉になっているのがたまらない。 他の漫画だと今井哲也『ハックス!』や、ヤマシタトモコ作品に感じられる。 「んー・・」「「・・えっと・・あの・・あのね・・」 のような、呼吸の間やスッと言葉が出てこないときの感じを出すので、人によっては間延びして感じられたりだるくなる人もいるかもしれない。 でも僕は好きだ。 人と人の間、つまり「人間」の関係性をこれでもかと丁寧に描いている。 言葉にならない、できない感情を丹念にすくってくれる。 社会に蔓延る様々な生きづらさを高校生たちに背負わせてるが、そこに救いを見せてくれそうで期待してしまう。 終盤に近づいてきたようではあるが、どのように収束するのか楽しみだ。