かしこ
かしこ
1年以上前
装丁がぶ〜けコミックス風なのもとっても素敵!出版社が違うのに実現したのは松苗あけみ先生だからこそなんでしょうね。生い立ちから始まり、色んな漫画家さんのアシスタント経験談、連載秘話など、内容に関しては読み応えあり過ぎるくらいです!デビュー後もストーリー作りがなかなか出来なくて苦労したというお話はとても意外でしたが、松苗先生が謙遜してるだけで本当はそんなことないんじゃないのかな?という気もします。一条ゆかり先生のアシスタントをされていて一緒に旅行に行ったりするほど仲良しということはお互いの漫画にもよく描かれているので知っていましたが、内田善美先生ともお若い頃から交流があったとは驚きました。内田先生の作品は今だと普通に手に入れることは難しいし幻の作家さんだと思い込んでいたのでこんなに気さくな方だとは思いませんでした!内田先生のアシスタントさんが消失点を取る為に部屋いっぱいに紙を広げて奮闘しているシーンは感動しました。松苗先生ファンはもちろんのこと、熱意と努力によって生み出された華やかな少女漫画の歴史を知れる貴重な一冊です。
竹崎 伸司
1年以上前
本作のレビューでは、村上春樹のエルサレム賞受賞の卵と壁についてのコメントから、壊れやすい卵(人間)を、無慈悲なシステム(壁)から守るため、物語は語られるとの視点から、弱い人間を擁護する物語として、村上かつらさんの『淀川ベルトコンベアガール』が紹介されました。未読だった自分は慌てて、電書で全3巻を買い、直ぐ読み通しました。 高校に行かず豆腐工場で働く16歳のかよ。有名私立高校に通う中流家庭の那子。同じ高校のお嬢様で、那子も属するグループを率いる女王然としたエリカ。同世代の友達が欲しくてたまらないかよの工場に、アルバイトとして那子が入ってきて、物語が始まるのですが、経済的に大きな差はあれど、どの人物もそれぞれの事情を抱えており、過酷ともいえる現実の中でもがく彼女たちを安易に裁くことなく、作者のそれぞれの生への温かい眼差しが感じられる良作でした。 様々な危機を迎える終盤に対して、どの人物に対しても前向きで希望をもたらす変化や展望を与えるラストは清々しかったです。 批評が作品へと導く役割を担うものであるなら、本レビューは良い作品へと自分を引っ張ってくれました。
寸々
寸々
12ヶ月前
この漫画が描かれているのは数年前の韓国だが、2023年現在の日本でも、物流周りの深刻さは当時より一層厳しくなっている。 物流倉庫で働いていた作者の実体験を元にした作品ではあるが、単なるコミックエッセイではなく、かといって問題を情に訴えかける社会派漫画でも無い。 辛い労働環境を感情的に描こうと思えばいくらでも出来るんだろうが、"カデギ"という現場に対して適度な温度感を持って描いているように感じる。これは作者の狙ったところっぽくて良い。 逆にそのテンション感は、PC・スマホ画面のクリックひとつでモノを買ってしまう「消費者としての私」にジワジワと訴えかけてくるものがある。 韓国(特にソウル)は競争が激しい社会であることが知られているが、日本(の東京)もまた同じで、現代社会で働く「労働者としての私」という面にも刺さる描写ばっかり。 ソウルで生き抜く主人公の同士的キャラクターの女性が出てくるんだけど、これがロマンスにならないのも好きなポイント。 韓国の若者はラブロマンスに飽きているという風潮もあるらしく、それを汲んだもの?