兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
『クノイチノイチ!』の金沢真之介さんによる新作です。 オンの時には同じ会社で働く社会人でありながら、 オフだとコテコテのロリィタ男子になる甘田奏太郎(あまたそうたろう)と オフだとゴリゴリのパンク女子になる阪久明(はんくあきら)。 そのふたりがお互いに秘密にしているオフの姿で出逢い、互いの正体には気付かず知り合っていく物語です。 「変身」と「ギャップ」は古来から少女マンガの花であり、時代を問わず人類の大好物であるもの。みんな大好きでしょう、こんなの。見た目は激強なふたりが、お互いに遠慮がちに距離を縮めていく初々しさがたまりません。そんな中で、誰にも言えない自分の本当の在り方を優しく肯定してもらえる瞬間など、心の中の赤ちゃんが「てーてー!」と泣き叫びます。 普段は物腰柔らかで優しいイケメンの奏太郎がロリィタ武装時して美少女になったときのかわいさや、普段は地味な経理のメガネ女子で無愛想な明がバッチバチにキメたときのカッコよさ。それらが、金沢真之介さんの絵力で強く押し出されてきます。 読切の「いっぱい出して♥淫魔のピンチ」なども含めてこれまでは結構エロの方に振ることも多かった金沢さんですが、エロなしでもシンプルにキャラのかわいさだけで十分蔵が立ちそうです。 奏太郎と明、ふたりの関係性の展開やそれぞれの奥底にあるものが気になります。
野愛
野愛
11ヶ月前
ありのままとか自分らしくとか一般論みたいに言ってみるけれど、それは自分が人間であることが揺るぎないと思っているから言えるんだろうなと思った。 ある日突然義父がネコであると主張し始めた。家族はボケとか冗談だと思っているようだけど、主人公のたかしだけはわかってしまった。 義父は本当にネコで、かつてたかしもネズミだった。 人間の姿でネズミのまま生きるのは難しく、押し殺してしまった自分。白い目で見られながらもネコとして堂々と生きる義父。 ネコのおじいさんとネズミのおじさんは漫画で見るとコミカルで切なくて愛おしいけれど、いざ目の前に現れたらどうだろう。家族がこうなってしまったら、自分がこうなってしまったらと考えると恐ろしくなる。 人間の世界は人間が生きやすいように作られているはずなのに、こんなにも生きづらい。 性別とか心身の健康とか年齢とか属性とかいろんな人がいるのは当たり前なのに、優秀で強靭なごく普通の人以外にはなかなか厳しい世界だ。 明日自分がネコだと気づいてしまったらネコらしく生きられるだろうか。自分はネズミですと家族に言えるだろうか。 チューと鳴いてる自分を認めてあげたいけど、できるかどうかはわからない。