この物語が"フィクション"ではない人に届いてほしい #1巻応援ON THE ROAD GIRLS ISAKAsogor25そこは田舎とも都会とも言えない、でもとても"閉鎖的"な町。男は外で稼いで来るのが仕事で、共働きだろうと女が家事育児をするのが当たり前、そんな今や化石のような前時代的な考えが蔓延る町。そんな町が嫌で東京に就職し、東京のしがらみの中で疲弊してまたこの町に舞い戻ってきた38歳の女性が主人公。 現代の感覚でいうと主人公の考え方はもっともらしく見えるのだけど、それはその町の"普通"とはあまりにかけ離れていて、そこに38歳という年齢、そして一旦町の外に出たにも拘らず戻ってくることになってしまったという状況が重ね合わさって、主人公の苦悩は重くなり、しかし打開策の選択肢は少ないという息苦しさが作品全体にのしかかってくる。痛々しいまでの心理描写が心をえぐってくる、でも目が離せない作品。 この作品のテーマとなる部分はかつての少女マンガでは大きな主題として存在していたのかもしれないが、最近では直接的に扱われることが少し減ってきているように思う。"男性性・女性性"という概念のに対する閉塞感の打破がゴールだったものが、そこから一歩外へと踏み出し、"多様性"というより自由度の高い問題に触れることができるようになってきてるのではないかと感じている。 私自身にとってもこの物語は"フィクション"で、主人公に感情移入はできるものの、この町の"普通"に現実感を得ることができずにいる。でも、この主人公と同じような悩みを抱えている、この物語が"フィクション"ではない人も間違いなくいるはずで、そういう人にこそ届いてほしいと思う作品。 1巻まで読了2組のバッテリー、4通りの可能性 #1巻応援クワトロバッテリー 高嶋栄充sogor25野球マンガにおいて、投手と捕手の一組・"バッテリー"は絶対のパートナーとして描かれることが多い。野球というスポーツの特性上、攻撃は全員参加なのに対し守備は投手の占める比重が異常に高く、投手及びサインを出して投球をコントロールする捕手は、個々の能力以上に2人の間に強い信頼関係がないと成り立たないからだ。では、そのバッテリーが1チームに"2組"いるとしたら、果たしてどうなるのか。 幼馴染で中学からバッテリーを組む投手の夏速一汰と捕手の虹村優多郎、そして2人とは別の中学で天才バッテリーとして名を馳せる投手の天宮地大と捕手の氷波蓮。この4人が同じ高校に進む所から物語が始まる。当然中学時代は個々のバッテリーしか知らなかった4人は、高校でそれぞれの人間性や才能に触れるうちに徐々に心境が変化していく。 夏速はコントロール度外視で誰よりも速い球を投げることに全てを懸けていて、それに幼い頃から付き合ってくれていた虹村に全面の信頼を置いている。 虹村は夏速に対して絶対の友情を感じてはいるが、抜群のコントロールを持つ天宮の球を受け、"配球"という捕手としての醍醐味を初めて感じる。 天宮は自分への絶対的な自信から中学の頃から氷波と対立していたが、氷波の能力を最大限に認めていて、自分と組むのは彼しかいないと思っている。 氷波も同じ思いではいたが、ノーコンの夏速の投球を自身の指導で劇的に改善させられたことから、夏速を教育して成長させることの楽しさを感じ始めている。 というように、元々が別々の2組のバッテリーだった4人が同じチームになることにより、いつのまにか一方通行の4人片思いのような状態となってしまっている。しかも、それぞれの気持ちのベクトルの原点が元々の信頼関係や選手としての能力、もしくは自己実現の楽しさのような感情であったりと様々。 この"一方通行の四角関係"が、本来投手も捕手も1人しか試合に出られない高校野球という舞台においてどういう化学反応を引き起こすのか、これまでの野球マンガでは見られなかったものが見られそうでとても楽しみな作品。 1巻まで読了。無機質のなかに"やさしさ"が感じられる物語 #1巻応援人間のいない国 岩飛猫sogor25その国には400年の間、人間がいなかった。そこには自律式人形(ゴーレム)のみが活動しているだけ。そんな国に現れた1人の少女・シイ。彼女には昨日までの記憶がなく、なぜか三角頭のゴーレムに追われている。追われる中で駆け込んだ電車の中で、同じく電車に乗っていたゴーレム・バルブに助けてもらったことから物語が始まる。 シイの出自はほとんど謎に包まれており、物語が進むにつれて本当に少しずつ明らかになっていく。そしてその中で、賢いながらも年相応の感受性を持ち合わせているシイと会話機能すらなく心を持たないはずのバルブとが交流を深めていく様に素直に心を打たれる。表情豊かなシイと本来無機質であるはずのバルブの交流の中に不思議と"やさしさ"が感じられる。ちなみにバルブには違法改造を施されていることを示唆する描写があり、もしかしたらバルブのほうも何か秘密を抱えているのかもしれない。 また、舞台となる国は人間がいないにも関わらず荒廃しているわけではなく、多くのゴーレムたちによりあたかも社会活動が保たれてるかのような雰囲気を見せる。それは人間がいなくなった後も"人間への奉仕"という指示をゴーレムが守り続けているためで、形だけの国が保たれているからこそもしかしたら本当の意味での"ポストアポカリプス"を描いているのかもしれない。その雰囲気だけでも是非感じて頂きたい作品でもある。 1巻まで読了史上最もコミカルな"魔女狩り"の物語 #1巻応援魔女のマリーは魔女じゃない 小林安曇sogor25時は16世紀。神聖ローマ帝国は"魔女狩り"の最盛期である。勿論処刑される者の中に魔女はほとんどおらず、本物の魔女は密かに身を隠したり上手く人間社会に溶け込みながら生き永らえていた。 主人公の魔女・マリーも森の中の小屋に1人で済みながら薬草を提供するなどして人間社会との関わりを保っていた。この作品はそんなマリーと彼女の身に迫る魔女狩りの危機の物語 …を限りなくコミカルに描いた"スラップスティック魔女ライフコメディ"である! そもそもマリーは自身のことを魔女だと思っていない。ただちょっと箒で飛べたり悪魔を召喚できたりするだけである。ちなみに彼女の言動にツッコミを入れてくれる相棒のナハトは"カラス"である。 その上でマリーは人間社会との関わりを極力保とうとする。一応身を隠すために礼拝に参列したりはするのだが、魔女の使いと言われる黒猫を助けたり箒を武器にしたりして自ら墓穴を掘っていく。 その軽いノリとキレのいいボケツッコミを繰り広げながら、魔女狩りなどのシリアスな設定はしっかりと守られていてそのギャップが楽しい不思議な雰囲気がある。果たしてマリーは魔女狩りを避けながら平穏な日常生活を守ることができるのか。乞うご期待! 1巻まで読了男4人と女の子、山あり谷ありなシェアハウス物語 #1巻応援4LDK 蛭塚都sogor25家出状態の18歳無職、エリート営業マン、夜の仕事のスカウト、ミステリー作家という4人の男、そして作家の小学生の娘の5人で暮らすシェアハウス。いろんなドタバタが巻き起こるアットホームなコメディ。…かと思いきや、登場人物の不穏な動きが少しずつ見えてくる。シェアハウスで暮らしているといえども人間である以上は何かしら人には言えない秘密を抱えているものだとは思う。だけど、どうも彼らの抱えている秘密は普通とは違うようである。 この一筋縄ではいかない物語を、硬軟自在の巧みな画力で描かれている作品。どのキャラも表情豊かで、コメディな場面では画面全体から明るさが感じられ、逆にシリアスな雰囲気のときはキャラの表情に一気に引き込まれる。個人的にはハルタ系の作品が好きな人には刺さりそうな気がしてる。 ちなみにタイトルには"シェアハウスの物語"という以外にちゃんと意味があって、実はヒントが表紙に隠されていたりする。表紙の上のほう、よく見てみると… ホラー?サスペンス?予想外の方向に進む"奇妙な同居生活" #1巻応援蠱毒の家【合本版】 iwosogor25電子書籍の新刊をチェックしていた時に見つけて、表紙に惹かれて購入。出版社も「コミディア」という聞いたことないけどちょっと引っかかる名前だったので調べてみると、「モッシュ!」という昨年できたレーベルの作品らしい。 https://mosh-comic.com/ なのであまり期待せずに読み始めたんだけど、これがとんでもなく面白い。 昆虫標本の収集が趣味の青年・蝶野が火事でその標本を自宅もろとも失ってしまい途方に暮れていると、そこに手を差し伸べてきた一人の男、昆虫学者の草薙出雲。草薙の厚意で彼が一人娘の當子と住まう洋館に宿泊させてもらえることになった蝶野だが、そこで蝶野は當子のある"秘密"を知ってしまう。 そこまでの展開はホラーっぽいんだけど、娘の秘密を知られた草薙は、加藤に危害を加えようとはせず、"共に暮らす"ことを提案する。こうして"秘密"を共有した3人の"奇妙な同居生活"が始まる。 まず、當子の正体の"秘密"が斬新で面白くて、ともすればこの設定だけで短編のホラーにできるんじゃないかと思う。さらにそこから、草薙のことをしつこく嗅ぎまわる警察官、草薙の助手をしていたが行方不明になった姉を探す少女と、サスペンスじみた人間関係が徐々に見えてきて、當子の"秘密"自体は1巻途中で明かされているのにどんどん謎が深まっていく感覚を覚える。加えて蝶野を始末せずに"共に暮らす"ことを選んだ草薙の真意という謎。おそらくそれらが全て複雑に絡んで結末の1点に収束するであろうと思うと、早く続きが読みたくて仕方ない。 1巻まで読了安心してください!鬱展開は(今のところ)ありません! #1巻応援能力 主人公補正 鬼頭莫宏 当麻sogor25見るからにモブキャラな高校生、その名も加藤凡(ぼん)。そんな彼が通学中に助けた妖精からお礼として"能力 主人公補正"をもらった所から始まる物語。 (通学中に妖精と出会ってる時点でもう主人公属性アリなんじゃないの?)と思う人もいるかもしれませんが、実際に読んでみると、"能力 主人公補正"を授かる前と後で明確に(具体的に言えば1話22ページから)加藤が主人公補正の恩恵にあずかって変わっていることがわかります。 そこから加藤の身に訪れるまるでマンガのような展開。こうして彼が主人公の学園ラブコメストーリーが始まる…と思ったら、さすがにそこまで旨い話ではなくて。だって一口に"主人公"と言ってもいろいろありますよね…? ただ安心してください!恋愛要素はちゃんとありますし、1巻の最後までドタバタで楽しい展開がずっと続きます!「原作 鬼頭莫宏」の名前に怯える必要はありません! 鬼頭さんが"主人公補正"という言葉を最大限に拡大解釈して紡いでいるストーリー、そこに緩急自在でクオリティの高い当麻さんの作画が加わり、誰にでも薦められるエンタメ作品に仕上がってます。 ※ なおこのクチコミは1巻発売時点のものです。2巻以降の展開については保証しかねますのでご了承下さい。好きなものを好きと言える世界 #1巻応援HGに恋するふたり 矢立肇 富野由悠季 矢立肇・富野由悠季 工藤マコトsogor2514歳の頃に初めて見た「機動戦士ガンダムSEED」に心を奪われた主人公の神崎さやか。しかし、周囲の友人がキャラクターの話で盛り上がるなか、彼女が惹かれたのはモビルスーツ。そんな気持ちを同級生にも話せないまま時間は過ぎ気付けば30歳。そんな彼女がある日、ガンプラ好きの女子高生、高宮宇宙(そら)と出会う。 まず心惹かれるのは、30歳のOLであるさやかと16歳の女子高生である宇宙が年齢を超えてて"好き"の気持ちで繋がっていること。「メタモルフォーゼの縁側」にも近い設定ではありますが、作中でも触れられてる通り、"16歳"というのはちょうど「ガンダムSEED」が放送されていた年に生まれた子ということ。つまり、相手が生まれる前から好きだったものを通して生まれる交流、これこそが本当の意味での"世代を超えた交流"なのではないでしょうか。 また、"世代を超えた"という意味でもう1点重要だと思っているのが、2人の"好きなもの=ガンダム"に対する接し方。好きな気持ちの強さは変わらないのですが、周囲にガンダム・モビルスーツが好きなことを話すことを躊躇っていたさやかに対し、宇宙のほうは初対面のさやか相手にさえ『お姉さんもガンプラ好きなんですかっ!?』と臆面もなく言い放ちます。好きなものが少数派だったときにそれを周囲に堂々といえないという気持ちは「トクサツガガガ」などでも描かれていますが、特に30代以上の人なら誰しもが経験しているものだと思います。それが、もちろん人に依るところもありますが、時代が令和に移ってマイノリティでも好きなものを好きと堂々と言えるようになった、そんな世代間の見えないギャップも描いているのではないかと思います。 作者の工藤マコトさんも「ガンダムSEED」から入ってガンダムが好きになった経緯があるとのことで、もしかしたら作者の実体験も多少なりとも入っているのかもしれません。そしてそんな作品をガンダムシリーズの専門誌であるガンダムエースで連載している、そんな奇跡的な繋がりにも感謝しつつ、ガンダム好きだけではなく、幅広く楽しんでもらえる作品だと思います。 1巻まで読了電子書籍だけなんて勿体ない、地下世界の冒険譚 #1巻応援夜ヲ東ニ アンギャマンsogor25その世界は明けることのない"夜"に満ちていた。人々は地下に広がる空間を拠点とし、日の光を識ることすらない世界で地下生物を狩猟して生活をしていた。 そんな地下世界を旅する青年・アナグ。彼は不思議な光を放つ"遺物"を頼りにあるものを探していた。それは旧世界の記録に遺されているだけで存在するかどうかも分からない、夜を終わらせることのできる"朝"と呼ばれる何か。 彼が地下生物に襲われているところを狩人の少女・ティオに救い出される場面から物語は始まる。 電子書籍のみで単行本が発売されている作品ではあるが、その利点を最大限に活かすかの如く、ランタンや炎という限られた光源のみが存在する地下世界をフルカラーで見事に描き出している。また、旧世代的な文明の中で"火の神"への信仰に由来する封建的な意識が人々の間に深く根ざしているという背景、それに個々に特殊な能力を宿す"遺物"というファンタジー要素が融合され、独特な世界観が生み出されている。 未知を求めて地下へと深く深く冒険するのが「メイドインアビス」ならば、作中世界では未知でも読者にはありふれた"朝"を探し求めて地下世界を冒険するのがこの「夜ヲ東ニ」という作品。冒険譚でありながら純粋な未知に対するワクワク感とは少し異なる、不思議な読後感を是非感じてみてほしい。 1巻まで読了ボーイ・ミーツ・ガールから始まる夢と冒険に満ちたファンタジー #1巻応援ほうき世界のアレアとイアラ 赤瀬よぐsogor25400年前に発明された"箒機関"という魔法科学によって発展した世界、図書館司書として働く本好きの少年・アレアはふとしたことをきっかけに歴史から忘却された"箒機関"を発明した伝説の魔女の名前を発見する。その名前"ERLA"を読み上げた瞬間、400年の時を越えてイアラが蘇り、アレアの目の前に姿を現したのだった…という場面から始まるボーイ・ミーツ・ガールストーリー。 そんな明るく楽しい希望あふれる物語…なのかと思いきや、ここから物語は急展開。イアラの代わりに伝説の魔女として歴史に名を残す魔女ヴィーゼの存在、魔法の使用を取り締まる政府特務機関ドライマギアの登場、そしてアレアの口から唐突に語られる「魔女狩り」の言葉。表紙の絵柄からは想像しなかった入り組んだ世界観が露わになります。 しかし!そんな世界のなぞを目の当たりにしても"本物の伝説の魔女"イアラの目に曇りは全くありません!この物語は、能天気で底抜けに明るい"伝説の魔女"イアラと歴史から隠匿された彼女の存在を世界に伝えると決心した少年アレア、2人の出会いから始まり世界を変えてゆく、夢と冒険に満ちた正統派ファンタジーです! 1巻まで読了"愛する地獄"と"愛される地獄" #1巻応援この愛を終わらせてくれないか 筒井いつきsogor25高校2年生の八河柚には"神様"がいる。現役高校生の速水瞬、現役高校生女優である彼女は柚の唯一無二の存在である。実は2人はクラスメイトなのだが、柚がスクールカーストの最下層にいる一方、瞬は仕事の合間の限られた登校日にもカースト上位の世木幸子らとともに過ごしている。だから柚にとって瞬は"近くて遠い神様"。そんな柚が、瞬と最も仲良く接している幸子と最悪の邂逅を果たすところから物語が始まる。 柚は幸子に対し日頃から抱いていた怨嗟の念をぶつけるが、そんな柚に対し幸子"誰かに愛される地獄"を教えてやろうかと凄む。その後、幸子との邂逅を契機として柚は瞬との距離を近くするのだが、瞬を神様と半ば崇めるように想い、またそれに対応して自らを卑下するため、自身の瞬に対する感情に苦悩することになる。 柚の"愛する地獄"と幸子の"愛される地獄"、そして作中ではまだ明確にされていない瞬の感情。3人の想いが複雑に混じり合って起こる化学反応、その先にあるのは幸子の言うように"地獄"なのだろうか。 最初この作品を読んだ時、公式でも"ラブストーリー"と銘打たれているにも拘らず、描かれているものが恋愛感情とは微妙に違うんじゃないかという感覚を覚えた。これに似た感覚は「アタシのセンパイ【電子版特典付】」を読んだ時にも感じたが、もしかしたらこの物語も同じようなベクトルに収束していくのではないかと思うと黒い期待が膨らんでしまう、そんな作品。 1巻まで読了"好き"なのに"気持ち悪い"感情、経験ありませんか? #1巻応援カエルになった王子様 我楽谷sogor25みなさんは「蛙化現象」という言葉をご存じでしょうか。自分から好きになった相手のはずなのに、相手からの好意を感じると逆に嫌悪感を抱くようになってしまう現象のことで、心理学会で発表された論文を元に生まれた用語です。現実では交際相手に対する"嫌悪感"のことを表していますが、嫌悪感だけでなく、相手のことが"蛙に見えるように"なってしまった女の子・三橋ハルのことを描いたのがこの作品です。 現実の「蛙化現象」もそうですが、この現象が起こる原因として"自己肯定感の低さ"というのが挙げられています。コレ自体は少女マンガ的には割とありがちな主人公像かもしれませんが、今作では「恋人と接している時間が苦痛になる」ところにまで行ってしまっています。悩みの原因に違いがありますが、"自己肯定感の低さ"を全力でコミカルに描いているのが『顔がこの世に向いてない。』であれば、"自己肯定感の低さ"を「蛙化現象」として表現し、それに立ち向かおうとする姿を描いているのがこの作品ではないでしょうか。同じくパルシィで連載されている「隣の芝生が青すぎる」などにも近いテーマを持っているように思います。 もしかしたらハルに共感できない方には全然よく分からない作品なのかもしれません。でも、嫌悪感を抱くまでいかなくても、恋愛の過程のどこかで自分のことを低く見てしまった経験のある方、自分と誰かを比べて劣等感を抱いたことのある方には激烈にぶっ刺さる、そんな作品なんじゃないかと思います。 1巻まで読了 « First ‹ Prev … 24 25 26 27 28 29 30 31 32 … Next › Last » もっとみる
この物語が"フィクション"ではない人に届いてほしい #1巻応援ON THE ROAD GIRLS ISAKAsogor25そこは田舎とも都会とも言えない、でもとても"閉鎖的"な町。男は外で稼いで来るのが仕事で、共働きだろうと女が家事育児をするのが当たり前、そんな今や化石のような前時代的な考えが蔓延る町。そんな町が嫌で東京に就職し、東京のしがらみの中で疲弊してまたこの町に舞い戻ってきた38歳の女性が主人公。 現代の感覚でいうと主人公の考え方はもっともらしく見えるのだけど、それはその町の"普通"とはあまりにかけ離れていて、そこに38歳という年齢、そして一旦町の外に出たにも拘らず戻ってくることになってしまったという状況が重ね合わさって、主人公の苦悩は重くなり、しかし打開策の選択肢は少ないという息苦しさが作品全体にのしかかってくる。痛々しいまでの心理描写が心をえぐってくる、でも目が離せない作品。 この作品のテーマとなる部分はかつての少女マンガでは大きな主題として存在していたのかもしれないが、最近では直接的に扱われることが少し減ってきているように思う。"男性性・女性性"という概念のに対する閉塞感の打破がゴールだったものが、そこから一歩外へと踏み出し、"多様性"というより自由度の高い問題に触れることができるようになってきてるのではないかと感じている。 私自身にとってもこの物語は"フィクション"で、主人公に感情移入はできるものの、この町の"普通"に現実感を得ることができずにいる。でも、この主人公と同じような悩みを抱えている、この物語が"フィクション"ではない人も間違いなくいるはずで、そういう人にこそ届いてほしいと思う作品。 1巻まで読了2組のバッテリー、4通りの可能性 #1巻応援クワトロバッテリー 高嶋栄充sogor25野球マンガにおいて、投手と捕手の一組・"バッテリー"は絶対のパートナーとして描かれることが多い。野球というスポーツの特性上、攻撃は全員参加なのに対し守備は投手の占める比重が異常に高く、投手及びサインを出して投球をコントロールする捕手は、個々の能力以上に2人の間に強い信頼関係がないと成り立たないからだ。では、そのバッテリーが1チームに"2組"いるとしたら、果たしてどうなるのか。 幼馴染で中学からバッテリーを組む投手の夏速一汰と捕手の虹村優多郎、そして2人とは別の中学で天才バッテリーとして名を馳せる投手の天宮地大と捕手の氷波蓮。この4人が同じ高校に進む所から物語が始まる。当然中学時代は個々のバッテリーしか知らなかった4人は、高校でそれぞれの人間性や才能に触れるうちに徐々に心境が変化していく。 夏速はコントロール度外視で誰よりも速い球を投げることに全てを懸けていて、それに幼い頃から付き合ってくれていた虹村に全面の信頼を置いている。 虹村は夏速に対して絶対の友情を感じてはいるが、抜群のコントロールを持つ天宮の球を受け、"配球"という捕手としての醍醐味を初めて感じる。 天宮は自分への絶対的な自信から中学の頃から氷波と対立していたが、氷波の能力を最大限に認めていて、自分と組むのは彼しかいないと思っている。 氷波も同じ思いではいたが、ノーコンの夏速の投球を自身の指導で劇的に改善させられたことから、夏速を教育して成長させることの楽しさを感じ始めている。 というように、元々が別々の2組のバッテリーだった4人が同じチームになることにより、いつのまにか一方通行の4人片思いのような状態となってしまっている。しかも、それぞれの気持ちのベクトルの原点が元々の信頼関係や選手としての能力、もしくは自己実現の楽しさのような感情であったりと様々。 この"一方通行の四角関係"が、本来投手も捕手も1人しか試合に出られない高校野球という舞台においてどういう化学反応を引き起こすのか、これまでの野球マンガでは見られなかったものが見られそうでとても楽しみな作品。 1巻まで読了。無機質のなかに"やさしさ"が感じられる物語 #1巻応援人間のいない国 岩飛猫sogor25その国には400年の間、人間がいなかった。そこには自律式人形(ゴーレム)のみが活動しているだけ。そんな国に現れた1人の少女・シイ。彼女には昨日までの記憶がなく、なぜか三角頭のゴーレムに追われている。追われる中で駆け込んだ電車の中で、同じく電車に乗っていたゴーレム・バルブに助けてもらったことから物語が始まる。 シイの出自はほとんど謎に包まれており、物語が進むにつれて本当に少しずつ明らかになっていく。そしてその中で、賢いながらも年相応の感受性を持ち合わせているシイと会話機能すらなく心を持たないはずのバルブとが交流を深めていく様に素直に心を打たれる。表情豊かなシイと本来無機質であるはずのバルブの交流の中に不思議と"やさしさ"が感じられる。ちなみにバルブには違法改造を施されていることを示唆する描写があり、もしかしたらバルブのほうも何か秘密を抱えているのかもしれない。 また、舞台となる国は人間がいないにも関わらず荒廃しているわけではなく、多くのゴーレムたちによりあたかも社会活動が保たれてるかのような雰囲気を見せる。それは人間がいなくなった後も"人間への奉仕"という指示をゴーレムが守り続けているためで、形だけの国が保たれているからこそもしかしたら本当の意味での"ポストアポカリプス"を描いているのかもしれない。その雰囲気だけでも是非感じて頂きたい作品でもある。 1巻まで読了史上最もコミカルな"魔女狩り"の物語 #1巻応援魔女のマリーは魔女じゃない 小林安曇sogor25時は16世紀。神聖ローマ帝国は"魔女狩り"の最盛期である。勿論処刑される者の中に魔女はほとんどおらず、本物の魔女は密かに身を隠したり上手く人間社会に溶け込みながら生き永らえていた。 主人公の魔女・マリーも森の中の小屋に1人で済みながら薬草を提供するなどして人間社会との関わりを保っていた。この作品はそんなマリーと彼女の身に迫る魔女狩りの危機の物語 …を限りなくコミカルに描いた"スラップスティック魔女ライフコメディ"である! そもそもマリーは自身のことを魔女だと思っていない。ただちょっと箒で飛べたり悪魔を召喚できたりするだけである。ちなみに彼女の言動にツッコミを入れてくれる相棒のナハトは"カラス"である。 その上でマリーは人間社会との関わりを極力保とうとする。一応身を隠すために礼拝に参列したりはするのだが、魔女の使いと言われる黒猫を助けたり箒を武器にしたりして自ら墓穴を掘っていく。 その軽いノリとキレのいいボケツッコミを繰り広げながら、魔女狩りなどのシリアスな設定はしっかりと守られていてそのギャップが楽しい不思議な雰囲気がある。果たしてマリーは魔女狩りを避けながら平穏な日常生活を守ることができるのか。乞うご期待! 1巻まで読了男4人と女の子、山あり谷ありなシェアハウス物語 #1巻応援4LDK 蛭塚都sogor25家出状態の18歳無職、エリート営業マン、夜の仕事のスカウト、ミステリー作家という4人の男、そして作家の小学生の娘の5人で暮らすシェアハウス。いろんなドタバタが巻き起こるアットホームなコメディ。…かと思いきや、登場人物の不穏な動きが少しずつ見えてくる。シェアハウスで暮らしているといえども人間である以上は何かしら人には言えない秘密を抱えているものだとは思う。だけど、どうも彼らの抱えている秘密は普通とは違うようである。 この一筋縄ではいかない物語を、硬軟自在の巧みな画力で描かれている作品。どのキャラも表情豊かで、コメディな場面では画面全体から明るさが感じられ、逆にシリアスな雰囲気のときはキャラの表情に一気に引き込まれる。個人的にはハルタ系の作品が好きな人には刺さりそうな気がしてる。 ちなみにタイトルには"シェアハウスの物語"という以外にちゃんと意味があって、実はヒントが表紙に隠されていたりする。表紙の上のほう、よく見てみると… ホラー?サスペンス?予想外の方向に進む"奇妙な同居生活" #1巻応援蠱毒の家【合本版】 iwosogor25電子書籍の新刊をチェックしていた時に見つけて、表紙に惹かれて購入。出版社も「コミディア」という聞いたことないけどちょっと引っかかる名前だったので調べてみると、「モッシュ!」という昨年できたレーベルの作品らしい。 https://mosh-comic.com/ なのであまり期待せずに読み始めたんだけど、これがとんでもなく面白い。 昆虫標本の収集が趣味の青年・蝶野が火事でその標本を自宅もろとも失ってしまい途方に暮れていると、そこに手を差し伸べてきた一人の男、昆虫学者の草薙出雲。草薙の厚意で彼が一人娘の當子と住まう洋館に宿泊させてもらえることになった蝶野だが、そこで蝶野は當子のある"秘密"を知ってしまう。 そこまでの展開はホラーっぽいんだけど、娘の秘密を知られた草薙は、加藤に危害を加えようとはせず、"共に暮らす"ことを提案する。こうして"秘密"を共有した3人の"奇妙な同居生活"が始まる。 まず、當子の正体の"秘密"が斬新で面白くて、ともすればこの設定だけで短編のホラーにできるんじゃないかと思う。さらにそこから、草薙のことをしつこく嗅ぎまわる警察官、草薙の助手をしていたが行方不明になった姉を探す少女と、サスペンスじみた人間関係が徐々に見えてきて、當子の"秘密"自体は1巻途中で明かされているのにどんどん謎が深まっていく感覚を覚える。加えて蝶野を始末せずに"共に暮らす"ことを選んだ草薙の真意という謎。おそらくそれらが全て複雑に絡んで結末の1点に収束するであろうと思うと、早く続きが読みたくて仕方ない。 1巻まで読了安心してください!鬱展開は(今のところ)ありません! #1巻応援能力 主人公補正 鬼頭莫宏 当麻sogor25見るからにモブキャラな高校生、その名も加藤凡(ぼん)。そんな彼が通学中に助けた妖精からお礼として"能力 主人公補正"をもらった所から始まる物語。 (通学中に妖精と出会ってる時点でもう主人公属性アリなんじゃないの?)と思う人もいるかもしれませんが、実際に読んでみると、"能力 主人公補正"を授かる前と後で明確に(具体的に言えば1話22ページから)加藤が主人公補正の恩恵にあずかって変わっていることがわかります。 そこから加藤の身に訪れるまるでマンガのような展開。こうして彼が主人公の学園ラブコメストーリーが始まる…と思ったら、さすがにそこまで旨い話ではなくて。だって一口に"主人公"と言ってもいろいろありますよね…? ただ安心してください!恋愛要素はちゃんとありますし、1巻の最後までドタバタで楽しい展開がずっと続きます!「原作 鬼頭莫宏」の名前に怯える必要はありません! 鬼頭さんが"主人公補正"という言葉を最大限に拡大解釈して紡いでいるストーリー、そこに緩急自在でクオリティの高い当麻さんの作画が加わり、誰にでも薦められるエンタメ作品に仕上がってます。 ※ なおこのクチコミは1巻発売時点のものです。2巻以降の展開については保証しかねますのでご了承下さい。好きなものを好きと言える世界 #1巻応援HGに恋するふたり 矢立肇 富野由悠季 矢立肇・富野由悠季 工藤マコトsogor2514歳の頃に初めて見た「機動戦士ガンダムSEED」に心を奪われた主人公の神崎さやか。しかし、周囲の友人がキャラクターの話で盛り上がるなか、彼女が惹かれたのはモビルスーツ。そんな気持ちを同級生にも話せないまま時間は過ぎ気付けば30歳。そんな彼女がある日、ガンプラ好きの女子高生、高宮宇宙(そら)と出会う。 まず心惹かれるのは、30歳のOLであるさやかと16歳の女子高生である宇宙が年齢を超えてて"好き"の気持ちで繋がっていること。「メタモルフォーゼの縁側」にも近い設定ではありますが、作中でも触れられてる通り、"16歳"というのはちょうど「ガンダムSEED」が放送されていた年に生まれた子ということ。つまり、相手が生まれる前から好きだったものを通して生まれる交流、これこそが本当の意味での"世代を超えた交流"なのではないでしょうか。 また、"世代を超えた"という意味でもう1点重要だと思っているのが、2人の"好きなもの=ガンダム"に対する接し方。好きな気持ちの強さは変わらないのですが、周囲にガンダム・モビルスーツが好きなことを話すことを躊躇っていたさやかに対し、宇宙のほうは初対面のさやか相手にさえ『お姉さんもガンプラ好きなんですかっ!?』と臆面もなく言い放ちます。好きなものが少数派だったときにそれを周囲に堂々といえないという気持ちは「トクサツガガガ」などでも描かれていますが、特に30代以上の人なら誰しもが経験しているものだと思います。それが、もちろん人に依るところもありますが、時代が令和に移ってマイノリティでも好きなものを好きと堂々と言えるようになった、そんな世代間の見えないギャップも描いているのではないかと思います。 作者の工藤マコトさんも「ガンダムSEED」から入ってガンダムが好きになった経緯があるとのことで、もしかしたら作者の実体験も多少なりとも入っているのかもしれません。そしてそんな作品をガンダムシリーズの専門誌であるガンダムエースで連載している、そんな奇跡的な繋がりにも感謝しつつ、ガンダム好きだけではなく、幅広く楽しんでもらえる作品だと思います。 1巻まで読了電子書籍だけなんて勿体ない、地下世界の冒険譚 #1巻応援夜ヲ東ニ アンギャマンsogor25その世界は明けることのない"夜"に満ちていた。人々は地下に広がる空間を拠点とし、日の光を識ることすらない世界で地下生物を狩猟して生活をしていた。 そんな地下世界を旅する青年・アナグ。彼は不思議な光を放つ"遺物"を頼りにあるものを探していた。それは旧世界の記録に遺されているだけで存在するかどうかも分からない、夜を終わらせることのできる"朝"と呼ばれる何か。 彼が地下生物に襲われているところを狩人の少女・ティオに救い出される場面から物語は始まる。 電子書籍のみで単行本が発売されている作品ではあるが、その利点を最大限に活かすかの如く、ランタンや炎という限られた光源のみが存在する地下世界をフルカラーで見事に描き出している。また、旧世代的な文明の中で"火の神"への信仰に由来する封建的な意識が人々の間に深く根ざしているという背景、それに個々に特殊な能力を宿す"遺物"というファンタジー要素が融合され、独特な世界観が生み出されている。 未知を求めて地下へと深く深く冒険するのが「メイドインアビス」ならば、作中世界では未知でも読者にはありふれた"朝"を探し求めて地下世界を冒険するのがこの「夜ヲ東ニ」という作品。冒険譚でありながら純粋な未知に対するワクワク感とは少し異なる、不思議な読後感を是非感じてみてほしい。 1巻まで読了ボーイ・ミーツ・ガールから始まる夢と冒険に満ちたファンタジー #1巻応援ほうき世界のアレアとイアラ 赤瀬よぐsogor25400年前に発明された"箒機関"という魔法科学によって発展した世界、図書館司書として働く本好きの少年・アレアはふとしたことをきっかけに歴史から忘却された"箒機関"を発明した伝説の魔女の名前を発見する。その名前"ERLA"を読み上げた瞬間、400年の時を越えてイアラが蘇り、アレアの目の前に姿を現したのだった…という場面から始まるボーイ・ミーツ・ガールストーリー。 そんな明るく楽しい希望あふれる物語…なのかと思いきや、ここから物語は急展開。イアラの代わりに伝説の魔女として歴史に名を残す魔女ヴィーゼの存在、魔法の使用を取り締まる政府特務機関ドライマギアの登場、そしてアレアの口から唐突に語られる「魔女狩り」の言葉。表紙の絵柄からは想像しなかった入り組んだ世界観が露わになります。 しかし!そんな世界のなぞを目の当たりにしても"本物の伝説の魔女"イアラの目に曇りは全くありません!この物語は、能天気で底抜けに明るい"伝説の魔女"イアラと歴史から隠匿された彼女の存在を世界に伝えると決心した少年アレア、2人の出会いから始まり世界を変えてゆく、夢と冒険に満ちた正統派ファンタジーです! 1巻まで読了"愛する地獄"と"愛される地獄" #1巻応援この愛を終わらせてくれないか 筒井いつきsogor25高校2年生の八河柚には"神様"がいる。現役高校生の速水瞬、現役高校生女優である彼女は柚の唯一無二の存在である。実は2人はクラスメイトなのだが、柚がスクールカーストの最下層にいる一方、瞬は仕事の合間の限られた登校日にもカースト上位の世木幸子らとともに過ごしている。だから柚にとって瞬は"近くて遠い神様"。そんな柚が、瞬と最も仲良く接している幸子と最悪の邂逅を果たすところから物語が始まる。 柚は幸子に対し日頃から抱いていた怨嗟の念をぶつけるが、そんな柚に対し幸子"誰かに愛される地獄"を教えてやろうかと凄む。その後、幸子との邂逅を契機として柚は瞬との距離を近くするのだが、瞬を神様と半ば崇めるように想い、またそれに対応して自らを卑下するため、自身の瞬に対する感情に苦悩することになる。 柚の"愛する地獄"と幸子の"愛される地獄"、そして作中ではまだ明確にされていない瞬の感情。3人の想いが複雑に混じり合って起こる化学反応、その先にあるのは幸子の言うように"地獄"なのだろうか。 最初この作品を読んだ時、公式でも"ラブストーリー"と銘打たれているにも拘らず、描かれているものが恋愛感情とは微妙に違うんじゃないかという感覚を覚えた。これに似た感覚は「アタシのセンパイ【電子版特典付】」を読んだ時にも感じたが、もしかしたらこの物語も同じようなベクトルに収束していくのではないかと思うと黒い期待が膨らんでしまう、そんな作品。 1巻まで読了"好き"なのに"気持ち悪い"感情、経験ありませんか? #1巻応援カエルになった王子様 我楽谷sogor25みなさんは「蛙化現象」という言葉をご存じでしょうか。自分から好きになった相手のはずなのに、相手からの好意を感じると逆に嫌悪感を抱くようになってしまう現象のことで、心理学会で発表された論文を元に生まれた用語です。現実では交際相手に対する"嫌悪感"のことを表していますが、嫌悪感だけでなく、相手のことが"蛙に見えるように"なってしまった女の子・三橋ハルのことを描いたのがこの作品です。 現実の「蛙化現象」もそうですが、この現象が起こる原因として"自己肯定感の低さ"というのが挙げられています。コレ自体は少女マンガ的には割とありがちな主人公像かもしれませんが、今作では「恋人と接している時間が苦痛になる」ところにまで行ってしまっています。悩みの原因に違いがありますが、"自己肯定感の低さ"を全力でコミカルに描いているのが『顔がこの世に向いてない。』であれば、"自己肯定感の低さ"を「蛙化現象」として表現し、それに立ち向かおうとする姿を描いているのがこの作品ではないでしょうか。同じくパルシィで連載されている「隣の芝生が青すぎる」などにも近いテーマを持っているように思います。 もしかしたらハルに共感できない方には全然よく分からない作品なのかもしれません。でも、嫌悪感を抱くまでいかなくても、恋愛の過程のどこかで自分のことを低く見てしまった経験のある方、自分と誰かを比べて劣等感を抱いたことのある方には激烈にぶっ刺さる、そんな作品なんじゃないかと思います。 1巻まで読了
そこは田舎とも都会とも言えない、でもとても"閉鎖的"な町。男は外で稼いで来るのが仕事で、共働きだろうと女が家事育児をするのが当たり前、そんな今や化石のような前時代的な考えが蔓延る町。そんな町が嫌で東京に就職し、東京のしがらみの中で疲弊してまたこの町に舞い戻ってきた38歳の女性が主人公。 現代の感覚でいうと主人公の考え方はもっともらしく見えるのだけど、それはその町の"普通"とはあまりにかけ離れていて、そこに38歳という年齢、そして一旦町の外に出たにも拘らず戻ってくることになってしまったという状況が重ね合わさって、主人公の苦悩は重くなり、しかし打開策の選択肢は少ないという息苦しさが作品全体にのしかかってくる。痛々しいまでの心理描写が心をえぐってくる、でも目が離せない作品。 この作品のテーマとなる部分はかつての少女マンガでは大きな主題として存在していたのかもしれないが、最近では直接的に扱われることが少し減ってきているように思う。"男性性・女性性"という概念のに対する閉塞感の打破がゴールだったものが、そこから一歩外へと踏み出し、"多様性"というより自由度の高い問題に触れることができるようになってきてるのではないかと感じている。 私自身にとってもこの物語は"フィクション"で、主人公に感情移入はできるものの、この町の"普通"に現実感を得ることができずにいる。でも、この主人公と同じような悩みを抱えている、この物語が"フィクション"ではない人も間違いなくいるはずで、そういう人にこそ届いてほしいと思う作品。 1巻まで読了