兎来栄寿
兎来栄寿
10ヶ月前
『プリンセスお母さん』でお馴染みの並庭マチコさんによる主にスイーツを題材にしたギャグマンガ。 人目のないところでひっそりとおやつタイムを楽しむのが大好きな16歳の桃栗ちよ子の平穏が、甘いもの大好きヤクザの甘杉との出会いによって脅かされていく物語です。 ヤクザなのでたまに物騒なところもありますが、基本的に「明日もおシノギがんばろ!」くらいの緩いテンションでかわいく楽しく読めます。 古来のグルメマンガから存在する食べた瞬間のオーバーリアクションのマンガ的表現が、並庭さんらしいテンションで爆裂していてとても楽しいです。特に月餅を食べた時の凄まじいコマがお気に入りです。 また先日発売した『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉 アンソロジー 埼玉解放戦線調査報告書』でも、「幻影の飯能市」という短編を寄稿していた並庭さんですが、ただでさえギャグが面白いのにローカルネタが加わると鬼に金棒。 本作でも 第2話 うなぎパイvs.こっこ 第7話 「さわやか」のハンバーグ と、静岡に縁のある方ならタイトルだけで笑える2篇が最高です。 私自身もそれなりに静岡に縁があり、特に家族は生粋の静岡県民で「静岡最高!」という郷土愛溢れる民であり、こっこのCMソングを突然歌い出すタイプの人間なので人一倍楽しめました。 アンドロメダ銀河の星々に包まれながらうなぎパイの十字架に磔になっているシーンは最高です。 グルメマンガ誌らしく毎回スイーツの作画に気合が入っていてとてもお腹が空くので、読むタイミングにはお気をつけてください。 あと、御殿場アウトレットのさわやかは本当に8時間待ちとかになるので、基本的に入れないものと思って空いている店舗に行った方が良いです。
六文銭
六文銭
10ヶ月前
長年連れ添った料理上手の彼女。 その料理に対して、褒めつつも、余計な一言をいつも言う主人公。 全体的に茶色いとか、顆粒だしはありえないとか。 そんなこだわる割には、自分では料理なんてしたことすらないという体たらく。 この時点で昭和なオヤジでモラハラ感が満載なんですが、記念日に狙ったかのようにプロポーズをするも、彼女から 「んー無理」 とフラれる。(当然) そこから、自分の何が悪かったのか? を同僚のアドバイスを通して、変わっていこうとする話。 手始めに自身の好物である筑前煮をつくってみると、その難しさに発狂。 いつも彩り豊かに手際よくつくっていた彼女の偉大さに気づく。 そこから思い出を頼りに少しずつ自分でも料理をはじめていく流れ。 今まで自分の価値観で空気の読めない発言ばかりしていた主人公が、他者の価値観に触れて自分を見つめ直し改めていく姿が純粋に尊敬した。 年食うと、変わるのってホント大変だから。 また彼女がフッた理由も、主人公のモラハラだけではなく、意外と深い。 自分らしく生きたいと思いながらも、他人と折り合いをつけるのって難しいだけに、そこで誰もが悩むんだと思う。 読んでて自分自身も考え直すきっかけになった。 タイトルから最初読んだときは、ただのモラハラ男の別れ話かと思ったが、大事なもののために自ら変わろうとする人間の葛藤を描いていて、素晴らしかったです。