六文銭
六文銭
1年以上前
自分は年食って大学入ったタイプで、なんなら真面目に勉強してやろうくらいな勢いでしたので、年齢面でも精神面でもこじらせた学生でした。 なので、この主人公には共感しかなかったです。 (ちなみに、勢いとはウラハラに勉強なんて一切しないまま無為に日々を過ごしました。合掌) 共感というか、もう自分か?と思ったくらい。 何不自由なくストレートで大学きた奴とか、付属が上がりとか、ホント くたばれ! と何度叫んだことか・・・。 彼らが親の金を溶かしながらも、真面目に勉強もせず(お前もな)毎晩チャラついている様や、大二病を発症して下北あたり(大抵ビレバン)を徘徊したり、ファイ○ルファンタジーのキャラみたいな服を着てる様に、虫唾がはしってました。 そして、何より最終的には要領よく超絶ホワイト企業に就職しちゃうとこまでセットで、今思い出してもハラワタが煮えくり返ります。 なんでだよ! 普段、布一枚みたいな服着てるクセに、 スーツじゃなくても良いと言われた就活面接でも、きっちりスーツ着てくんだよ! おかしいだろ!あの布着てこいよ、布! こういう時だけ、TPO弁えるなよ! と、まぁ罵詈雑言ならべたてましたが、学生時代にこんな陰キャな感情を抱いた人は是非読んでいただきたい。 共感とともに、あの日を自分を見ている感覚になります。 そして、当たり前ですけど、こういうところから人生で差がついて、一生陽キャには勝てないんだなと痛感させられます。 現実しかない!
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
『マーブルビターチョコレート』や「二番目の運命」、「マイハートドライバー」などの幌山あきさんが送る2作目の単行本です。 『マーブルビターチョコレート』のクチコミでも描きましたが、幌山(と書いて読み方は「ぽろやま」)さんの描くマンガは本当に良いです。ジャンプ+で掲載となった読切もそれぞれ内容は全然違いますが、ただ「良い」という部分だけはすべて共通しています。出版社を横断していますが、短編集なども出して欲しいですね。 さて、この『星屑家族』ですが、「親になるのが免許制」という社会を描いています。 作中でも、 「親……扶養者というのは子どもに対して  無自覚な強権を得ています」 と語られる通り、しばしばその権力をもって暴虐を振るう親が存在します。また、扶養者たる資格を持たず本人の意志もないまま実質的に扶養者となってしまうケースもあります。ひとつの命に対して責任を持つべき存在である扶養者に、資質や資格を問うべきではないのかという話はしばしば出てきます。もしそれを実現したら、という思考実験として秀逸です。 子供の姿をした「扶養審査官」が扶養者になりたい者たちをジャッジしていく様はなかなかのディストピア感ですが、実際にその判断を行う者・される者の間に生じる歪みや困難が非常に的確に描写されています。 扶養者の資格を得た人は「正しい」人とされる社会で、それを望まず審査に落として欲しいと望む男性の下での生活が営まれていきます。そこで芽生える様々な感情と振れ幅が見所です。 ネタバレせずに言えるとしたら、繰り返しになりますが幌山さんの描く作品群のこのテイストは本当に好きだなぁということです。ひとつひとつのセリフも冴えていて心の内に響くものが多くあります。 読み終えたとき、1,2巻の表紙を見比べながら改めてタイトルの意味を考え返しました。星屑、スターダスト。美しく、儚いもの。僕たちも星屑のかけらである地球から発生し、その血はいわば星屑の液体であると歌った曲もありました。簡潔にして、秀逸なタイトルです。 単行本が上下巻同時に発売となったのは、英断だと思います。上巻から1冊ずつ買うことを否定はしませんが、上下巻一気に買ってしまうことを強くお薦めします。