エロチカの星

それは太古から未来まで人間に宿る普遍性 #1巻応援

エロチカの星 前野温泉
兎来栄寿
兎来栄寿

たっぷり65ページを使った初回を読んだ時、「これは熱い連載が始まった!」と感じました。 漫画家を志望しながら芽が出ないまま32歳になった主人公が、ある日酔い潰れている時に出逢った謎の美少女に 「童貞だからこそ夢のある魅力的なヒロインが描ける」 と見出され、二人三脚で伝説のエロ漫画家への道程を歩んでいく物語です。 第一話でとても良いなと思ったのが、ヒロインのよすがが語るエロ漫画の魅力。古事記の時代から現代に至るまで続いている文化であり、かつエロ漫画のジャンルとしての自由さを説くところは首肯しっぱなしでした。 よすがが語る通り、エロ漫画とは極めて自由なジャンル。それを体現するかのように、今年も『出会って4光年で合体』という怪作も世に出てきました。かつてエロゲーというジャンルが持っていた制約と、そこから生まれた名作が昨今のあらゆる作品にも大きな影響を与えていることとも通底しています。 日本人は、和歌からネット上の大喜利までそうですが、緩い縛りを設けてその中で自由な発想で遊ぶことに非常に長けた民族です。だからこそ、エロという唯一の縛りがあるエロ漫画というフィールドで、時に一般誌では花開くことのなかった才能も開花するのだと思います。 そして、何といってもマンガを描いて一番嬉しい瞬間、読んだ人が喜んでくれるところもしっかりと描写されているので、ニッチなテーマではありますが普遍的な感動や興奮もあります。ジャンルこそエロ漫画ですし、主人公が片や童貞、片や美少女であることでそこに関係性の面白さも乗っかりますが、やっていることの根本は『まんが道』ですからね。 可能性に満ち満ちたエロ漫画というジャンルで、彼らが今後どんな驀進を、あるいは葛藤や障害の克服を見せてくれるのか。 「全人類勃起させるほどの大作を編み出してやるぞ!」 という、よすがの語る夢をどう実現していくのか。そして、二人の関係性はどうなっていくのか。とても楽しみです。

アニメタ!

元アニメーターがアニメ業界を描く、胸アツマンガ

アニメタ! 花村ヤソ
六文銭
六文銭

アニメ好きの主人公が高校卒業とともに、とあるアニメーション会社に就職。 他の新卒メンバーよりもうまくない、手が遅いなかで、人生を変えたアニメの感動を情熱に変えて成長していく物語。 端的にいって、めっちゃ胸アツだし、こういうクリエイターなどモノづくりに関わる人間の作品は大好物なので、本作もツボでした。 特に、技術はなくても情熱のある主人公が、上司のアドバイスをもとに、自分のなかで昇華し成長していく過程が応援したくなり、うまくできたときの喜びは共感しかないです。 作者自身が元アニメーターということもあって、新人のつまずきポイントや、ダメな例や良い例などの理由が明瞭で説得力があります。 また、どういうところを意識して描くのかを知れるのも、漫然と絵をみているだけの人間には興味深いです。 また、アニメ業界の闇深さ(原画1枚単価の低さ、時給に換算するとヤバイとか)も、しっかり描いていて、単純な夢物語やサクセスストーリーになっていないのも、個人的にはポイント高いです。 やりがいや情熱ではどうにもならないところもしっかり伝えて、その上でやるのか?やらないのか?の決断をするのは、知らないで決断するそれとは腹のくくりが違いますもんね。 自分はアニメ好きなのですが、同時にプロスポーツ選手同様、技術に差がある世界でもあって、一部のクオリティの高い作品や才能ある人間に寄ってしまう部分はしょーがないと思っています。 『これ描いて死ね』の「☆野 0」の担当編集だった金剛寺さんが言っていた 「同情は創作の敵だと考えます。」 (『これ描いて死ね』2巻参照) という言葉がピッタリあてはまって、アニメーターが食べていけないのにプロである以上同情するつもりはないのですが・・・ 業界の衰退具合も考えると、もう少しなんとかならんもんかね?とは常々思っています。 特に日本の優秀なアニメーターが海外にいってしまうとかのニュースをみると、危機感しかないです。 製作委員会方式のビジネスモデルが悪いのか、アナログで手間がかかりすぎているのか、ちょっと門外漢なのでわかりませんが、本作が、その切り口になってくれることを願ってやみません。 あとは、刊行速度が異様に遅いので(2023年7月時点の最新巻5巻が3年前・・・)、そこもなんとかならんのか?と願ってやみません。

僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~

女性用風俗のセラピストという仕事 #1巻応援

僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~ 水谷緑
nyae
nyae

最近、女性用風俗をテーマにした漫画が増えたなと感じていたけど、女性用風俗の店自体がコロナ禍をきっかけに急増したと書いてあり、そんなところにも影響があったことに驚きました。 「こころのナース夜野さん」を好きで読んでいたのもあり、同じ作者の新作として気になり読んでみました。 主人公のセラピスト(女性に直接サービスをするスタッフ)・悠はとても真面目に仕事に向き合っており好感が持てるものの、こういう人ばかりではないんだろうなと、風俗という業界である以上、警戒心は持ってしまいますね。一方で、女風きっかけで生活に様々な影響が出ている女性たちを見ると、コントラストの強い光と闇がある奥深い人間模様が描けるのは風俗業界特有の面白さだなと思います。 サービスをする側にも悩みはつきません。半年も持たないことが多いというセラピストの仕事を3年も続けている悠の今後も気になります。 ちなみに作者がこのテーマで漫画を描こうと思ったきっかけのひとつに渡辺ペコさんの1122があったといい、確かにいたな!と思い出しました。あまり詳しくないですけど、セラピストを重要なキャラに持ってきた1122って先進的な漫画だったのかなと思いました。