料理好き人見知りJK×釣り好きヤンキーJK、ボツから蘇ったガールミーツガールカワセミさんの釣りごはん 匡乃下キヨマサsogor25親の仕事の関係で東京から福岡の田舎に転校してきた女子高生・白梨翡翠(やまなし カワセミ)。料理好きな彼女だけど、持ち前の人見知り能力を遺憾なく発揮して調理部の門を叩くことすらできず、転校初日からぼっち生活まっしぐら。そんな中、見た目どう見ても田舎ヤンキーな同級生女子・魚取魚鷹(うおとり ミサゴ)に声を掛けられ、「ちょっと付き合え」と半ば強引に拉致られて連れてこられたのは山の中。死を覚悟したカワセミだったが、ミサゴが取り出したのはただの釣り竿。ということで、料理好き人見知り女子と釣り好き田舎ヤンキー女子とのガールミーツガール(?)から始まる作品。 ヤンキーっぽい雰囲気のミサゴが釣りに対してめちゃくちゃ詳しいというギャップもいいけど、人見知りだけど初めて体験する釣りに新鮮なリアクションを見せたり料理のことになると豹変するカワセミの一挙手一投足が面白くて、コメディとしてだけでもずっと読んでいられる作品です。 また、キャラの造形だけではなく、釣り上げた魚や料理、水面や風景まで、細かい部分の作画を丁寧に描いているのも注目すべき点の1つ。さらに福岡が舞台であることによる方言女子の要素や、ミサゴの家族から勝手に認定された公式百合要素まで、楽しそうな要素がたくさん詰まっていいます。 ちなみにこの作品、双葉社による"プロのための「セカンドオピニオン」"という企画によって連載にまで至った作品。この作品が一度でも企画が通らずボツになりかけたというだけでも驚きですが、それを見事に拾って頂いた双葉社と連載に至ってもこれだけ面白い作品を描き続けて頂いてる匡乃下キヨマサさんには感謝しかありません。 1巻まで読了。ファンタジーを具材にした料理のフルコース潮騒の魔女 もぐすsogor25悩みを持つ者がたどり着く、絶海の孤島にあるレストラン。店主である"魔女"はその客の悩みを"料理"にして提供してくれるという。そんな不思議なレストランとそこを訪れる様々なお客との1話完結形式の物語。 1話をまず読み始めると"悩みを食べる"という不思議なファンタジー設定がどういう意味なのかということに気を引かれるんだけど、1話を最後まで読むとこの話自体が"ファンタジー"を具材に新たな調理を加えて提供されたフルコースであることに気付かされる。 また、1巻を通して見ると、1話と同じ形式の作品もあれば最初からネタが明示されてて純粋な"魔女"とお客とのストーリーとして魅せる話もあり、1話完結の作品でありながら物語が始まるまでどういう展開になるのか読めない。だからこそ次はどんな話なんだろうと毎話楽しみになる。 ちなみに各話の終わりにはその話に登場した悩みを具材にした"料理"のレシピも掲載している。しかもそこはファンタジーじゃなくて実際に作れるレシピという丁寧さ。そういう点も含めて、いろんな意味で練り込まれた作品。 1巻まで読了ヤクザに少女マンガの真似事は難しい…?こいまん 井出圭亮sogor25"鬼の愛染"の異名を持つ日文組の若頭・愛染恭司。彼が一目惚れしたホステス・幸善子に「俺の女になれ」と詰め寄ったところ、幸善子は愛染にビンタして一言「お断りよ!わたし、"こいまん"みたいな恋がしたいので!」 "こいまん"とは今巷で大人気の少女マンガ「友達以上恋人未満」のこと。この日から幸善子"こいまん"みたいな恋に落ちさせるため、"こいまん"ファンの舎弟・ヤスの協力を得ながら"こいまん"の作中シーンを再現しようとする愛染の日々が始まった…という作品。 愛染のほうは幸善子を好きな気持ちに偽りはないものの、ヤクザらしく暴力で問題を解決しようとしたり心のなかでは欲望丸出しだったりと、少女マンガとは似ても似つかない人物。 一方の幸善子は普通の女の子かと思いきや、頭の中をかなり"こいまん"に侵されているのか、わりかし普段どおりのヤクザっぽい振る舞いをしている愛染に"こいまん"の主人公の姿を勝手に重ねて勝手に胸キュンしていく。最初に愛染をビンタした勢いはどこへ行ったのか、ただただちょろい。 そんな噛み合わない2人の関係が絶妙なご都合設定を駆使して上手く回っていく様子にはニヤニヤが止まらない。 そして、愛染を始めとした彫りの深い顔面の作画と"こいまん"のベタな少女マンガ展開とのギャップ、そしてそれが(主に幸善子の脳内で)重なり合うというアンマッチな感じが最高に面白い。舎弟のヤスや日文組組長・権三郎、幸善子とSNSで繋がった"こいまん"ファンの女子高生・康江と、サブキャラクターもおしなべて味付けが濃くていい感じ。雰囲気は「ヒナまつり」や「Back Street Girls」に近いので、このあたりのコメディ作品が好きな方にはオススメ。 しかしこうやって並べてみると"ヤクザ"と"コメディ"って案外相性が良いみたいですねw 1巻まで読了果たして誰の目に「わるいあね」として映っているのかわるいあね 三輪まことsogor25「私はかつて、実の弟を誘拐した。」というインパクトのある帯の文句が目につく作品。言ってしまうと"禁断の恋愛"を描いている作品ではあるのだが、"禁断"だからこそ"姉"と"弟"それぞれの内心の吐露が真に迫る。姉は弟を思うためか罪悪感からなのか弟を遠ざけようとするし、弟は真っ直ぐに姉を求めるているようで記憶の中の姉と再会した姉との間で悩み苦しんでいる。でもひとたび出会ってしまうと行動が思考を上回ってしまう。いろいろな思考が巡りながら、"人が人を愛することのどうしようもなさ"を見せつけられているような気がする。 そしてこの作品で特筆すべきなのは、主人公が"姉と弟の2人姉弟"ではないということである。姉である日向子と弟の夏樹、そして夏樹の"双子の妹"の瑞樹。禁断の恋愛ともなれば周囲からの批判の目に晒されるという展開も往々にしてあるが、その目が他でもない身内、しかも親ではなく同胞の中にいるという息苦しさ。夏樹と瑞樹、そして他でもない日向子本人、果たして日向子は誰の目に「わるいあね」として映っているのか。 1巻まで読了本当に伝えたい想いだけは上手く伝わらないようにできてた一端の子 深山はなsogor258篇からなる短編集の中に描かれているのは、自分の想いを相手に伝えられない女性たち。ある人は心の中で想いを叫び、ある人はまっすぐ言葉にして伝えたり、またある人は自分の想いに気付かず取り返しがつかなくなってから思い知る。そんな彼女たちのそれぞれの"愛"の物語。 登場人物の間で伝わらない分、彼女たちの想いが読者である私たちに重く圧し掛かってくる。250ページ超というボリューム以上に心にズシリとくる1冊。和装イケメンの書生さんがいる日常川越の書生さん 幹本ヤエsogor25舞台は小江戸川越、実家の芋菓子屋に戻ってきた女子大生・香南の目の前に現れたのは、見知らぬ和装イケメン・和数馬。そして唐突に始まる始まる2人の(実家での)同居生活。 小江戸横丁の町並みとハリセン代わりのふ菓子棒を背景に広がる、袴姿の書生さんがいる日常。ただ残念ながらここは埼玉、そう簡単にラブコメ展開になるわけがなく、実家に戻ってきた香南のやさぐれと川越のローカルネタ多めの構成でお送りするこの作品。 それでもなんだかんだで香南と和数馬の親密度は緩やかに上がっていき、その様子を微笑ましく見ていられる。というか和数馬がとにかく姿もメンタルもイケメンで、彼のことを眺めてるだけでも癒やされる作品。 1巻まで読了12世紀モンゴルを舞台に絡み合う史実とファンタジーフェンリル 赤松中学 大西実生子sogor25主人公は12世紀モンゴルのある部族の少年テムジン。彼が湖で「フェンリル」と名乗る美しい女性の姿をした"何か"と出会った所から物語は始まる。 世界史に明るい方なら"モンゴル"そして"テムジン"というキーワードである程度察するかもしれない(私は全くピンときてなかったけど(´・ω・`)) そんなテムジンが主人公の物語で、基本的には彼がその地を股に掛け躍動する大河ロマンなのだが、フェンリルの存在により、テムジンが当時ではあり得ないような知識を身につけていくことで徐々に史実から物語が分岐し始めてゆく。ファンタジーとフィクションに史実と現代の知識が折り重なり、先の読めない一大戦記へと物語が拡がっていく予感がある。 1巻まで読了フルカラー少女マンガメタコメディという新たなジャンルロマンティック・キラー 百世渡sogor25Q.ある日突然妖精のような魔法使いが現れて「あなたにイケメンとのラブ展開を与えるので少女マンガのような生活を送ってください、その代わり恋愛の妨げになるのであなたの好きなものは没収します」と言われたら? 主人公・杏子(ゲーム・チョコ・猫好き枯れ女子)の答え:「好きなもの没収されるならイケメンいらない!」 それを受けた魔法使いの回答:「うるせェ!ゲームもチョコも猫も全部ボッシュート!ついでに両親もボッシュート(アメリカに転勤)!」 ということで、強制的に一人暮らしが始まった杏子が好きなものを取り返すために妖精(が作り出したしたイケメンとの少女マンガ展開)と戦っていくという凄まじい設定のコメディ。 杏子も恋愛に全く興味がないという感じではないんだけど(まぁ乙女ゲーやってるし)、三大欲求(ゲーム・チョコ・猫)と比べたら重要度は段違い。一方の魔法使いも郵便局員の父親を海外転勤させるなど容赦なく魔法を使って包囲網を敷いてくる。 果たして杏子は三大欲求を取り戻すことができるのか?それともイケメンとの恋に落ちてしまうのか!? …と、冷静になるとどっちに転んでも杏子は幸せになれそうな気がしないでもないんだけど、「少女マンガ展開に必死に抵抗する」という設定が斬新で、杏子に感情移入しながら、でもつい笑ってしまいながら読み進めてしまう。 大枠で言うとラブコメになるのは間違いないんだけど、個人的にはどうしても"少女マンガ"自体をメタネタにしたコメディを狙って作ってるように見えるんだよなぁ。だって1話のサブタイトル「魔法設定なのに漢字が多いんだよっ」ですよ? 1巻まで読了絶望の中に描かれる果てしない希望片喰と黄金 北野詠一sogor25ゴールドラッシュ期のアメリカという混沌とした時代設定で、かつかなり絶望的な背景が見えるのに、登場人物たちがとにかく活き活きとしている。困難しか待ってないはずなのにこの2人の行く末が楽しみで仕方ない。 アイルランドからカリフォルニアを目指す冒険譚でもあり、その過程で出会いと別れを繰り返していくのだけど、そのどれもが1回限りの登場にするには勿体無いくらいにキャラが立っている。ある意味でこの時代で生きていく"厳しさ"すら感じられる展開。 ストーリー自体も勿論面白いんだけど、キャラの魅力が作品の魅力に直結するというのを実感させられる作品。 2巻まで読了。この作品、埋もれさせるわけにはいかない弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 神寺千寿sogor25姉の美羽と弟の蒼介は、両親の再婚で家族になった義理の姉弟。美羽には蒼介の紹介で知り合った西条くんというカレシがいて、蒼介は蒼介でお隣に住んでいる百華から好意を寄せられている。遠目から見るとお似合いない2組。ただ1点、蒼介が美羽に対して"異性としての好意"を抱いていることを除いては…。 この作品はいわゆる義理の姉弟の関係を含めた三角関係、四角関係の物語ですが、それだけに留まらない複雑な人間関係とその心情描写がこの作品の特徴です。 美羽は西条のことを彼氏として大事な存在として思っていつつ、蒼介に対しても姉弟以上の感情を抱えているというアンビバレンツな思いを内面に抱えていて、その感情の上にさらに「家族の関係を守りたい」という別の感情が蓋をすることで体裁を保っているという状態。なので蒼介から明らかに姉弟以上の関係を思わせるアプローチを受けても"姉としての振る舞い"に徹しています。一方、蒼介と西条はそれぞれ美羽のことを一途に想っているのですが、蒼介が西条のことを紹介したということからも分かるとおり、元々蒼介と西条は親友同士。そして西条と百華は美羽と蒼介が"義理"の姉弟であることを知らない。という、それぞれが内なる思いを隠したり、蓋をしたり、もしくは堂々と相手に伝えたりしながらどんどん複雑な方向へ進んでいくというのがこの作品です。それを神寺さんの繊細な絵柄とモノローグ多めの心情描写で丁寧に表現しているため、関係性の複雑さに比べてドロドロな感じはあまり受けず、純粋に登場人物に感情移入して読める作品です。 この作品、少女マンガ好きには是非オススメしたい作品なのですが、このクチコミをご覧の方で作品のことをご存じだった方はほとんどいらっしゃらないのでは無いでしょうか。 実はこの作品、松文館という出版社のガールズポップコレクションというティーンズラブレーベルから出版されている作品です。しかも、松文館から紙書籍で発売されている単行本はこの4年間でこの作品のみという状態で、そのため書店でこの作品に出会うことは非常に困難な作品となってしまっています。ティーンズラブのレーベルではありますが過激な描写はほとんどなく、少女マンガを読まれる方であれば広く楽しんでもらえる作品だと思うので、もしこのクチコミを見て興味を持って頂いた方は是非、まずは電子書籍からでも良いのでお買い求め頂ければ幸いです。 ちなみに先日、異例のフルカラー版単行本が電子書籍で発売されました。そちらももしよろしければチェックしてみてください。 5巻まで読了。sogor251年以上前私もすごい好きで続きを楽しみにしてたんですが、実は既に打ち切りになっていて、2巻も発売される予定がないとのことです。 今は成家さんの作品がもっと世間に注目されてどこかで連載が再開されることを祈るしかないですね… https://twitter.com/_71416/status/1048560037902213120?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1048560037902213120&ref_url=https%3A%2F%2Fanimanch.com%2Farchives%2F12900362.htmlまなかの杜成家慎一郎という天才はもっと世に知られるべき2わかる2600年の時を超えたアッシリアとギャルJKの邂逅ネオ・エヌマ・エリシュ マミーsogor25瞬間記憶能力を持つギャルJKが古代アッシリア帝国に飛ばされて王に見初められる、という設定盛り盛りな作品。 だけど一本芯が通っていて聡明なところも見せるギャル・英里のキャラクターと、巻末に記載された大量の参考文献で裏打ちされたオリエントの描写が不思議な相乗効果を生み出している。 ファンシーな絵柄で作品全体のリアリティラインが下がっているというのもあるけど、古代人の価値観と英里の熱血気味の性格がいい感じに好対照で、ギャルJKがアッシリアの王や戦士たちと対等に渡り合うという一見荒唐無稽な展開が作品としてしっかり成立している、意外な読み応えのある作品。 1巻まで読了 « First ‹ Prev … 26 27 28 29 30 31 32 33 34 … Next › Last » もっとみる
料理好き人見知りJK×釣り好きヤンキーJK、ボツから蘇ったガールミーツガールカワセミさんの釣りごはん 匡乃下キヨマサsogor25親の仕事の関係で東京から福岡の田舎に転校してきた女子高生・白梨翡翠(やまなし カワセミ)。料理好きな彼女だけど、持ち前の人見知り能力を遺憾なく発揮して調理部の門を叩くことすらできず、転校初日からぼっち生活まっしぐら。そんな中、見た目どう見ても田舎ヤンキーな同級生女子・魚取魚鷹(うおとり ミサゴ)に声を掛けられ、「ちょっと付き合え」と半ば強引に拉致られて連れてこられたのは山の中。死を覚悟したカワセミだったが、ミサゴが取り出したのはただの釣り竿。ということで、料理好き人見知り女子と釣り好き田舎ヤンキー女子とのガールミーツガール(?)から始まる作品。 ヤンキーっぽい雰囲気のミサゴが釣りに対してめちゃくちゃ詳しいというギャップもいいけど、人見知りだけど初めて体験する釣りに新鮮なリアクションを見せたり料理のことになると豹変するカワセミの一挙手一投足が面白くて、コメディとしてだけでもずっと読んでいられる作品です。 また、キャラの造形だけではなく、釣り上げた魚や料理、水面や風景まで、細かい部分の作画を丁寧に描いているのも注目すべき点の1つ。さらに福岡が舞台であることによる方言女子の要素や、ミサゴの家族から勝手に認定された公式百合要素まで、楽しそうな要素がたくさん詰まっていいます。 ちなみにこの作品、双葉社による"プロのための「セカンドオピニオン」"という企画によって連載にまで至った作品。この作品が一度でも企画が通らずボツになりかけたというだけでも驚きですが、それを見事に拾って頂いた双葉社と連載に至ってもこれだけ面白い作品を描き続けて頂いてる匡乃下キヨマサさんには感謝しかありません。 1巻まで読了。ファンタジーを具材にした料理のフルコース潮騒の魔女 もぐすsogor25悩みを持つ者がたどり着く、絶海の孤島にあるレストラン。店主である"魔女"はその客の悩みを"料理"にして提供してくれるという。そんな不思議なレストランとそこを訪れる様々なお客との1話完結形式の物語。 1話をまず読み始めると"悩みを食べる"という不思議なファンタジー設定がどういう意味なのかということに気を引かれるんだけど、1話を最後まで読むとこの話自体が"ファンタジー"を具材に新たな調理を加えて提供されたフルコースであることに気付かされる。 また、1巻を通して見ると、1話と同じ形式の作品もあれば最初からネタが明示されてて純粋な"魔女"とお客とのストーリーとして魅せる話もあり、1話完結の作品でありながら物語が始まるまでどういう展開になるのか読めない。だからこそ次はどんな話なんだろうと毎話楽しみになる。 ちなみに各話の終わりにはその話に登場した悩みを具材にした"料理"のレシピも掲載している。しかもそこはファンタジーじゃなくて実際に作れるレシピという丁寧さ。そういう点も含めて、いろんな意味で練り込まれた作品。 1巻まで読了ヤクザに少女マンガの真似事は難しい…?こいまん 井出圭亮sogor25"鬼の愛染"の異名を持つ日文組の若頭・愛染恭司。彼が一目惚れしたホステス・幸善子に「俺の女になれ」と詰め寄ったところ、幸善子は愛染にビンタして一言「お断りよ!わたし、"こいまん"みたいな恋がしたいので!」 "こいまん"とは今巷で大人気の少女マンガ「友達以上恋人未満」のこと。この日から幸善子"こいまん"みたいな恋に落ちさせるため、"こいまん"ファンの舎弟・ヤスの協力を得ながら"こいまん"の作中シーンを再現しようとする愛染の日々が始まった…という作品。 愛染のほうは幸善子を好きな気持ちに偽りはないものの、ヤクザらしく暴力で問題を解決しようとしたり心のなかでは欲望丸出しだったりと、少女マンガとは似ても似つかない人物。 一方の幸善子は普通の女の子かと思いきや、頭の中をかなり"こいまん"に侵されているのか、わりかし普段どおりのヤクザっぽい振る舞いをしている愛染に"こいまん"の主人公の姿を勝手に重ねて勝手に胸キュンしていく。最初に愛染をビンタした勢いはどこへ行ったのか、ただただちょろい。 そんな噛み合わない2人の関係が絶妙なご都合設定を駆使して上手く回っていく様子にはニヤニヤが止まらない。 そして、愛染を始めとした彫りの深い顔面の作画と"こいまん"のベタな少女マンガ展開とのギャップ、そしてそれが(主に幸善子の脳内で)重なり合うというアンマッチな感じが最高に面白い。舎弟のヤスや日文組組長・権三郎、幸善子とSNSで繋がった"こいまん"ファンの女子高生・康江と、サブキャラクターもおしなべて味付けが濃くていい感じ。雰囲気は「ヒナまつり」や「Back Street Girls」に近いので、このあたりのコメディ作品が好きな方にはオススメ。 しかしこうやって並べてみると"ヤクザ"と"コメディ"って案外相性が良いみたいですねw 1巻まで読了果たして誰の目に「わるいあね」として映っているのかわるいあね 三輪まことsogor25「私はかつて、実の弟を誘拐した。」というインパクトのある帯の文句が目につく作品。言ってしまうと"禁断の恋愛"を描いている作品ではあるのだが、"禁断"だからこそ"姉"と"弟"それぞれの内心の吐露が真に迫る。姉は弟を思うためか罪悪感からなのか弟を遠ざけようとするし、弟は真っ直ぐに姉を求めるているようで記憶の中の姉と再会した姉との間で悩み苦しんでいる。でもひとたび出会ってしまうと行動が思考を上回ってしまう。いろいろな思考が巡りながら、"人が人を愛することのどうしようもなさ"を見せつけられているような気がする。 そしてこの作品で特筆すべきなのは、主人公が"姉と弟の2人姉弟"ではないということである。姉である日向子と弟の夏樹、そして夏樹の"双子の妹"の瑞樹。禁断の恋愛ともなれば周囲からの批判の目に晒されるという展開も往々にしてあるが、その目が他でもない身内、しかも親ではなく同胞の中にいるという息苦しさ。夏樹と瑞樹、そして他でもない日向子本人、果たして日向子は誰の目に「わるいあね」として映っているのか。 1巻まで読了本当に伝えたい想いだけは上手く伝わらないようにできてた一端の子 深山はなsogor258篇からなる短編集の中に描かれているのは、自分の想いを相手に伝えられない女性たち。ある人は心の中で想いを叫び、ある人はまっすぐ言葉にして伝えたり、またある人は自分の想いに気付かず取り返しがつかなくなってから思い知る。そんな彼女たちのそれぞれの"愛"の物語。 登場人物の間で伝わらない分、彼女たちの想いが読者である私たちに重く圧し掛かってくる。250ページ超というボリューム以上に心にズシリとくる1冊。和装イケメンの書生さんがいる日常川越の書生さん 幹本ヤエsogor25舞台は小江戸川越、実家の芋菓子屋に戻ってきた女子大生・香南の目の前に現れたのは、見知らぬ和装イケメン・和数馬。そして唐突に始まる始まる2人の(実家での)同居生活。 小江戸横丁の町並みとハリセン代わりのふ菓子棒を背景に広がる、袴姿の書生さんがいる日常。ただ残念ながらここは埼玉、そう簡単にラブコメ展開になるわけがなく、実家に戻ってきた香南のやさぐれと川越のローカルネタ多めの構成でお送りするこの作品。 それでもなんだかんだで香南と和数馬の親密度は緩やかに上がっていき、その様子を微笑ましく見ていられる。というか和数馬がとにかく姿もメンタルもイケメンで、彼のことを眺めてるだけでも癒やされる作品。 1巻まで読了12世紀モンゴルを舞台に絡み合う史実とファンタジーフェンリル 赤松中学 大西実生子sogor25主人公は12世紀モンゴルのある部族の少年テムジン。彼が湖で「フェンリル」と名乗る美しい女性の姿をした"何か"と出会った所から物語は始まる。 世界史に明るい方なら"モンゴル"そして"テムジン"というキーワードである程度察するかもしれない(私は全くピンときてなかったけど(´・ω・`)) そんなテムジンが主人公の物語で、基本的には彼がその地を股に掛け躍動する大河ロマンなのだが、フェンリルの存在により、テムジンが当時ではあり得ないような知識を身につけていくことで徐々に史実から物語が分岐し始めてゆく。ファンタジーとフィクションに史実と現代の知識が折り重なり、先の読めない一大戦記へと物語が拡がっていく予感がある。 1巻まで読了フルカラー少女マンガメタコメディという新たなジャンルロマンティック・キラー 百世渡sogor25Q.ある日突然妖精のような魔法使いが現れて「あなたにイケメンとのラブ展開を与えるので少女マンガのような生活を送ってください、その代わり恋愛の妨げになるのであなたの好きなものは没収します」と言われたら? 主人公・杏子(ゲーム・チョコ・猫好き枯れ女子)の答え:「好きなもの没収されるならイケメンいらない!」 それを受けた魔法使いの回答:「うるせェ!ゲームもチョコも猫も全部ボッシュート!ついでに両親もボッシュート(アメリカに転勤)!」 ということで、強制的に一人暮らしが始まった杏子が好きなものを取り返すために妖精(が作り出したしたイケメンとの少女マンガ展開)と戦っていくという凄まじい設定のコメディ。 杏子も恋愛に全く興味がないという感じではないんだけど(まぁ乙女ゲーやってるし)、三大欲求(ゲーム・チョコ・猫)と比べたら重要度は段違い。一方の魔法使いも郵便局員の父親を海外転勤させるなど容赦なく魔法を使って包囲網を敷いてくる。 果たして杏子は三大欲求を取り戻すことができるのか?それともイケメンとの恋に落ちてしまうのか!? …と、冷静になるとどっちに転んでも杏子は幸せになれそうな気がしないでもないんだけど、「少女マンガ展開に必死に抵抗する」という設定が斬新で、杏子に感情移入しながら、でもつい笑ってしまいながら読み進めてしまう。 大枠で言うとラブコメになるのは間違いないんだけど、個人的にはどうしても"少女マンガ"自体をメタネタにしたコメディを狙って作ってるように見えるんだよなぁ。だって1話のサブタイトル「魔法設定なのに漢字が多いんだよっ」ですよ? 1巻まで読了絶望の中に描かれる果てしない希望片喰と黄金 北野詠一sogor25ゴールドラッシュ期のアメリカという混沌とした時代設定で、かつかなり絶望的な背景が見えるのに、登場人物たちがとにかく活き活きとしている。困難しか待ってないはずなのにこの2人の行く末が楽しみで仕方ない。 アイルランドからカリフォルニアを目指す冒険譚でもあり、その過程で出会いと別れを繰り返していくのだけど、そのどれもが1回限りの登場にするには勿体無いくらいにキャラが立っている。ある意味でこの時代で生きていく"厳しさ"すら感じられる展開。 ストーリー自体も勿論面白いんだけど、キャラの魅力が作品の魅力に直結するというのを実感させられる作品。 2巻まで読了。この作品、埋もれさせるわけにはいかない弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 神寺千寿sogor25姉の美羽と弟の蒼介は、両親の再婚で家族になった義理の姉弟。美羽には蒼介の紹介で知り合った西条くんというカレシがいて、蒼介は蒼介でお隣に住んでいる百華から好意を寄せられている。遠目から見るとお似合いない2組。ただ1点、蒼介が美羽に対して"異性としての好意"を抱いていることを除いては…。 この作品はいわゆる義理の姉弟の関係を含めた三角関係、四角関係の物語ですが、それだけに留まらない複雑な人間関係とその心情描写がこの作品の特徴です。 美羽は西条のことを彼氏として大事な存在として思っていつつ、蒼介に対しても姉弟以上の感情を抱えているというアンビバレンツな思いを内面に抱えていて、その感情の上にさらに「家族の関係を守りたい」という別の感情が蓋をすることで体裁を保っているという状態。なので蒼介から明らかに姉弟以上の関係を思わせるアプローチを受けても"姉としての振る舞い"に徹しています。一方、蒼介と西条はそれぞれ美羽のことを一途に想っているのですが、蒼介が西条のことを紹介したということからも分かるとおり、元々蒼介と西条は親友同士。そして西条と百華は美羽と蒼介が"義理"の姉弟であることを知らない。という、それぞれが内なる思いを隠したり、蓋をしたり、もしくは堂々と相手に伝えたりしながらどんどん複雑な方向へ進んでいくというのがこの作品です。それを神寺さんの繊細な絵柄とモノローグ多めの心情描写で丁寧に表現しているため、関係性の複雑さに比べてドロドロな感じはあまり受けず、純粋に登場人物に感情移入して読める作品です。 この作品、少女マンガ好きには是非オススメしたい作品なのですが、このクチコミをご覧の方で作品のことをご存じだった方はほとんどいらっしゃらないのでは無いでしょうか。 実はこの作品、松文館という出版社のガールズポップコレクションというティーンズラブレーベルから出版されている作品です。しかも、松文館から紙書籍で発売されている単行本はこの4年間でこの作品のみという状態で、そのため書店でこの作品に出会うことは非常に困難な作品となってしまっています。ティーンズラブのレーベルではありますが過激な描写はほとんどなく、少女マンガを読まれる方であれば広く楽しんでもらえる作品だと思うので、もしこのクチコミを見て興味を持って頂いた方は是非、まずは電子書籍からでも良いのでお買い求め頂ければ幸いです。 ちなみに先日、異例のフルカラー版単行本が電子書籍で発売されました。そちらももしよろしければチェックしてみてください。 5巻まで読了。sogor251年以上前私もすごい好きで続きを楽しみにしてたんですが、実は既に打ち切りになっていて、2巻も発売される予定がないとのことです。 今は成家さんの作品がもっと世間に注目されてどこかで連載が再開されることを祈るしかないですね… https://twitter.com/_71416/status/1048560037902213120?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1048560037902213120&ref_url=https%3A%2F%2Fanimanch.com%2Farchives%2F12900362.htmlまなかの杜成家慎一郎という天才はもっと世に知られるべき2わかる2600年の時を超えたアッシリアとギャルJKの邂逅ネオ・エヌマ・エリシュ マミーsogor25瞬間記憶能力を持つギャルJKが古代アッシリア帝国に飛ばされて王に見初められる、という設定盛り盛りな作品。 だけど一本芯が通っていて聡明なところも見せるギャル・英里のキャラクターと、巻末に記載された大量の参考文献で裏打ちされたオリエントの描写が不思議な相乗効果を生み出している。 ファンシーな絵柄で作品全体のリアリティラインが下がっているというのもあるけど、古代人の価値観と英里の熱血気味の性格がいい感じに好対照で、ギャルJKがアッシリアの王や戦士たちと対等に渡り合うという一見荒唐無稽な展開が作品としてしっかり成立している、意外な読み応えのある作品。 1巻まで読了
sogor251年以上前私もすごい好きで続きを楽しみにしてたんですが、実は既に打ち切りになっていて、2巻も発売される予定がないとのことです。 今は成家さんの作品がもっと世間に注目されてどこかで連載が再開されることを祈るしかないですね… https://twitter.com/_71416/status/1048560037902213120?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1048560037902213120&ref_url=https%3A%2F%2Fanimanch.com%2Farchives%2F12900362.htmlまなかの杜成家慎一郎という天才はもっと世に知られるべき2わかる
親の仕事の関係で東京から福岡の田舎に転校してきた女子高生・白梨翡翠(やまなし カワセミ)。料理好きな彼女だけど、持ち前の人見知り能力を遺憾なく発揮して調理部の門を叩くことすらできず、転校初日からぼっち生活まっしぐら。そんな中、見た目どう見ても田舎ヤンキーな同級生女子・魚取魚鷹(うおとり ミサゴ)に声を掛けられ、「ちょっと付き合え」と半ば強引に拉致られて連れてこられたのは山の中。死を覚悟したカワセミだったが、ミサゴが取り出したのはただの釣り竿。ということで、料理好き人見知り女子と釣り好き田舎ヤンキー女子とのガールミーツガール(?)から始まる作品。 ヤンキーっぽい雰囲気のミサゴが釣りに対してめちゃくちゃ詳しいというギャップもいいけど、人見知りだけど初めて体験する釣りに新鮮なリアクションを見せたり料理のことになると豹変するカワセミの一挙手一投足が面白くて、コメディとしてだけでもずっと読んでいられる作品です。 また、キャラの造形だけではなく、釣り上げた魚や料理、水面や風景まで、細かい部分の作画を丁寧に描いているのも注目すべき点の1つ。さらに福岡が舞台であることによる方言女子の要素や、ミサゴの家族から勝手に認定された公式百合要素まで、楽しそうな要素がたくさん詰まっていいます。 ちなみにこの作品、双葉社による"プロのための「セカンドオピニオン」"という企画によって連載にまで至った作品。この作品が一度でも企画が通らずボツになりかけたというだけでも驚きですが、それを見事に拾って頂いた双葉社と連載に至ってもこれだけ面白い作品を描き続けて頂いてる匡乃下キヨマサさんには感謝しかありません。 1巻まで読了。