兎来栄寿
兎来栄寿
12ヶ月前
「カレー沢薫さん×劇画狼さん」 もう圧倒的に勝ち確でしょう。混ぜるな危険ですよ、面白すぎることが確定しすぎていて。 何をやっても面白くなりそうなお二方ですが、このお二方をして「いろんな作品の男キャラクターを語る」。はい、勝率400%を超えました。5打数10安打打つ全盛期のイチローもビックリの、チート付与魔術師も裸足で逃げるチートです。 この第1巻では 『THE KING OF FIGHTERS』の八神庵 『ガン×ソード』ヴァン 『HELLSING』ペンウッド卿 『忍者と極道』殺島飛露鬼 『ラーメン発見伝』芹沢達也 『シグルイ』藤木源之助&伊良子清玄 『鉄鍋のジャン!』秋山醤 『疾風伝説 特攻の拓』浅川拓 『どす恋ジゴロ』恋吹雪 『孤独のグルメ』井之頭五郎 『シティハンター』『エンジェル・ハート』冴羽獠 『刃牙』シリーズ 愚地克巳 『ゴールデンカムイ』月島基 『嘘喰い』佐田国一輝&目蒲鬼郎 『ザ・ファブル』佐藤明 について語られます。目次だけでこんなに面白いことあります? キャラチョイスも主人公だけでなく、絶妙なところを選んでいて堪りません。『HELLSING』のペンウッド卿や『嘘喰い』の佐田国&目蒲など、本当に絶妙なところをそれはそれは熱く語ってくださっています。 この全部を解る人がどれくらいいるのかは解りませんが、恐らくミリ知ら状態であったとしてもかなり楽しめるのではないかと思います。何せ、カレー沢薫さんと劇画狼さんですから。 担当編集者も八神庵が生まれた頃はまだこの世にいなかったと聞いて隔世の感がありますが、歴史上の人物よりはネットミーム化しているところもあってもう少し身近なキャラたちについて、独特の感性を惜しみなく披瀝しながら面白おかしく語っていく様子は最高です。 例として一箇所引用すると、『ザ・ファブル』の兄さんについて 「おっさんの母性本能を刺激しているところがある」 「…おっさんの母性本能?」 「男が魔法少女になる時代だ  おっさんに母性本能ぐらいあるだろ」 と語るカレー沢節全開のところなど大好きです。 全然知らない作品でも、この紹介をきっかけに読んでみようという気持ちが湧くのではないでしょうか。実際、劇画狼さんもカレー沢さんの目線で再読することにより新たな楽しみ方を発見するなどしており、これはもう立派な批評と言えるでしょう。 現代では、物語よりもまずキャラで作品に入る方も多いです。そういう意味では、本著で気になるキャラを見つけてそこから原作を読んでみるというアプローチが生まれることはとても素敵だなと思います。 なお、コミックス開いて数秒で「マイナー漫画・エロ劇画紹介ブログ『なめくじ長屋』はログインパスワードがわからなくなって休止」の文字列に笑わされました。去年話題になってた気がしたんですが未だに不明なんですね。「このマンガがひどい!」を読むのが年の瀬の楽しみだったのに残念です。 個人的にお二方に他に語ってみて欲しいキャラとしては、 『COBRA』のコブラ 『北斗の拳』のラオウ 『ジョジョ』のDIO 『魁!!男塾』の富樫 『聖闘士星矢』のデスマスク 『スラムダンク』魚住 『幽☆遊☆白書』の樹 『ヒカルの碁』の緒方 『はじめの一歩』の伊達 『今日から俺は!!』三橋 『クローズ』のリンダマン 『弱虫ペダル』の巻島 『ベルセルク』のグリフィス 『ジャンケットバンク』獅子神 『天』『アカギ』の赤木 『最強伝説 黒沢』シリーズの黒沢 『エアマスター』の坂本ジュリエッタ 辺りです。
兎来栄寿
兎来栄寿
12ヶ月前
もしも男勝りで元気潑剌なスポーツ少女だったポニーテールの幼馴染が、地元に帰って久々に会ったらピンク髪ピアスゴリゴリのギャル風になり性格も一変していたら。 冬馬と響子。 元々はお互いに兄妹のような気心の知れた存在だった幼馴染同士。 しかし、久々の再会を遂げた響子は以前とはまったくの別人のようになってしまっており、一体何があったのか、何が彼女を変えてしまったのかという謎を湛えながらも改めて距離を縮めていくふたりの物語です。 元々はTwitterでバズっていた作品で、そちらが元になって描かれた作品です。元々「幼馴染を描く」という指針があってスタートしたそうですが、幼馴染という関係性の特別さたるや否や。歳月の積み重ねが生み出すもののあはれ。幼馴染にしか出せない味わいをたっぷりと醸し出しながら、一歩一歩ステップを踏んでいく彼ら姿に胸が一杯になります。その描写が各シーンでとても丁寧でリアルなのが良いです。 人生においては考えられないようなことも起こりますが、それでも最終的に心の底から溢れ出る幸せで自然と笑みが溢れるような時間が訪れれば最高ですよね。タイトルや表紙から感じられる不穏さもありますが、その過酷さが幸せの光をより鮮明に引き立たせています。 冬馬と響子に幸あれ、と心の底から祈ってしまうような作品です。 帯にもカバー下にもおまけたっぷりですので、お見逃しなく。