いさお
いさお
1年以上前
人はなぜスポーツをするのか? 簡単に見えるこの問いだが、全てのスポーツに通ずるような、真理となる答えを見つけるのは難しい。 人に注目されたいから? その答えは、マイナースポーツに対しては通じない。 ともに戦うことで他人と交流ができるから? その答えは、シングルスのスポーツに対しては通じない。 楽しいから? その答えは、確かに存在する、苦しいのにスポーツを続けている者らに対しては通じない。 冒頭の問いに対して、全てのスポーツに通ずる答えを求めるにあたって手がかりとなるのが、「100m走」であろう。 100mを走る。 道具は使わない。チームメイトもいない。速さを求めないなら、ほぼ誰にでもできる。あまりに単純で孤独に見えるスポーツ、それが100m走である。そんなスポーツで、日々最速の地位を求めて努力する選手がいる。 100m走に、彼らは何を求めるのだろうか?この極めてシンプルな、全てのスポーツの原型とも言うべきスポーツに通ずる答えであれば、それはきっと根源的で、真理に近いものであるだろう。 そしてその答えの真理性は、スポーツという枠組みを超えて、人生にまで通ずるものになるかもしれない。 すなわち、わたしたちは100m走を通じて冒頭の問いに思いをはせることで、こんな問いにも、少しだけ答えを垣間見ることができるかもしれない。 人はいずれ死ぬのに、なぜ生きるのか? という問いに。 主人公のトガシは小学生のころから足が速く、そのおかげで人気者でした。 しかし上に行くにつれて、日本トップレベルの速さまで手が届いたとしても、自分よりも速い人も現れるでしょう。 「一番足が速い人」という価値の維持のために人生の全てを捧げてきたのに、その価値が失われていくとしたら、その後、トガシの人生に残るものは何なのでしょうか? スポーツ漫画であり、哲学読本のような作品です。 ぜひ、その真理に触れてみてください。
なかやま
なかやま
1年以上前
シンガポール出身のフー・スウィ・チンさんの日本で最初の商業誌 出会いのキッカケは「弐瓶勉先生がウルヴァリンのアメコミを描いているらしいぞ!」と言うことでネットの通販サイトを観ていたら、たまたま隣に表示されていたことだったと思います。(十数年前のこと・・・ 当時はマーベルやDCでもない作品が翻訳される事など無いと思っていて、一生懸命 英語で読んでいたのが懐かしいです。 作品は、各話で変わる「人形のアナベル」の持ち主の女性を主人公とし、彼女たちが何らかの事件に巻き込まれていくことで話が進んでいきます。 後半は赤ずきんやシンデレラのおとぎ話をベースにした話に変わっていくので読みやすくなっていきます。 ただ、全体を通して後味が悪い話が多いため、人を選ぶとは思います。 自分がこの作品(作者さん)が好きなのは  日本人にはかけない絵柄で、日本人に読みやすいマンガの形で成立している という点です。 現在出版されている他の作品も魅力的ではありますが、彼女の作風がよく出ているという点では自分はこの作品を一番推しています。 絵柄が気になったら是非気にかけて頂きたい作家さんです。 とにかく日本で出版してくれてありがとうございます 何かのキッカケに 同人誌で描いていた muZz も出版されないかなぁ・・・ アレも良いんですよ・・・
六文銭
六文銭
1年以上前
「のぼうの城」や「忍びの国」で有名な和田竜の同名小説をコミカライズした作品。本屋大賞も受賞したヒット作です。 原作が小説って、とにかく難しいと思うんですよ。 活字で表現されたものって、人によって思い浮かべる情景が異なり、そこに第3者が介入してくると、どうしたって違和感を覚えると思うのです。 なんか思ったんと違う…的な。 だけど、これは別格でした。 ストーリーとしては、戦国時代、大坂本願寺を攻める織田信長に対し、毛利軍が「村上海賊」を使って援軍を送る…というお話。 村上海賊は、戦国最強とよばれる最大の水軍で、卓越した造船・操舵技術をもって信長軍と対峙します。 とにかく歴史もので大切な、ド迫力なシーンと人間ドラマが魅力たっぷりに描かれているのが特徴です。 大坂本願寺にいる、盲目的な信者たちの熾烈な戦闘シーン。 海上いっぱいに広がる圧倒的な船艇の描写。 正しいことだけでは通じない、血なまぐさい戦を通しての、主人公・景(キョウ)の成長。 逆境で魅せる、親兄弟・仲間との絆。 小説で体験したものとは、また違った形で、心に訴えかけてくれます。 原作知らない人はもちろん、知っている人も楽しめる1冊かと。 むしろ原作も読みたくなってきますので、良い作品とは相乗効果をもたらしますね。